ITで流通を変える! AI・IoTを駆使した“第4次産業革命”を起こす_トライアルホールディングス代表取締役社長 亀田 晃一
AIカメラやタブレット付きカートで、レジ決済不要のスマートストア「スーパーセンタートライアルアイランドシティ店」(福岡県福岡市)を今年2月にオープンし、業界の耳目を集めたトライアルホールディングス(福岡県:以下、トライアルHD)。同社の亀田晃一社長は、「ITを活用し、流通業界に革命を起こす」と言う。
中核事業会社に45歳の新社長就任
──まず、グループ全体の足元の業績を教えていただけますか。
亀田 トライアルHDは、ディスカウントストアやスーパーセンターを運営するトライアルカンパニー(福岡県/石橋亮太社長)など、15の事業会社を傘下に収めています。2018年3月期の連結業績は、売上高4086億円、経常利益93億円で増収経常増益でした。
最大の増収要因は、近年、年間15~20店舗出店している新店です。また、既存店売上高も前期水準を維持しています。待遇改善等による人件費の上昇により販売管理費の比率は高まっていますが、それ以上に粗利益率の改善が進んだおかげです。
──計算すると、売上高経常利益率が約2.3%となります。この数字をどのように評価されますか。
亀田 上場しているわけではないので、経常利益率2%程度を目安にしています。決して高収益企業をめざしているわけではありません。これを超える利益は、世の中の役に立てるよう、IT投資による作業効率の改善や快適な購買体験の演出などで、お客さまに還元していきたいと考えています。
──今年6月、石橋亮太氏が中核企業トライアルカンパニーの社長に就任されました。この人事はどういうねらいがあるのでしょうか。
亀田 われわれは、これまでも早いうちに経営陣の世代交代をしてきました。基本は5~10年サイクルです。短期間で変わってしまうと中長期的な課題に取り組むことができませんし、長期政権になってしまうと過去の成功体験に固執して環境の変化に対応できません。
石橋は現在、45歳。今回の社長交代も若いうちから引き継いで、中長期で戦略を考えられるようにするのが目的です。社長から会長となった楢木野仁司は、現在進みつつあるデジタル革命を流通業界に取り込むべく、店舗の無人化・メディア化・キャッシュレス化等を推進するスマートストアプロジェクトに取り組むことになります。
オープンイノベーションで「第4次産業革命」
──約3年前に持ち株会社のトライアルHDを設立した経緯を教えてください。
亀田 トライアルHDとトライアルカンパニーは、米国のアルファベット(Alphabet)とグーグル(Google)のような関係性をめざして設立しました。トライアルHDはIT企業で、トライアルカンパニーが事業会社としてITを活用したリテールに取り組む、ということです。
この考えは、「そもそも小売業とは何か」という話とつながってきます。
日本では1960年代に普及し始めたチェーンストアのかたちが、ここ50年、ほとんど変わってきませんでした。その状況を、米アマゾン(Amazon.com)や中国のアリババ(阿里巴巴集団)などのECを主体とする企業が変えつつあります。
われわれは、これを「第4次産業革命」がもたらしつつある流通業界における革命的変化だと認識しています。
──第4次産業革命ではどのような変化が起きますか。
亀田 買物の主権がメーカーから消費者に移るのが本格化したと思っています。それを可能にしたのが、EC企業が持つデータの力です。ECの強みは、消費者が購入した商品だけでなく、クリックの履歴などから、何に興味を持っているのかまで分析してレコメンドを行うOne to oneマーケティングが可能になりました。
また消費者は、ネット上の比較サイト等で、商品の価格比較や口コミによる利用者の評価を、スマホ等のモバイル端末を利用して簡単に確認できるようになりました。
われわれはEC上で起きたこの革命を、AI、IoTを活用することで、リアル店舗でも可能にする第4次産業革命の波をつかもうと考えています。
単純なデジタル革命では先進の米国や中国企業に勝てないかもしれませんが、これから進む「第4次産業革命」は、IoTの進化においてはモノを動かすTQM(総合的品質管理)による「kaizen(改善)」が重要になり、AIの進化においてはヒトを感動させる丁寧な接客サービスによる「omotenashi(おもてなし)」などの、日本が強みを持つ領域が重要になってくると思っています。
しかし、この流れをつくるのはトライアルグループだけではできません。