希望小売価格とは?希望小売価格と販売価格は別のもの?違いについて徹底解説!

読み方:きぼうこうりかかく
Pocket

希望小売価格とは?

値札 イメージ
MediaProduction/i-stock

 メーカーや卸売業者が自社で製造した商品を販売する際、希望価格として設定する小売価格のことである。本来、店頭価格は小売業者が自由に設定できるものであり、メーカーや卸売業者は出荷価格しか決めることができない。独占禁止法でもメーカーが「再販売価格」を指定し、小売業者へ販売価格を強制することを禁じているため、希望小売価格はあくまでもメーカー側が希望した販売価格と位置づけられる。

 そのため、希望小売価格と実売価格の間で差がつくことが少なくない。1980年代に家電業界などで価格競争が激化し、「希望小売価格の〇%引き」といった店頭価格が当たり前となり、いわゆる「二重価格表示」が問題視されるようになった。二重価格表示は、不当表示に該当するため景品表示法で細かく定められている。簡単に言うと「消費者に商品やサービスを提供する際、実際よりも有利であるかのように誤認させてはいけない」ということである。

 例えば、ある商品を「通常1000円を50%OFFの500円」で販売したとする。その場合、この商品が実際に「通常価格1,000円」で販売されていた実績がなければ通常価格1000円の根拠が無いため、「実際より有利であると誤認させる表示」に該当し、違法となる。この点について公正取引委員会が二重価格表示防止のための基準を設けたため、その基準に抵触しないように店頭価格の設定を小売業者に委ねる「オープン価格」が急速に普及した。

 ただし百貨店などは例外であり、ブランド品などの高級品を比較的多く扱っているため、自由に価格を決定するオープン価格ではなく、定価もしくは希望小売価格での販売であることが多い。

希望小売価格のメリットとは?

メリットのイメージ
Advantages and disadvantages

 希望小売価格のメリットは、希望小売価格での販売からどのくらい値下げしたのか割引額を表示できることである。値下げ後の価格を表示することができるため、たとえば、「希望小売価格1500円」とわかる商品を1000円で販売した場合、消費者には「お得感」が生まれる。このようなお買い得感を演出することで集客につなげることが可能である。ただし、これらの表示は前項で述べた二重価格表示に抵触しないよう、希望小売価格での販売実績が一定期間あることが前提となる。

 また、希望小売価格は「上代」、卸値は「下代」としてあらかじめ相場が決まっているため、小売業者が仕入れを行う際に「掛け率(※)」を考慮して価格交渉を行いやすいというメリットもある。

※掛け率
上代(販売価格)に対する下代(仕入れ価格)の割合のことで、商品を販売価格の何%で仕入れることができるかを表したもの。掛け率は業界や商品のジャンルによって全く異なる。

希望小売価格のデメリットとは?

 希望小売価格のデメリットは小売業者が値下げ価格を表示できるため、小売業間で価格競争が起きやすく二重価格表示につながりやすい点である。消費者にとっては希望小売価格と販売価格の2つの価格が提示されるため、「その商品の本当の価格は何円なのか?」という混乱を招く原因ともなる。

 また、大幅な値下げ価格によって商品の安売りが続くことで消費者に「あのメーカーの商品はいつも安売りされる」という印象を持たれてしまい、商品の持つイメージが悪くなることも考えられる。

 もう一つのデメリットとして、希望小売価格はあくまで参考値であり小売業者側で自由に価格を変えることができるため、あたかも元の価格から大幅に割引をしているかのような不当表示がされる可能性がある。例えば1個1,000円が相場の商品を希望小売価格が2,000円であることを利用して「希望小売価格2,000円から50%OFFの1,000円」と宣伝して販売することで、消費者が割安と誤認して購入してしまう可能性がある。

流通基礎用語集トップへ

関連キーワード:

人気記事ランキング

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態