旗艦店(フラッグシップショップ)とは?普通の店舗との違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説!
旗艦店(フラッグシップショップ)とは
旗艦店とは、多店舗展開している組織流通小売業において中核となるべき店舗のことで、フラッグシップショップとも呼ばれる。海軍などの艦隊において、指揮官や幕僚が乗船する船に司令旗を掲げた船を旗艦と名付けたことに由来する。
旗艦店は一般店舗と違い、コンセプトや自社ブランドの訴求に重点が置かれる。ブランド訴求の形成にはさまざまな要素が絡み合うが、場所もその1つだ。立地そのものがステータスとなる東京・銀座周辺に旗艦店を構える有名ブランドが多いのも、理由があることなのだ。
旗艦店のメリット
旗艦店のメリットは、多店舗展開する競合に対して局地戦で太刀打ちできる点にある。マーケティングの中でも重要な要素を占めるチャネル戦略において、旗艦店戦略の対極にあるのが「クリティカル・マス戦略」だ。マクドナルドやスターバックスをはじめとする欧米グローバル企業は、いわゆる「クリティカル・マス」戦略をとることが多い。
クリティカル・マス戦略とは、豊富な人・モノ・金にものを言わせ、多くの店舗を他社がまねできない時間軸で、エリア全体に展開させる戦略だ。面でエリアをおさえれば、短期間に知名度そしてシェアも急上昇しライバルをエリアから駆逐してしまう。
では経営資源で見劣りする企業が勝負するにはどうすればよいか、の選択肢の1つが旗艦店戦略だ。多店舗に展開するグローバル企業に対しエリアという「面」では勝てなくても、局地的には互角に戦うことができる。クリティカル・マス戦略では、場所に関わらず同じ、統一された店づくりをするため、個別店舗のお客を引き寄せる力は弱い。
旗艦店のデメリット
旗艦店のデメリットは、ブランド訴求の難しさにある。同時に旗艦店を展開する各企業は、どこもコンセプト作りに力を入れている。一般店とは違う特徴を際立たせつつ、一般店と同じような「〇〇らしさ」を具現化するのは意外と難しい。旗艦店の好感度が高くても、「らしさ」が失われては成功とはいえない。ましてや満を持した旗艦店が、ライバルのチェーン店舗に見劣りするようでは失敗だ。
「らしさ」が大切だからこそ、イメージや業態に関わらずとにかく一等地に構えればよいわけでもない。たとえば大手スーパーマーケットのライフ(大阪府)は、東京・世田谷区の桜新町に旗艦店を置いた。目立つ土地ではないが周辺は高級住宅地として知られ、比較的所得も感度も高い住民が多いとされている。桜新町での取り組みは、生活密着型をめざすライフにとってメリットが大きい。
同時に、ライフらしさもしっかり抑えている。ライフの魅力は、独自開発したプライベートブランドを含めた充実した品ぞろえだ。桜新町では旗艦店ならではの魅力を打ち出しつつ、ライフならではの特徴もしっかり訴求しているのだ。
旗艦店の実例
旗艦店の実例として、ユニクロを展開するファーストリテイリング(山口県)の、海外における取り組みを紹介する。国内では競合を寄せ付けないプレゼンスを誇るユニクロだが、海外での知名度はまだまだこれからだ。
アパレルや飲食の海外展開において、苦戦している日本企業は少なくない。多店舗展開で面をおさえるグローバル企業の物量作戦に、太刀打ちできないためだ。一方で、ユニクロは旗艦店戦略で勝負する。上海なら淮海中路、ニューヨークなら5番街、シンガポールならオーチャードとその国の「一丁目一番地」に旗艦店を構え、ブランドを浸透させたうえで着々と売り上げを伸ばしてきた。限られた経営資源を賢く使うユニクロの戦略は、今のところ功を奏しているようだ。