決済から読み解く流通争奪戦1  現金崇拝の終わりの始まり キャッシュレス比率1日で7%アップの店も

佐藤元則(NCB Lab.代表)
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2019年10月1日は、日本の決済史に残る大変節点になるだろう。消費税が8%から10%に引き上げられたからではない。日本政府がキャッシュレス還元施策を打ち出したことで“潮目”が変わったからである。日本人の現金崇拝の終わりが、ついに始まったのだ。

増税時の景気対策の要がキャッシュレスポイント還元

 日本政府が増税を決断したのは2018年10月15日のこと。そのとき安倍晋三首相は「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」と述べた。その対応策の核となるのが、キャッシュレス決済でのポイント還元施策だった。

 これに呼応するかのように、高らかに進軍ラッパを吹き鳴らしたのがPayPay(東京都)だ。2018年12月、「100億円あげちゃうキャンペーン」を打ち上げた。その魅惑的な金額、20%キャッシュバックという大盤振る舞いに、消費者もマスメディアも飛びついた。

 連日連夜、メディアはキャッシュレスとモバイル決済の話題でもちきりとなった。家電量販店には、スマホを片手に大勢の人たちが列をなし、ごった返した。

 決済が客を呼び込み、決済が売上をあげてくれる――。かつて決済が流通にこれだけ影響を与えたことはなかった。PayPayが展開したこの“100億円キャンペーン”は家電量販店の株価が上がるほどの大きなインパクトがあった。

 この集客効果に目をつけたのがコンビニエンスストア業界。競ってモバイル決済を受けつけた。これに続くようにドラッグストア業界や飲食チェーンも食いついた。

 他方、モバイル決済事業者の競争がヒートアップしていく。PayPayに負けてはならないと、LINE Payも同様のキャンペーンを実施。Origami Payや後発のメルペイも、次々にキャンペーンを打ち出した。

 既存のカード会社も黙ってはいない。JCBは非接触決済QUICPayを利用すれば、決済金額の20%をキャッシュバックすると発表した。

 こうした各社の施策によって、「キャッシュレスは『おトク』である」という意識が、日本人の意識に刷り込まれていく。

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