アイスタイル提携、D2Cブランドの開発も! 三井物産、消費者向けビジネス戦略の現在地

下田 健司
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D2Cビジネスも展開中

 三井物産はD2Cに近いというブランドビジネスをファッション分野で手がけてきたわけだが、D2Cそのものにも取り組んでいる。

 その一つが、2021年7月に子会社として設立した「.me」(ドットミー)の事業である。三井物産ICT事業本部が出資する英データ分析会社ブラックスワンの機能を活用しSNSデータ分析を通じて消費者インサイトを探り、自社ブランドを開発するほか、パートナー企業と組んだ共同ブランドの開発も手がけている。三井物産の持つバリューチェーンでの機能を活用し、商品開発だけでなく、マーケティング、販売まで一気通貫で行う。

 ドットミーが開発した自社D2Cブランドに、2021年12月からネットで販売を開始した「Cycle.me(サイクルミー)」がある。ドットミーによると、「⾃然にきりかえる⽣活」をコンセプトにオンとオフのサイクルづくりをサポートするという。朝・昼・夜の時間帯に合わせた商品としてプロテイン、クッキー、ムーンミルク(ホットミルクや豆乳、アーモンドミルクなどにスパイスやハーブなどをトッピングしたホットドリンク)などを揃える。ネットだけではなく、都内の一部「セブン-イレブン」の店舗でも販売する。

三井物産子会社のドットミーが開発したD2Cブランドのサイクルミー

 メーカーとの共同開発ブランドもある。味の素のZ世代事業創造部と共同開発した「粥粥好日(カユカユコウジツ)」だ。1990年代中盤から2010年代序盤までに生まれたZ世代をターゲットにし、近隣アジア圏の伝統的な料理を現代のお粥にアップデートした新感覚カップお粥と銘打つ。ネットで2022年6月から9月まで期間限定で販売したほか、ポップアップストアでも販売した。

めざすのは消費者起点での商品・サービス提供

 三井物産グループがブランド&リテール領域においてめざすのは、川上・川中での取引規模の拡大を図る方向とは異なる。一つのブランドに依存するのではなく、消費者ニーズに応える新たなブランドを立ち上げていく考えだ。

 松岡氏は「われわれのフィロソフィーは消費者を起点に消費者の望む商品・サービスを提供していくこと」と強調する。消費者データを活用した商品開発を行うドットミーは、まさにこの考え方に即したビジネスだ。三井物産ならではの特徴的な事業と言える。

 松岡氏は続ける。「今後は、『意味消費』を重視する消費者ニーズに応えていかなければならない。そのためには、同質化競争に陥らないことが重要だ。消費者ニーズをとらえたブランドを開発し、マーケティング力を磨きながら、複数ブランドでポートフォリオを組みながら事業運営をしていきたい」

 そのほか三井物産は、データ分析・マーケティング支援を行う事業も手がける。流通事業本部には、英小売大手テスコ(Tesco)傘下のデータ分析会社として知られる英ダンハンビー(dunnhumby)と折半出資で設立したダンハンビー・三井物産カスタマーサイエンス(東京都)がある。小売に対しては、顧客データの分析だけでなく、売場施策や商品施策の提案まで手がける。三井物産は、こうしたデータ分析やマーケティング機能についてM&A(合併・買収)活用を含めて強化する方向だ。

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