コンサルが解説「OMO戦略とは」 レジなし店舗でスマート購買体験
③カート機能の統合
ECのカート機能と店舗でもレジ機能を統合し、店舗でレジなし、キャッシュレスを実施可能とする。これにより、ECで購入後未受領商品などの受取場所の変更などを可能とする。
④決済(返品・交換)
店舗でもECでも同様の決済手段から選択可能とする。特に来店時のクーポン適用や招待状による飲み物サービスなどで、アプローチの方法の多様化を図る。また、店舗での返品や交換実施後、自分の端末で結末の確認を行えることも重要である。
ここで、参考として「OMOで新たにできるようになること」についても付加しておきたい。
デジタル化が進んでいる中国の事例になるが、都市部スーパーマーケットでは、商品に付いているQRコードにスマホをかざすだけで即座に商品の詳細やレビューを見ることができる。そして、「商品の実物を見て、詳細・レビューをチェックした」というデータが個人IDに紐づくのである。
OMOを展開する5つのステップ
最後に具体的にOMOを実装するための5つのステップについて解説する。
①全体計画
自社を取り巻く環境や競合の調査を行い、ターゲット顧客層を決め、販売チャネルや販売方法を考える。ECのみの場合は大きなコストをかけない洗濯もありますが、実店舗を考慮すると、全体計画の必要性がより高まる。
②組織間の調整
OMO戦略では、実店舗とEC間で各種管理の一本化が必須となる。在庫、顧客情報の一元管理、これらが顧客満足度向上を優先しつつ、自社の売上・利益を最大化するポイントだ。だが、国内の企業では、店舗とECは組織利益が相反したり、店舗のエリア間もあるいみライバル視しているので、これらを組織論によって解決する必要がある。商品から組織を見ることを、顧客から見るように変える必要があるかもしれない。
③実績配分のルール化
OMO戦略を導入すると、部門を超えた販売活動が行われる。ECで購入した商品を店舗で受け取る場合や他店舗から顧客の自宅に配送する場合は、売上をどの部門の実績とするかをあらかじめ定めておき、実績配分をルール化する必要がある。
④商品情報の一元管理
商品情報には、商品自身のデータ(サイズ・色のバリエーション・素材等)と在庫状態(ロケーションや入荷予定や出荷可能状態など)がある。
実店舗やECなどで品切れが生じた際に、販売経路のどこに在庫があるか把握し、最短期間で顧客に提供できるように在庫情報を一元管理するシステムを導入する必要がある。
⑤顧客情報を一元管理
実店舗とECサイトそれぞれで管理していた顧客のペルソナや購入履歴、ポイント情報を連携させるための一元管理システムを導入する必要がある。このシステムの導入によって実店舗とネットショップの境が無くなり、どちらで商品を購入しても顧客情報を把握できるようになるため、よりきめ細かいアプローチが可能になる。
以上、OMO戦略とは何か、OMO戦略で小売業が抱えるどんな課題が解決できるのか、OMOを実践するうえで必要になることは何か、そしてOMO戦略実践のためにどんなステップを踏めばいいのかについて解説した。
OMO戦略の着実な実行は、競争優位性をどれほど高めるかがご理解いただけたと思う。
小山 優雄(こやま まさかつ)
1965年東京生まれ、横浜国立大学卒業を千代田生命保険相互会社(現ジブラルタ生命保険)に入社、システム企画を担当。セゾン情報システムズに入社し、大規模開発のPMO、事業統括部マネージャーを歴任。DTWO SOLUTIONS(ディツーソリューションズ)を設立、大手コンサルファームと銀行・製造業・サービス業のコンサルティング案件に従事。株式会社スクロールに入社に取締役グループCIOに着任。システムインフラの全面刷新、基幹システムの再構築を実施。2022年スクロール社を退社し、独立。現在に至る。
オラクル社、富士通などIT企業の主催のセミナーにおいて、DX推進・ICT戦略・データセキュリティなど、多数の講演を実施。