週末読書おすすめの一冊:消費者の行動は「なに」が変わったのか?

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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時間資本主義の時代(日本経済新聞社発行)

時間資本時代
日本経済新聞社/本体価格1,600円+税

著者:松岡真宏

 ITが生活の隅々までいきわたった昨今、顧客の消費行動が変わったといわれているが、では実際に「なに」が変わったのか?経済的に豊かになったか?日々のニュースを読んでいても、ここ十数年どうも大きな変化はなさそうだ。もちろん、使える時間は24時間で変わらない。

 本書では「時間価値」という言葉で変化を説明する。そして、この変化は「スマートフォン」の登場によって決定的に変わってきたという。

 ではスマホ以前はどうだったかというと、もちろんPCは存在していたしインターネットもあった。しかし、インターネットがあるとはいえ、PCがある場所という制約があり、空間は限定されていた。世界中の情報へ自由にアクセスできるが、そのためにはある程度「かたまった時間」が必要であった。

 しかし、スマホの登場により「かたまった時間」をつなぐ「すきま時間」を効果的に活用できるようになる。そしてこの「すきま時間」が、飛躍的に価値を持つようになった。

 通勤中のボーっとしているだけだった時間、多くの情報に触れ、美容院の予約をし、銀行振り込みを終わらせられる。その結果「かたまり時間」をより有意義な何かに使えるようになる。スマホの登場により、銀行の窓口でいつ呼ばれるかもわからないまま、興味のない週刊誌で時間をつぶす必要はなくなった。

 著者は今後、2つの時間価値が生まれると伝える。一つは、時間を短縮し別の有意義な時間を生み出すための「節約時間価値」。そしてもう一つは、そのサービスを利用することで有意義な時間を生むための「創造時間価値」。

 ユニクロで服を買い、アマゾンで日用品を補充するように買う。その一方で、新宿伊勢丹で服を買い、割高のクラフトビールを遠くの街まで飲みに行く。この、一見すると矛盾するような消費行動に「時間価値」を高めようとしている消費者の姿がある。

 本書はこの「時間価値」が生まれてきた背景や、時間に対する考えかたの変化、そしてこの価値を高める方法を示している。今後の24時間の考え方が変わる、そして、近い将来の社会の姿を想像するための、必読の本である。

 

この本について調べる(日本経済新聞出版社WEBサイトへ)

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