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ヤオコー23年3月期上期決算は増収減益で着地!それでも通期は増収増益を見込む理由

ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)は11月10日、2023年3月期の中間決算を発表した。前期の通期決算で33期連続の増収増益を達成したヤオコーだが、23年3月期に入ってからは水道光熱費の高騰や急激な円安進行など事業環境が急激に悪化している。増収増益記録の更新に影響はないのだろうか。

中間決算説明会に臨んだヤオコーの川野澄人社長

水道光熱費の高騰が業績を直撃

 ヤオコーが10日に発表した23年3月期の上期連結業績は、営業収益が対前年同期比3.9%増の2798億円、営業利益が同7.5%減の159億円、経常利益が同7.5%減の157億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同5.7%減の107億円と、増収減益となった。

 ヤオコー単体業績も、営業収益が同2.8%増の2421億円、営業利益が同10.3%減の142億円、経常利益が同11.0%減の139億円、当期利益は10.9%減の96億円と、こちらも増収減益での着地となっている。
 
 減益の主要因は、販売費および一般管理費の上昇だ。とくに水道光熱費の上昇は、食品スーパーに業績に大打撃を与えており、すでに発表済みの各社の中間決算を見ても水道光熱費の高騰を理由に減益となっているケースが多い。

 さしものヤオコーもその影響は避けられず、上期決算では水道光熱費が同39.3%増と大きく増加。売上総利益高の伸びをもってもその影響を吸収できず、営業利益以下の段階利益を押し下げた。

 ヤオコー単体の既存店売上高は同0.3%減だった。相次ぐ値上げの影響もあって客単価が0.8%増と伸長したものの、客数が同1.1%減となり、前期実績を下回っている。

 とはいえ、営業利益の減益幅は連結ベースで7.5%減に留まっていることからも、他の有力スーパーマーケットと比較してもその強さと安定感は際立っている印象だ。

デリカが伸長!粗利益は“率”ではなく“高”をとる

 部門別の売上高構成比を見ると、生鮮部が前年同期から0.8ポイント(pt)減の33.4%、グロッサリー部が同0.2pt減の51.2%だったのに対し、デリカ事業部が同1.0pt増の15.4%と大きく伸長した。ただ、部門別の粗利益率では生鮮部が同0.85減、グロッサリー部が同0.28%減、デリカ事業部が同0.92減といずれも悪化している。

 これについて川野澄人社長は「デリカ事業部については、デリカセンターによる粗利益が着実に増えており、全社利益にも貢献している。原材料高騰がある中で、センターの粗利益率を上げていくのは難しい。だが、センターのキャパシティにはまだ余裕があるので、センター商品の出荷高を増やすことで、粗利益“高”をとっていきたい」と話す。

ディスカウントフォーマットは思わぬ苦戦?

 出店戦略では、上期は「大宮櫛引店」「横浜磯子店」「八王子鑓水店」を出店したほか、ヤオコー屋号の「秩父大野原店」を「フーコット秩父店」に転換した。下期は「加須店」「トナリエ宇都宮店」「草加松原店」とヤオコー屋号で3店舗を出店する計画だ。

 21年8月に1号店を出店したディスカウントフォーマットのフーコットは、上期の「秩父店」の出店により、現在3店舗体制となっている。「フーコットはプロセスセンター(PC)から商品を供給することで生産性を上げるモデルであるため、現在の店舗数ではPCの効率を上げきれていない。早期に5~6店舗体制にする必要がある」(川野社長)。

 「エイビイ」を含めたディスカウントフォーマットへの手応えについて、川野社長は「フーコットはほぼ計画どおりに推移しているが、エイビイについては一部の店舗が自社競合で苦戦している」と話す。「(ディスカウントフォーマットは)ポイントカードがないため、お客さまの動きをとらえきれていないが、値上げが相次ぎ価格感度が高まる中で、ヤオコー店舗ではハイ&ローで安い商品を差し込むことで割高感を薄めている。一方、EDLP(エブリデイ・ロープライス)政策では価格が変化しないため、値上げによる割高感が強く出てしまう」(川野社長)。値上げ時代の救世主になるかと思われたディスカウントフォーマットだが、足元では思わぬ苦戦を強いられているようだ。

増収増益記録の更新なるか

 中間決算は増収減益での着地となったヤオコーだが、通期の業績目標は据え置き、連結ベースで営業収益5460億円(対前期比1.9%増)、営業利益は255億円(同5.9%増)、経常利益247億円(同6.1%増)、当期純利益160億円(同4.0%増)と増収増益を見込む。なおヤオコー単体ベースでも増収増益を計画している。

 川野社長は下期の見通しについて「下半期も読みづらい状況が続くことが予想されるが、極端に業績が落ち込むことはないと見ている。経費面では、水道光熱費はコントロールできないが、人件費についてはAI自動発注などを通じて生産性向上を図っていく。厳しい環境だが、当初想定の売上・利益を実現したい」と話す。

 前期は巣ごもり消費の恩恵を大きく受けたこともあって、23年3月期の増収増益に向けたハードルはそもそも高い。実際に中間決算は減益着地となったものの、営業収益営業利益率は5.7%とスーパーマーケット企業としてはトップクラスの水準を維持している。

 反動減、資源価格の高騰といったマイナス要因を跳ね除け、ヤオコーはスーパーマーケット企業としては前人未到の34期連続の増収増益を達成できるか。これまでさまざまな環境変化があった時も、ことなげに記録を伸ばしてきたヤオコー。今回の記録更新の難易度はかつてなく高いものになりそうだが、逆に期待が高まるところだ。