黒字転換もコロナ前の水準は高く……ユナイテッドアローズの成長戦略は

棚橋 慶次
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コロナ以前から続く粗利益率の悪化

 2023年3月期の業績予想では、売上高が対前期比9.8%/前期から116億円増の1300億円、営業利益が同185.2%増/同31億円増の 48億円、当期純利益が同309.4%増/同22億円増の30億円を見込む。

 これを達成するための戦略としては、既存店回復を最優先目標とし、「感動接客」「感動クリエイション」「新たなUA(ユナイテッドアローズ)への挑戦」を戦略課題と位置付ける。感動接客では販売力の向上、感動クリエイションでは商品開発の底上げに注力し、新たなUAへの挑戦では組織再編を通じてブランディング体制の構築をめざす。

 23年3月期も大幅な業績回復を計画するユナイテッドアローズ。ただ、目標を達成としたとしても、業績はコロナ禍前の水準には届かない見通しだ。

 売上はコロナ前の19年3月期まで伸び続けており、これはオンライン売上の増加によるもので、16年3月期をピークに下降に転じている既存店売上をカバーしている。

 一方、気になるのが利益率の低下だ。売上高営業利益率は13年3月期に2ケタ台に乗っていたが(10.9%)、コロナ禍直前の20年3月期には5.6%にまで低下しているからだ。

 この原因の1つが、粗利益率だ。13年3月期は55%近かった粗利益率は、2020年3月期には50%を切る直前にまで低下した。要因としては、商品売れ残りによる偏在在庫増加やセール品による値下げなどが考えられる。

 販管費負担も利益を圧迫している。ユナイテッドアローズの販管費は売上高が増えた以上に増加し、その結果、販管費率は2013年3月期の43.5%から2020年3月期には45.2%と1.7ポイントも悪化した。

 EC化が急激に進みながら市場規模が縮小しているアパレル業界においては、店舗とEC(そしてシステム)で二重にコストがかかる構造となっており、同社も例外ではない。リアル店舗の価値を生かしながらも、時代にあった最適な収益構造を模索する展開が続く。セレクトショップの雄である同社が、どんな最適解を提案していくのか、大いに期待したい。

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