[東京 24日 ロイター] – 皇位継承に伴う今月27日からの10連休は、旅行関連の消費を押し上げそうだが、その後の節約による反動も予想され、国内経済全体を押し上げるのか不透明な状況だ。特に事前に期待感の強かった小売業界からは懸念の声が台頭している。
一方、日本の市場が休場中も世界の市場は取引を続けているため、政府は、予想外の価格変動にも対応できる監視システムを整えたと説明。連休中のATMでの現金不足にも対応するなど「総掛かり」の態勢で不足の事態に備えようとしている。
<突出する旅行業の重要増>
10連休の経済的な効果については、主にレジャー関連の家計支出が3割増となるとの試算が相次いでいる。
第一生命経済研究所・首席エコノミスト、熊野英生氏は、旅行支出が2018年の大型連休時と比べ3323億円増(29%増)の1兆4824億円になると試算している。
SMBC日興証券・シニアエコノミスト、宮前耕也氏の試算でも、ほぼ同様に3770億円の押上げとみている。
ただ、旅行以外の消費や企業需要については、むしろ懸念する声の方が目立つ。3月景気ウォッチャー調査では、小売業界からは「恩恵を受けるのは旅行会社だけ。一般の商店では、来客数の減少を心配している。ゴールデンウィークで金を使うため、連休前後の消費は落ち込むとみている」との声が多い。
景気ウオッチャー調査では、コンビニ業界で「2月中旬に起きたコンビニオーナーの待遇や契約などを巡る問題が表面化して以来、来客数と売上が今までにない減少を示している」との声が浮上。
また、小売業界からは「春の食品値上げの動きが、消費停滞を一層加速させることになる」と懸念する見方も出た。
4月ロイター企業調査では、小売業の8割が「連休中の販売が前年並みかそれ以下」と回答している。
<製造業のライン休止、指標かく乱も>
経済全体に対する影響には、厳しい声も少なくない。5月20日に発表の2019年1ー3月期の国内総生産(GDP)成長率はマイナスになることが予想され、連休中後は節約ムードが台頭するとの予測が民間エコノミストの間で広がっている。熊野氏は「改元に伴う祝賀ムードが、一気に景気後退モードへ様変わりする可能性がある」と述べる。
製造業の生産活動への影響は、下押し圧力の方が大きそうだ。政府関係者の1人は、年初の世界経済減速を受けて「連休中は需要低下に合わせ、あえて稼働を停止する企業が出てきても不思議はない」との見方を示す。
また、民間エコノミストや政府関係者は、今年4月に法制化された「働き方改革法」の影響で、休暇取得や休日出勤の制限が強まることへの影響を注視している。
具体的には、過去の大型連休ではラインを稼動させていた企業でも、10連休の今年はラインを止める企業が一部で出てくるのではないかとみられている。
経済官庁の幹部は「働き方改革の施行で今年は影響が読みにくく、例年通りの季節調整が当てはまるのか、調整をかけ過ぎることになるのか、見当がつかない」と嘆く。
SMBC日興証券の宮前氏も「様々な条件が例年と異なるため、景気判断が難しい。安部政権も4─6月の経済指標では、消費増税に向けた景気判断はやりにくいだろう」と予想する。
<連休中に外国株取引可能>
10連休中は、各分野で多様な対応が展開される。金融機関関連では、原則として全てのATMが通常の土日・祝日と同様に稼動する。現金需要が高まることを想定し、ATM現金残高の24時間監視・アラーム検知、警備会社の人員と現金量を例年の大型連休の3割増とすることになった。
大手証券・ネット証券(20社)を中心に、10連休中に外国株・日経225先物などを取り扱う。
金融庁は、4月中旬までに米証券取引委員会(SEC)など海外市場の監視当局に対し、不自然な価格変動に注視を促す要請文書を出した。対象は日経225先物のほか、トヨタなど多くの日本企業が発行している米国預託証券(ADR)。
これらの価格形成に異変が生じれば海外当局からの連絡を通じ、対処できる仕組みを整えた。
連休前後の「薄商い」にも対応する。投資家の株式売買が少ないタイミングの価格変動を狙った不公正な動きを未然に防ぎたい考え。東京証券取引所が人員を増やすなどし、通常より監視基準も強化する。
年初には外為市場で「フラッシュ・クラッシュ」に見舞われた。オセアニア市場で早朝の30分間に円が急騰し、対ドルで一時104円台後半を付けた。
財務省は、連休中も平日と同様の布陣で市場を注視し、ファンダメンタルズから逸脱する動きが生じれば、必要に応じて対処する構えだ。
(中川泉 取材協力:伊藤純夫、竹本能文、山口貴也 編集:田巻一彦)