サミット(東京都)は2022年3月期決算を発表した。“コロナ特需”に沸いた前期の反動減となったものの、コロナ前との比較では高い利用水準を維持している。こうしたなか23年3月期の方針と、期中に開始するネットスーパー事業についても方向性を明らかにした。
21年3月期を除いて
売上高、各利益ともに過去最高
サミットの22年3月期業績は、営業収益は対前期比0.9%減の3236億円、営業利益は27.6%減の91億円、経常利益は同31.8%減の94億円、当期純利益は同36.7%減の60億円だった。コロナ禍での内食需要を取り込んだ前期の反動で減収減益ではあるものの、前期を除いて売上高、各利益ともに過去最高となっている。コロナ前の20年3月期との比較では、当期純利益は8億4000万円も増加している。(サミットは21年4月、完全子会社で衣料チェーン運営のサミット・コルモを合併している。そのため比較した「前期」数字は、合併前の連結決算の金額および数値)。
競争が激化するなか
既存店客数が2.7%増
既存店売上高伸長率は同0.6%減だった。前年割れの要因は客単価が同3.2%減となったためだが、店舗間競争が激化するなか客数は同2.7%増だったことは特筆するべき点である。
部門別売上高は、減少幅が大きい順に、「家庭用品及び衣料品他計」が同4.7%減、「生鮮食品」が同3.1%減、加工食品や菓子、日配などの「その他食品計」が同0.6%減。一方で「総菜及びベーカリー計」が同8.4%増と大きく伸長した。21年3月期は、コロナ禍で揚げ物の裸売りをやめたことなどで苦戦していたが、需要の変化に応じた品揃えの見直しや、味の磨き上げによって、支持獲得に成功している。
服部哲也社長は22年3月期業績を次のように振り返る。「コロナ禍2年目となった22年3月期は、感染者が急増した時期には、店舗に出勤できなくなる人も増え、“綱渡り”のようなギリギリの人員体制での営業を余儀なくされた。しかしサミットでは従来から部門間で連携し、役割分担をしながら運営ができる組織文化、体制が他社よりもできていたことで、乗り切ることができた」。
「最初の3カ月が我慢のとき」
23年3月期の業績予測は、営業収益が同4.1%増の3370億円、営業利益が同8.1%減の84億円、経常利益が同10.3%減の85億円、当期純利益が同1.9%増の61億円を計画する。
電気料金などの諸経費の増加と新店の開業費用で、営業・経常利益こそ減益予想だが、一過性損失の減少などにより、増収増益を見込んでいる。
今期、食品小売業各社は原材費や電気料金の価格高騰の影響を大きく受けると予測される。そうしたなか服部社長は「店長には『最初の3カ月が我慢のとき』と伝え、コストコントロールを徹底する。6月頃には値上げの局面がある程度落ち着くと予想しており、その時の世の中の状況を見極めて、販促策で対応していく」と述べている。
今期の新規出店は4店を計画。すでに4月に開業した「世田谷船橋店」(東京都世田谷区)以外に、東京都で2店、神奈川県で1店をオープンする。そのうち2店は、近年開発を進めている小型店での出店だ。
スーパーサンシのノウハウを得て
ネットスーパー 展開へ
23年3月期で注目されるのが、以前よりから発表していたネットスーパーサービスの開始だ。
今回新たに、10月頃からローカルスーパーのスーパーサンシ(三重県/田中勇社長)の協力を得て、まずはサミットのドミナントエリアにある1店でサービスを開始することを発表した。
スーパーサンシは、40年以上前から小商圏型の宅配事業を展開し、すでに店舗事業よりも収益性の高い事業モデルを構築している企業だ。19年にはネットスーパーのフランチャイズ事業「JAPAN NetMarket」を立ち上げ、すでにいちやまマート(山梨県)など全国約20社に同社の知見を提供している。
ネットスーパー開始にあたり、スーパーサンシと組む選択肢を選んだ理由について服部社長は「店舗出荷型で、すでに実店舗をご利用いただいている方へのサービスとしてネットスーパーを提供したい。スーパーサンシさんのモデルはわれわれのめざす方向性が同じであり、自前よりも短期間で、理に叶ったサービスができると考え、すでに数年前から話をしてきた」と語っている。
23年3月期はサミットにとって、3カ年中期経営計画の最終年となる。とりわけネットスーパーサービスの開始は大きなトピックであり、一体どのようなサービスを展開するのか、注目したい。