アングル:中国GDP予想超えでも成長回復に疑問符がつく理由

ロイター
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4月18日、中国の第1・四半期国内総生産(GDP)は前年比6.4%増となり、成長が一段と減速するのではないかとみていた投資家を一安心させた。北京で2016年3月撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[上海 18日 ロイター] – 中国の第1・四半期国内総生産(GDP)は前年比6.4%増となり、成長が一段と減速するのではないかとみていた投資家を一安心させた。1─3月鉱工業生産も2014年以来の高い伸びとなった。ただ株式市場は好感せず、果たして成長の持ち直しが今後も続くのか、との疑問につながっている。

中国企業の収益見通しは不安定で、なお続く米中貿易協議や世界的な成長鈍化、貿易縮小などが中国経済全般を圧迫している構図が見えてくる。

CSI300指数はGDPが発表された17日は横ばい、18日は0.4%安で引けた。

今年大きく上昇してきた中国株にとって、こうした良好な経済指標は想定済みだった公算も大きい。Shanshan Financeの株式トレーディング責任者ウー・カン氏は「株価には経済の改善が織り込まれていた。市場はいつでも先回りする」と述べた。

実際CSI300指数は、年初来上昇率が33%強と世界の主要株で最も高い。中国政府が経済対策を打ち出したことで投資家の買い意欲が高まったためだ。投資家の熱狂ぶりは、フォーサイト・ファンド・マネジメントが先月受け付けを開始したファンドに資金が殺到し、予定の期間を待たずに募集を打ち切ったほどだった。

一方で急速な株高は、政策支援に依存している市場が一体どこまでさらに値上がりする余地があるかという懸念も生み出した。

みずほ銀行のアナリストチームは、特に不動産セクターには「過度の楽観」が見られ、中国政府が年後半に引き締めに転じて株価に悪影響を及ぼしかねないと警告する。

企業収益の先行きがより厳しくなってきたことも、株価の重圧になるかもしれない。キャピタル・エコノミクスのアナリスト、ユベール・テュ・バロシェ氏は顧客向けノートで、企業利益は国内経済より輸出データに連動する側面が強いことを理由に、中国株が数カ月中に下落すると予想した。

中国の3月輸出は昨年終盤の大幅な落ち込みからは立ち直ったものの、世界経済の成長力が弱いので輸出の持続的な力強い回復が制約を受けるとみられている。

デュ・バロシェ氏によると、今年は中国企業の1株利益予想が上振れていることから、投資家が貿易動向や米中協議の行方を楽観していることが分かるが、同氏の見方では米中が合意したとしても、貿易が上向く公算は乏しい。なぜなら世界経済の見通しが暗いからだという。

それでも中国政府から新たな対策が出てくれば、株価に追い風が吹くとの声も聞かれる。

BNPパリバの広域中華圏・グローバル市場責任者ジョージ・スン氏は「一部の先進国と違って中国の政策担当者にはなお行使できる手段がある」と述べ、さらなる成長テコ入れに金融政策と財政政策が使われてもおかしくないとの見方を示した。

バリュー・パートナーズ・グループのルイス・ソー共同最高投資責任者は「中国株は今年かなり上昇したが、心配する必要はない。単に昨年の下落分を取り戻しているだけだからだ。われわれはまだ上がる余地があると考えている」と主張した。

ソー氏は、景気刺激策が実体経済に浸透するには3カ月から半年かかるのが普通だと説明した上で、中国株は米国の相対的な金融緩和策からも恩恵を受けるだろうと付け加えた。

(Andrew Galbraith記者、Samuel Shen記者)

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