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イオン、オーケーも導入 システム問題を迅速に解決できる「New Relic」

注目テクノロジー企業

近年、EC市場は拡大を続けている。小売業においてもEC比率は年々高まっており、さまざなデジタルサービスが展開されている。もはや、デジタルは小売ビジネスのコアになりつつあるが、ECサイトの運営、モバイルアプリ、決済、レコメンド、配送、会員IDの管理、ポイントやクーポンなど、ビジネスを支えるシステムの構成はますます複雑になっている。システム全体をリアルタイムに把握できるオブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームを提供しているNew Relicに小売業における課題や活用事例を語ってもらった。

小売業におけるシステム障害のビジネスへの影響は大きい

New Relic株式会社
技術統括
コンサルティング部 兼 プロダクト技術部 部長
齊藤 恒太 氏

 小売業においては、顧客のデジタルシフトが進む中で、特にリアルとデジタルをつなぐシステム構成が必要になる。しかし、社内にエンジニア組織を持たない企業も多く、システムのことはベンダーに丸投げするなど、低位安定の関係に固定化されていることも多い。

 「全業種と小売業を比較すると、重大なシステム障害が発生した企業割合、重大なシステム障害の検知時間の長い企業割合、重大なシステム障害による年間の機会損失額ともに、小売業界において高い。

 アプリがつながらない、決済に失敗したなどの顧客体験が、巨額な売上損失に直結するなど、ビジネスへの影響も大きくなっている」とNew Relic技術統括コンサルティング部 兼 プロダクト技術部部長の齊藤恒太氏は語る。

小売業におけるシステムの重大なシステム障害は全業種と比較しても高くなっている

システム全体のオブザーバビリティプラットフォームを提供する「New Relic」

 New Relicは、このようなシステムが抱える課題に対し、システム全体のデータをリアルタイムに取得し続け、常にシステム全容の状況把握と改善ができるオブザーバビリティプラットフォームを提供する。

 各システムの情報がサイロ化し、非効率なオペレーションを繰り返していた企業にとっては、組織の誰もが問題の原因をすぐに特定し解決することで、EC/基幹システムをより安定的に稼働させることが可能になる。また、運用業務の自動化・効率化によるコストの削減や、顧客体験の向上などによる収益の向上も見込むことができる。

New Relicが提供するオブザーバビリティプラットフォームの全体概要

 このようなNew Relicの取り組みは、日本国内では600社以上、そのうち小売業では100社以上に採用されている。イオンでは、巨大なシステムの障害調査の短縮化に成功。経験豊富な一部のエンジニアに頼るのではなく、全員がシステムで発生した問題を解決できるようにすることで、組織文化改革にもつながった。

 三越伊勢丹では、これまで解決までに数時間を要するような問題を、数分レベルまで短縮することに成功した。百貨店とそれを支えるグループ各社の情報戦略を担ってきた三越伊勢丹システム・ソリューションズ(IMS)における信頼性向上と、エンジニアの育成にもつながっている。

 最近では、1都3県に150店舗以上を展開する食品スーパーのオーケーでも運用が開始されている。オーケーでは2021年10月にオーケークラブ会員限定のサービスとしてネットスーパー、2022年10月にはオーケークラブ会員カードをモバイルアプリ化してリリースしているが、並行して全システムのクラウド化も推進してきた。

 クラウド上に展開したすべてのシステムの観測をNew Relicで行うことで、異常の検知や原因特定のスピードアップ、運用の効率化・標準化に役立ている。

ビジネスオブザーバビリティを実現するPathpoint。生成AIの活用も

 New Relicはシステムの品質向上などを目的としたエンジニア向けともいえるが、今後は、ビジネス視点での情報を可視化していくビジネスオブザーバビリティを目的とした新しいサービス「Pathpoint」も強化する考えだ。

 本来、システムとビジネスは綿密に連携しており、切り離して考えることはできない。「Pathpoint」は、ビジネスに影響するシステムの問題をリアルタイムに把握し、ビジネスに影響する問題の発生個所の切り分けと対応を迅速化することで、ビジネスチームと技術チームがデータに基づくROIの高い意思決定を可能にする。

 「Pathpoint」により、これまで分断されがちだったビジネスプロセスと技術要素を関連づけることができる。

ビジネスプロセスと技術要素を関連付け、システムの問題をリアルタイムに把握

 さらに、2023年5月には、生成AIの活用についても発表されている。New Relic上の画面から、質問を投げかけるとAIから回答が得られるなど、生成AIを活用することで、専門性の高いエンジニアでなくてもより早く問題分析を行うことが可能になった。2024年4月より生成AIの開発者むけに、AIアプリの観測を可能にするAIモニタリング機能についても一般提供が開始されている。

 齊藤氏は、「今後は、小売業界向けのイベント・団体でのメッセージ発信も強化していく予定です。障害対応による非効率な業務、システムのモダン化や複雑化、ベンダー依存の体質など、小売業が抱える問題はさまざまです。Sler/ベンダーとの連携や協業を図りながら、小売業の課題解決に貢献していきたい」と話してくれた。