減損会計とは? 財務健全性向上につながる? 徹底解説します!

読み方:げんそんかいけい
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減損会計とは

減損会計とは、固定資産の評価と損失計上にかかわる会計処理ルールである。減損会計は2000年代、退職給付会計・キャッシュフロー計算書・金融資産の時価会計といった一連「会計ビッグバン」のアンカーとして日本に入ってきた。「時価」を基本思想とする会計ビッグバンは、「取得原価主義」を土台とした日本の企業会計制度を根幹から揺さぶったとされる。

減損損失とは

減損会計における損失は、次の算式で計算される。

投資額-店舗などの固定資産がもたらす営業キャッシュフロー=減損損失

たとえば投資額1億円で店舗を開業したとして、販売活動により見込める営業キャッシュフローが4000万円なら、差額の6000万円が減損損失となる。

減損を認識する場合

企業会計審議会が公表する「減損会計にかかわる適用指針」では、減損損失を測定し、会計処理までのプロセスを以下のように示している。

  1. 固定資産のグルーピング

  2. 減損兆候の把握

  3. 減損認識の判定

  4. 減損額の測定と会計処理

ポイントの1番目がグルーピングだ。たとえば流通業ではエリアごとにグルーピングすることが多いが、区分を大くくりにした方が減損を回避しやすい(例:都道府県別→東北・関東などの地方別)。収益の高い店舗が、低い店舗のキャッシュフローマイナスをカバーしてくれるからだ。

2番目が兆候の把握だ。減損は「兆候」が出て初めて認識される。兆候を把握するケースとして指針では「営業キャッシュフローがマイナス」「投資を回収できないような変化(資産の遊休・事業廃止等)」「経営環境の著しい悪化」「資産価格の大幅な下落」などが例示されている。

減損会計のメリット

減損会計のメリットは、企業の財務健全性の向上にある。かつての取得原価主義では、企業が赤字事業や赤字店舗をリストラするまでは損失が明るみに出なかった。減損会計の導入により、事業や店舗の抱える含み損失を吐き出せば、企業は資産をスリム化でき、迅速・大胆な経営判断をとりやすくなる。

減損会計のデメリット

減損会計のデメリットは、減損損失が巨額になりやすい点にある。一般的に減損会計では、著しく事業環境が悪化しない限り損失を認識しない。しかし、一旦減損損失を計上すれば、莫大な損失を計上してしまうことになる。結果的に業績に多大な影響を与え、赤字転落も珍しくない。

ただし減損はキャッシュアウト(企業の現金が外部に流出すること)を伴わない。最近は投資家も減損処理を前向きにとらえるようになり、「減損=株価下落」の図式は成り立たなくなってきた

減損会計の実例

減損会計の実例として、百貨店業界における減損問題について取り上げる。流通業界の中でも百貨店は、地方店舗を中心に経営難に苦しむ店舗が多く、しばしば減損損失を計上している。以下に具体的事例を紹介する。

  • 三越伊勢丹ホールディングス(2018年3月期)
    不振の地方店舗やクイーンズ伊勢丹の減損損失110億円を計上、結果として赤字転落。
  • 髙島屋(2021年2月期)
    同グループが保有する立川店や地方店舗について約50億円の減損損失を計上。
  • 近鉄百貨店(2018年3月期)
    中期経営計画の策定にあたり減損判定のグルーピング見直しを実施した。結果として奈良店とのグルーピングを解消した生駒店について、不動産時価の価格下落に伴う減損兆候が認識されたため、約30億円の損失を計上。

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