POP広告とは?いつも見ている“アレ”も実はPOP広告?!徹底解説
POP広告(POP)とは
POP(ポップ)広告とは、「Point of purchase advertising(購買時点広告)」の頭文字から取った略語で、店舗内外の販売促進のために使われる様々な広告を意味する。直訳では「購入時点広告」と訳されるが、元の「Point」の意味は場所や地点を表すことが多く、店舗内外の様々な場所を含む「購入地点広告」と表現する方が原語の意味に近いとする説もある。
POP広告の始まり
国内では、戦前から全国的な販売網を展開していた明治製菓(東京都)や森永製菓(同)、資生堂(同)は、ポスターや看板など店舗用広告物を使っていた。1950年代からはセルフ方式のスーパーマーケットが増加し、店員に代わって商品説明をする手段としてPOP広告が導入された。70年代に入ると市場環境が売手市場から買手市場へと変容、小売店は消費者ニーズの多様化や小売店間の競争を勝ち抜くためにマーチャンダイジング(以下MDと略)の導入が活発化した。その流れの中で、MDの一つの手法であるインストアマーケティング、その実行手段となるPOP広告の利用が本格化し今日に至っている。
POP広告の目的と場面
POP広告の目的は、店舗や陳列している商品を来店者に印象付け、購買意欲を喚起することである。POP広告が掲示される場所は、大きく「アウトショップ」、「インショップ」、「商品まわり」に区分される。
- アウトショップ(店舗外周)でのPOP広告は、店舗の前を通行する人々を店に呼び込むことが狙い。イベントやキャンペーンなどを、のぼりや看板で告知することが多い。
- インショップ(店舗内全般)でのPOP広告は、歳時や記念日などの雰囲気を盛り上げ、来店者の購買意欲を駆り立てることが狙い。ポスターやタペストリー、吊り下げバナーなどを使うことが多い。
- 商品まわり(陳列棚や商品本体)でのPOP広告は、特定の商品を来店者に強く印象付け、購買意欲を決定づけることが狙い。シェルフトーカー、卓上スタンド、ショーカード、ステッカーなどが使われている。
また、アウトショップから商品周りまで、多目的な使い方が可能なデジタルサイネージ、電子POPディスプレイなどが使われることも多い。
POP広告のメリット
POP広告は店員に代わって通行人を店内に呼び込み、その時々の時節や店舗主催のイベントなどの雰囲気を店内で盛り上げる。さらに個々の商品の魅力を来店者に訴えかけ、購買意欲を高める効果が期待できる。またイベントやキャンペーンなどのPOP広告でライブ感を感じさせ、店のオリジナリティを高めることもできる。
POP広告のメリットは販促効果だけでなく、非常に低コストで実行できる点である。例えば1枚の紙とマーカーからでも制作が可能であり、コストパフォーマンスが高い販促手段と言える。
POP広告のデメリット
POP広告は自店のオリジナリティをアピールできる手段であるが、適切な表現内容と見た目の分かりやすさ、しゃれた印象を感じさせるデザインの見栄えが必要である。それを実現する人材がおらず外注するなどの場合には、本来のPOP広告の低コストというメリットが薄れることになる。
また来店者の行動パターンや、売場構成の企画にそったPOP広告の配置が必要である。無秩序な配置では来店者にとって煩雑な掲示物となり、店舗のイメージダウンとなりかねない。
POP広告の受賞作品例
ここでは、「第50回日本プロモーショナル・マーケティング協会展2021」で受賞した作品の中から3例を紹介する。
経済産業大臣賞を受賞したのはアサヒ飲料の「三ツ矢の日リモート接客売場演出キット」、出品会社は凸版印刷である。これまで三ツ矢サイダーの記念日に社員が店頭で行っていた推奨販売を、遠隔操作で動くアバターを活用してリモート接客するための演出キットである。コロナ禍による新たな生活様式に対応する試みが評価された。
審査員特別賞を受賞したのはペルノ・リカールのウイスキー「シーバスリーガル18年の店頭試飲用ツール」、出品会社はDOBIN DISPLAY CO.LTDである。蒸留器をモチーフにしたウイスキーを瞬時に冷却する試飲用ツールで、商品を魅力的に見せる演出が評価ポイントとなった。
金賞を受賞した受賞作品のひとつに、東日本旅客鉄道とジェイアール東日本企画が共同広告主となる「JR山手線/東京感動線/電子ペーパー中吊り」がある。出品会社は大日本印刷。外見は通常の中吊り広告であるが、大日本印刷「DNP電子ペーパー」が採用されている。ディスプレイとして表示内容の切り替えが可能であり、「東京感動線の”ちょっとだけ未来”」というコンセプトに合致したPOP広告となっている。