大阪ミナミ、あの著名作家も愛した名店でいただく個性派カレー

2025/04/15 05:35
森本 守人 (サテライトスコープ代表)

串カツ、ビール、カレーでフィニッシュ!

 時間は午前1140分だったが、さすが人気店、ほぼ満員である。しかしラッキーにも席を立つお客と入れ替わりですぐに座ることができた。

 早速メニューに目を通す。悩んだ挙句、まずは「串かつ(牛肉)」を食べながらビール、そして「名物カレー」でフィニッシュするストーリーが浮かんだ。機敏に動く女性店員を呼び止め、注文を伝えた。

メニュー※価格改定され、現在は写真とは異なります
メニューに目を通す。※価格改定され、現在は写真とは異なります

 料理が来る間、店内を観察する。来店客は多様で、女性の1人客のほか会社員らしき男性、またアジアからの観光客も一定数見られた。大半がカレーを注文している点で共通しており、皆さん黙々と食べている。

 目を引いたのは奥の壁に掲げてある額縁に入った写真だ。織田作之助がペンを持ち、頭を抱え悩みながら執筆している。そこに黄色の文字で「自由軒本店」「織田作文学発祥の店」と書かれている。

額縁には「織田作文学発祥の店」「織田作死んでカレーライスをのこす」とある
額縁には「織田作文学発祥の店」「織田作死んでカレーライスをのこす」とある

 さらに「トラは死んで皮をのこす」「織田作死んでカレーライスをのこす」ともある。これは岐阜県で演説中の板垣退助が暴漢に刺された際、発言した「板垣死すとも自由は死せず」に由来すると思われる。当時、自由という言葉が流行っており、また創業者の出身地は岐阜県。これらを背景に、屋号、さらに額縁のキャッチコピーができたと推測できる。

 そうこうしている間に串かつとビールが私の目の前に届けられた。テーブルにある特性ソースをかけ、いただく。うん、おいしい。

「串かつ(牛肉)」
「串かつ(牛肉)」に特製ソースをかけいただく

 そしてしばらくして主役のカレーがやってきた。最初からライスとカレーが混ぜてあり、凹んだ部分に生卵が乗せてある。

「名物カレー」。
「名物カレー」。想像よりスパイシーだ

 最初は、スプーンでカレーだけすくって口へ。想像していたよりスパイシーだ。その後、卵を割って味変すると、とてもマイルドになった。これもいい。半分ぐらいになったところでソースをかけると、味に深みが増した。ひとつの皿に盛ってあるカレーだが、いくつもの味のワールドが広がりを感じられるのが楽しい。飲食店の激戦地、大阪で長く愛されている理由がわかったような気がした。

卵を割り“味変”する
卵を割り“味変”するととてもマイルドになった

 すべてをいただき、もう満腹である。入口の方に目をやると、行列ができている。私は満足な気持ちで、店を後にした。

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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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