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黒字転換もコロナ前の水準は高く……ユナイテッドアローズの成長戦略は

ユナイテッドアローズ(東京都/松崎善則社長CEO)が先ごろ発表した2022年3月期連結決算は、売上高が1183億円(対前期比2.7%減/前期から33億円減少)、営業利益が16億円(前期は66億円の営業赤字)、当期純利益が7億円(前期は71億円の当期赤字)と増収、黒字転換を果たした。収益認識に関する会計基準および連結体制変更影響を除いた実質的な売上高は同7.5%増だった。
最終赤字となった最悪期からは脱した格好だが、コロナの影響を第4四半期だけ受けた20年3月期と比べると、売上は8割、営業利益は2割の水準。いよいよアフターコロナ、ウィズコロナが見えはじめた23年3月期以降、どんな成長戦略を描くのか?

実店舗売上高が回復、ネット通販も堅調

 新型コロナウイルスのまん延に伴い、ほかの業界と同様に、アパレルも厳しい経営環境に置かれた。自粛措置に伴う営業時間短縮を余儀なくされ、客足は遠のいた一方で、前期のような最悪の状況からは脱しつつあり、コロナ禍前に届かないとしても消費者マインドは上向きつつある。

 こうした中でユナイテッドアローズは、実質的*に前期を上回る売上高を確保した。セグメント別では、ネット通販が前期に好評だったセール施策の反動で前期を下回ったものの(同8.8減)、小売事業は同12.4%増だった(いずれもユナイテッドアローズ単体)。
*連結体制変更、収益認識基準変更の影響を除外した場合を意味する

 上期・下期別の既存店売上高(小売+ネット通販、単体)では、上半期プラス2.6%に対して、下半期はプラス7.8%と持ち直し傾向が顕著だ。

 一方でコロナ禍からの完全回復は、まだ道半ばといえそうだ。実店舗(小売)売上高は対前々期比27.4%増で大幅マイナスとなっている。

 反面、ネット通販は需要が急拡大した前期からは落ち込んだものの前々期と比べるとプラスとなっている。ユナイテッドアローズのネット通販はここ数年ずっと右肩上がりで成長を続けており、10年前の3倍近くまで伸びている。売上高全体に占める割合も27.5%まで高まっている。

 利益面については、在庫状況の改善および定価販売比率の向上などもあって、連結の粗利益率は前期から4.7ポイント改善の49.9%だった。販売費・一般管理費も、退店および家賃減免に伴う賃料の減、自然減に伴う人件費の内輪に加え、経営改革に伴う経費削減もあって対前期比6.9%減となっている。
 
 結果として22年3月期の営業利益は、コロナ禍前の水準にはおよばないものの、黒字を確保した格好だ。

酒専門店も…新ブランドを続々立ち上げ

 ユナイテッドアローズは22年3月期、将来の再成長を視野に入れつつ、新ブランド展開、サプライチェーンのデジタル化、チャネル戦略の見直しなどの課題に取り組んできた。

 ブランド戦略については、最近のゴルフブームに乗った「UNITED ARROWS GOLF」やアウトドア衣料の「koti BEAUTY&YOUTH」、ヨガ向けラインの「TO UNITED ARROWS」などウイズコロナのライフスタイルにマッチした新ブランドを立ち上げた。ネット通販向けにも「CITEN」「MARW UNITED ARROWS」といった新ブランドローンチし、品揃えを拡充している。

 接客面でも、法人向けコンサルサービスをスタート。加えてコア顧客層を対象としたプライベートサービスデスクも開設した。

 店舗戦略では、「サステナブル」「ウェルネス」をコンセプトとする「カリフォルニア・ゼネラル・ストア」や酒類専門店「ユナイテッドアローズ・ボトルショップ」など新業態開発に取り組む一方で、期中に26店を閉鎖し、トータルでは20店減の310店舗とした。コロナ禍前との比較では14%、店舗数を絞り込んでいる。

コロナ以前から続く粗利益率の悪化

 2023年3月期の業績予想では、売上高が対前期比9.8%/前期から116億円増の1300億円、営業利益が同185.2%増/同31億円増の 48億円、当期純利益が同309.4%増/同22億円増の30億円を見込む。

 これを達成するための戦略としては、既存店回復を最優先目標とし、「感動接客」「感動クリエイション」「新たなUA(ユナイテッドアローズ)への挑戦」を戦略課題と位置付ける。感動接客では販売力の向上、感動クリエイションでは商品開発の底上げに注力し、新たなUAへの挑戦では組織再編を通じてブランディング体制の構築をめざす。

 23年3月期も大幅な業績回復を計画するユナイテッドアローズ。ただ、目標を達成としたとしても、業績はコロナ禍前の水準には届かない見通しだ。

 売上はコロナ前の19年3月期まで伸び続けており、これはオンライン売上の増加によるもので、16年3月期をピークに下降に転じている既存店売上をカバーしている。

 一方、気になるのが利益率の低下だ。売上高営業利益率は13年3月期に2ケタ台に乗っていたが(10.9%)、コロナ禍直前の20年3月期には5.6%にまで低下しているからだ。

 この原因の1つが、粗利益率だ。13年3月期は55%近かった粗利益率は、2020年3月期には50%を切る直前にまで低下した。要因としては、商品売れ残りによる偏在在庫増加やセール品による値下げなどが考えられる。

 販管費負担も利益を圧迫している。ユナイテッドアローズの販管費は売上高が増えた以上に増加し、その結果、販管費率は2013年3月期の43.5%から2020年3月期には45.2%と1.7ポイントも悪化した。

 EC化が急激に進みながら市場規模が縮小しているアパレル業界においては、店舗とEC(そしてシステム)で二重にコストがかかる構造となっており、同社も例外ではない。リアル店舗の価値を生かしながらも、時代にあった最適な収益構造を模索する展開が続く。セレクトショップの雄である同社が、どんな最適解を提案していくのか、大いに期待したい。