クローズド・モールとは?オープン・モールとの違いは?徹底解説します
「クローズド・モール」とは、すべての店舗・キーテナントが屋根付きの1つの建物に入っているショッピングセンターの構造をいう。もちろん、建物内は照明および空調設備が備えられている。一方で、各テナントが軒を連ねるかたちで出店するショッピングセンターを「オープン・モール」という。

クローズド・モールのメリット
クローズド・モールのメリットは、天候に左右されず買い物が楽しめる点、狭い用地でもテナント収容が可能な点にある。クローズド・モールには屋内に駐車場施設が設置されており、雨が降っていても濡れずにクルマに乗り込むことができる。木更津や横浜ベイサイドなど各地にオープン・モールを展開する三井アウトレットパークも、北陸や北海道ではクローズド・モールを採用する。
北陸初のアウトレットとして2015年にオープンした「三井アウトレットパーク北陸小矢部」(富山県)は、2階建ての建物に150のショップ(スポーツ・アウトドア・アクセサリー・紳士婦人ファッション・雑貨類)が入居する。
東に低気圧が張り出す西高東低の冬型気圧配置は、北海道・東北・北陸・山陰の日本海側に大雪をもたらす。とくに北陸地方は国内屈指の豪雪地帯で、新潟県の12~2月の平均降雪日は月の半分以上、19日に達する。「屋根付き」は、雪深い地方において集客の重要なポイントとなる。
また、アーバンエリア(都市地域)のように広い用地確保が難しい地域でも、クローズド・モールが強みを発揮する。狭い用地では必然的にフロアを増やして床面積を確保することになる。とくに商圏・売上規模の大きいリージョナルショッピングセンター(RSC)は、クローズド・モールの採用が多い。
たとえばイトーヨーカドー系の「アリオ」も、首都圏に展開する店舗はクローズド・モールが主流となっている。
クローズド・モールのデメリット
クローズド・モールのデメリットは、買い回りにおける利便性の悪さ、空間の閉鎖性、巨額な初期投資、拡張性の低さなどが挙げられる。
駐車場が平場にあるオープン・モールと違って、クローズド・モールの場合は駐車場から売場までエレベーターでの移動をはじめとして、一定の距離がある。また、天候の影響を受けずに買い物ができるというメリットがある反面、買い物は施設内に限られてしまい、オープン・モールのように街歩き感覚で時間をかけて買い物を楽しむというスタイルにはなじみにくい。
運営サイドの立場からも、課題は多い。最初に一棟建てる必要があり、初期投資が膨らみがちなうえ、後から施設を拡張するのも構造上、難しい。
クローズド・モールの実例

クローズド・モールの実例として、イオンモール(千葉県)の取り組みについて紹介する。
イオン(千葉県)グループの中核企業であるイオンモールは、地方都市の利便性を都会並みに高め、消費者からの支持を集めている。地方では「日常の移動手段は車、週末はイオンモールで1日過ごす」ライフスタイルが定着、「わざわざ都会に出ていく必要はない」と考える若者層を生み出した。今や地方で生活する人たちの生活満足度は、イオンモールをはじめとしたSCの有無によって決まるとまで言われるようになっている。
同社では国内外含め、現在200余のショッピングモールを展開しているが、その多くがクローズド・モールを採用している。
イオンモールのビジネスモデルは、テナント誘致、モールのレイアウト設計がカギとなっている。円形の通路を用いて回遊性を高める、吹き抜けを上手に使って採光を採り入れ空間の閉鎖性を解消するといった具合に、イオンモールはクローズド・モールのレイアウト設計のノウハウを駆使し、「郊外型」「都市型」「地方型」のタイプに応じたレイアウト上の工夫を取り入れるなど、商業施設全体の価値を高めている。