市場価格とは?市場価格はどうやって決まる?価格の自動調節機能、独占価格についても解説
市場価格とは?
市場価格とは、市場の競争によって需要と供給が釣り合う価格のことである。具体的には、商品やサービスが市場で売買される際の実際の価格を表している。その市場に多くの需要と供給が存在して成立する市場価格は競争価格とも呼ばれ、独占価格(※)と区別される。市場価格は市場での商品の需要量と供給量の均衡がとれた価格で決定されるため、需要量と供給量どちらかが変化すればそれに対応して価格も変動するのが原則である。
例えば、供給量よりも需要量が少ない場合は商品が売れ残るため、通常、市場価格は下がる。一方、需要量よりも供給量が少ない場合は商品が不足するため、通常、市場価格は上がる。逆に価格の変動よって需要量と供給量が変動する場合もある。なお、完全な競争市場で需要量と供給量が均衡しない場合には、調整が自動的に行われて需要量と供給量が均衡し、市場価格は必ず均衡価格へ向かっていく。このような、不特定多数の買い手による需要量と不特定多数の売り手による供給量が価格によって自動的に調節されるメカニズムのことを、価格の自動調節機能という。アダム・スミスが「神の見えざる手」と評したのがまさにこの価格の自動調節機能のことである。
(※)独占価格 ある業界を大企業が独占しているような場合には、その大企業が設定した価格が業界の基準となる傾向にあり、そうした経緯で決められた価格のことを指す。 独占価格は需要と供給の関係により設定された価格ではないことから、独占企業が意図的に価格を上げて大きな利益をあげることが可能である。このような独占状態は消費者にとってデメリットが多いという観点から、独占禁止法が存在する。
価格の自動調節が働かないケース
しかし、価格の自動調節機能がうまく働かず、問題が生じる場合もある。先述の独占価格のケースなどは市場メカニズムが機能する条件から大きく外れている。日本においては独占禁止法によって独占が禁じられているが、もともとその市場に供給者が少数しかいない場合には独占もしくは寡占状態になる。特に、電気や水道、鉄道などのインフラ整備のために莫大な資金が必要な業界においては新規参入が極めて困難であるため、少数の企業による寡占状態が発生しやすい。このように価格の自動調節機能がうまく働かないことを市場の失敗という。なお、市場の失敗が発生する原因は他にもあるが、ここでは割愛する。
市場価格のメリットとは?
市場価格のメリットは、企業間での競争が生まれることによって商品の価格が安くなったり、サービス内容が充実したり、機能や性能の向上などにつながることである。そのため、消費者は多くの商品の中から自分が欲しい商品を低価格・高性能で手に入れることができる。
例えば、携帯電話会社の競争により、薄型・軽量化などの品質向上、カメラやアプリなどの性能向上、通話料金などの値下げなど、消費者はさまざまな恩恵を享受している。もし、市場価格が導入されなかった場合は企業が努力を怠るようになり、消費者は少ない種類の中から高価で低品質な商品を購入せざるを得なくなる。
市場価格のデメリットとは?
市場価格のデメリットは、何らかの原因で需要量もしくは供給量のいずれかが増減すると価格が暴落・高騰することである。
例えば、電力スポット市場において2020年12月下旬以降、寒さによる暖房器具等による電力需要が増加し、市場価格が高騰した。一時、最高価格は250円/kWh、平均価格は150円/kWhを超える水準まで価格が高騰。2020年度の年間平均は11.8円/kWhであることを考えると10倍以上に上昇した。経産省は高騰する市場価格を鎮静化すべく、2021年1/15(金)にインバランス料金の上限を200円/kWhとする措置を発表。さらに市場関連情報を公開し、市場監視等を追加で実施した。こうした対策が功を奏し、市場価格はその後適正価格に落ち着いた。