医薬品やヘルスケア用品を中心に、商品調達からプライベートブランド(PB)開発、新規参入のバックアップまで幅広く応える大木ヘルスケアホールディングス(東京都)。ヘルスケアへのニーズが高まる昨今、需要創造型の新しい中間流通業をめざしている。今年6月、新社長に就任した松井秀正氏に、流通戦略と今後の展望を聞いた。
HBCカテゴリーにおいて圧倒的な地位を築く!
──健康志向の高まりを背景に、食品スーパー(SM)や総合スーパー(GMS)の間でもヘルスケアに関心が集まっています。まずはヘルスケア市場の現状について教えてください。
松井 ドラッグストア(DgS)を中心とした業態は順調に推移していると認識しています。それは、食品や調剤といったカテゴリーをほかの業態から取り込んでいるからであり、その部分は伸びています。インバウンド消費も好調で、安定的な売上をつくり、取り組んだ部分に関してはプラスです。
しかしながら、実際の国内ヘルスケア市場は、外部要因も多く、とらえにくくなっています。そもそもヘルスケアは季節要因が左右するマーケットです。たとえば今夏のように、「日焼け止めは好調だけど、殺虫剤は厳しい」といった変動がありますから。また、人口減も大きく影響しています。加えて、スイッチOTCも含めて、大型の新商品がここのところ出ていません。それゆえ、外から見るほど楽観視できないととらえています。
──そうしたなか、流通戦略をどのように描いていますか。
松井 今、私達がめざしているのは、「医薬品スタンディングの美と健康と快適な生活にウイングをもつ需要創造型の新しい中間流通業」です。そのためにも、ヘルス&ビューティケア(HBC)カテゴリーにおいて圧倒的な地位を築きたい。
消費者がHBC商品をどこで買うかといえば、DgSを中心に、SM、GMS、ホームセンター、通販、インターネットなどさまざまです。したがって、すべてのチャネルで、さまざまな角度から生活者に提案していくというのが当社の戦略です。
──なかでもとりわけDgSに重きを置くことになりますか。
松井 得意先としてDgSが多いのは事実ですが、それだけで重きを置くというわけではありません。近年、杏林堂様やドン・キホーテ様などのように、カテゴリー分けしづらい企業におけるヘルスケアの取り扱いが増えています。それゆえ、当社では業態別ではなく、企業別で管理しており、企業対企業で取り組ませていただいています。
PB開発の受託窓口として製造もコントロール
──昨今の小売業のニーズについてどう感じていますか。
松井 価格志向や自社開発志向など、小売業もいろいろですから、当然ニーズもそれぞれ異なります。そうしたなか、当社では単に「届ける」だけの卸売業ではなく、「商品企画から開発、店頭展開までを行う」中間流通業をめざしており、それぞれの企業に合った提案を行っています。
──ナショナルブランド商品だけでは差別化できなくなるなか、小売業においても独自の提案や独自の商品が求められています。そこに貴社が積極的に関わり、サポートしていくということですね。
松井 そのとおりです。たとえば、自社で商品開発を行う場合、食品に比べてヘルスケアは難しいものです。パーソナルケアゆえニッチな市場ですから、小ロットでの生産となり、採算が取れないリスクがあります。そこで、当社が受託窓口として間に入ることで、PB商品を実現します。「こんな感じのPBをつくりたい」と言ってもらえれば、それをカタチにするというわけです。これまでにサプリメント、青汁、食品、衛生材料などさまざまなPB商品を手掛けてきました。
小売業とメーカーの規模の差がずいぶん変わってきているので、直接交渉するのはなかなか難しくなっています。そこに当社が入って、間を取り持つ。もともと卸売業として、小売業とメーカーをつなぐビジネスをやってきたので、その役割をPB開発でも担っているということです。当社では、小売業側だけでなく、メーカー側の開発もやらせていただいています。
──製造を受託するメーカーや工場はどのくらい持っていますか。
松井 数は数えられないですね(笑)。これまでつくったことがないものでも、依頼があれば、メーカーを探してきてつくっていますから。結局のところ、卸である当社が間に入ることで、初期開発費用が抑えられるのはもちろんのこと、売れても売れなくても難しい発注コントロールや製品の管理なども当社が担うためコストメリットがあります。どこまで担うかはケースバイケース、企業ごとに対応します。
ヘルスケアというのは、概して1品1品の売上はそんなに大きなものではありません。にもかかわらず、すべて自社で担当していたら大変でキリがありません。たとえば薬にしても、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、ドリンク剤といろいろあり、同じブランドのなかで扱っていこうとすると、かなり手間がかかります。そこを当社がすべて引き受けてコーディネートします。
──それは小売業やメーカーにとってメリットがあり、ニーズがありそうですね。
松井 そうですね。まずは小ロットで生産して、少し売れたら大きな工場に製造拠点を移動し、さらに売れたら複数の工場で製造する。このようなコントロールができるのも、当社ならではの強みですね。
こうしたビジネスモデルは、日本だけでなく海外でも通用するのではないかと考え、現在、取り組み始めています。これを加速させるために、今年8月、大木オーバーシーズという会社を設立しました。海外での許認可取得や現地でのやりとりなど、これからノウハウを蓄積していくつもりです。
SMやGMSにおけるヘルスケアの売場提案も
──商品開発のニーズは、SMやGMSではどうでしょうか。
松井 食品のPBは多くありますが、ヘルスケアやホームケアに関してはなかなか進んでいないようです。当社が間に入ることで、もう少し進められるのではないかと思います。実際、SMやGMSが扱いやすい準PBのような留型をいろいろご用意しています。健康茶や青汁、サプリメントなどですね。
──ヘルスケアに関して、SMやGMSへの期待度はいかがですか。
松井 もちろん大いに期待しています。そもそも健康の根幹は「食」。そこを起点としてヘルスケアを考えるべきでしょう。これからの時代、ヘルスケアは絶対外せないカテゴリーです。とはいえ、いきなり売場に医薬品コーナーを置いても、片手間にやっていては成功するのは難しい。けれど、ヘルスケアをお店の中核にして、その周辺カテゴリーを含めてフロアレイアウトし、商品構成も検討すれば、健康志向のお客さまをきちんととらえて成功するでしょう。
──具体的に、どのような売場が消費者に響くでしょうか。
松井 たとえば高齢化対応でいえば、私自身は、中食がメーンになると思っています。スマイルケア食など介護食への取り組みは進み始めていますが、すべての食事をそれで賄おうとするとコストがかかる。元気な高齢者であれば、SMやGMSで販売する食材で食生活を賄うのが一般的です。
そうしたときに、骨を抜いた煮魚や食感のやわらかい豆腐ハンバーグ、糖質がカットされたお弁当などが総菜売場にあると、高齢者に対してアピールできます。そして隣には健康茶、その先にマルチビタミンが置いてある。こういった売場こそ、SMやGMSが辿り着くべきヘルスケアではないでしょうか。関連性のある売場づくりが大切だと思いますね。たとえ価格志向のお店であっても、それに合わせたコンセプトの商品を置くことで、ヘルスケアを意識した売場をつくることができます。カップラーメンの隣にコストを意識した手軽に取れる青汁や1本で野菜がとれるドリンクなどを陳列するといった具合です。
──ヘルスケアに取り組んでいくなら、どう売場をつくるかは重要ですね。
松井 DgSが食品を取り込んでいる今、SMやGMSはヘルスケアを取り込んでいく必要があります。健康軸や高齢化を意識した売場をつくっていかないと、いろいろな店やチャネルにお客さまが分散してしまいます。
ヘルスケアの軸をプラスした売場をつくりたい場合、ぜひお声を掛けていただきたいですね。棚割提案からPB開発まで全面的にバックアップさせていただきます。
そもそも当社は、単に利益を追求するのではなく、大木という組織を通じて社会に貢献するというのがモットー。ヘルスケアは、すなわち健康寿命の延伸であり、社会貢献のひとつです。ですから、社員一人ひとりがとことん考えて行動します。1人に対して求められるものは大きいですが、やりがいにもつながっています。そんな当社の経営理念をご理解いただいたうえで、ぜひパートナーの関係を築いていただけたらと思います。