モスフードサービスはさきごろ、2022年3月期(21年4月~22年3月)通期の連結決算を発表した。売上高は784億7200万円(前年度比109%)、営業利益は34億2200万円(同244.2%)、純利益は34億9700万円(同343%)。売上高は過去最高、営業利益、純利益も大幅増となった。
海外事業が好調、前中経も成果
コロナ禍を増収増益で乗り切った同社は2022年3月期も大きく数字を伸ばした。前期比で売上は64億円増。そのうち、国内が43億円、海外が21億円となっており、海外の好調ぶりが際立つ。
海外事業は、香港、シンガポール、台湾の食材生産子会社「魔術」がそれぞれ11億円、8億円、3億円の増益。注力するアジアでの存在感は着実に高まっている。
中村栄輔社長は、2019ー2021年の中期経営計画を振り返り、「一定の成果を収めることができた」とコロナ禍でも毎年前年比を超えた3年を満足げに総括した。
この3年は既存店の売上増に注力するため、不採算店を整理。68店舗を閉める一方で、206店舗の改装を行い、新業態のカフェ「モスバーガー&カフェ」を50店舗増やした。現状での生産性向上を追求しながら、より収益力を高める土台構築に真摯に取り組んだ3年だったことが数字からも鮮明になっている。
2024年度の売上目標は、1000億円
満を持しての2022ー2024年の中経は、攻めの姿勢がハッキリと打ち出されている。
2024年度の売上目標は、1000億円に設定。営業利益の目標は50億円とした。同社としてもいよいよ1000億の大台を視野に、次の50年でのさらなる躍進を目指す。
どのように実現していこうというのか?
出店力を軸に拡大路線へ
そのための戦略の柱となるのが「出店力」だ。前の3年では減少した店舗数を、次の3年では一転、増加させる。出店・改装用の投資額は130億を用意。前中経の450%となる大幅な増額で、一気に攻めに出る。
計画では年間50店舗の出店を目指し、3年で150店舗増とする。大量出店で、モス過疎地域を減らし、販売機会を増やすことで売り上げを増大させる。
形態は、正調店舗にこだわらず、小型店、テイクアウト専門店、キッチンカーなど、地域特性や立地、需要に合わせ柔軟に対応し、モスのニーズに応えられていない隙間を着実に埋めていく戦略だ。
また、FCだけでなく直営による出店も積極活用し、出店を加速する。
加えて、メニュー開発等で、カフェとしての利用を促進し、より気軽で身近な存在を目指し、物販商品も展開。キャラクター、タレントを活用したファンベースマーケティングも有効活用するなどで来店を促進する。
収益の多様化進める
もうひとつの柱は収益の多様化だ。軸となるのは、海外事業の強化。投資規模は50億円で、前中経から251%としている。出店数の増加に加え、新業態・新規国への進出も積極的に行うなどで、「世界が注目する外食のアジアオンリーワン企業」へ向け、確固たる地位の確立を目指す。
併せて、モスブランドのコラボ商品などを販売するマーチャンダイズ事業も強化し、自社ECサイトを立ち上げて流通面の補強にも取り組む。シナジーの期待できる企業とのアライアンスやM&Aも適宜活用しながら、新たな収益源の構築も妥協なく進めていく。
コロナ禍で磨いたデジタル活用も引き続き強化し、顧客の体験価値とスタッフの働きがいをITでサポート。ネット注文や予約販売等によるデジタル接点の強化、フルセルフレジやドアライブスルーの進化などによる店舗体験価値の向上で、社員・スタッフも含めた全体のサービス満足度を一層磨き上げる。
攻めのモスで成長加速
「巨人」が君臨し、競合がひしめくハンバーガーチェーンの中で、どちらかといえば守りの姿勢でじっくりと顧客との信頼を構築してきた日本発祥のモスバーガー。100周年も見据え、後半となるこれからの半世紀は、「攻めのモス」で成長ペースを加速させる。
変わらず味を追求しながら、攻め所では大胆に変革に取り組み、新規ファンの増大を図るーー。コロナ禍を快調に乗り切った国内発のハンバーガーチェーンが、さらなる高みを目指し、モードを大きく切り替えた。