ECの当たり前をリアル店舗でも実現するパナソニックの「来客分析サービス」とは?
流通業界は、2020年は新型コロナウイルス感染対策に追われた1年であり、今後は「ニューノーマル」や「ウィズコロナ」と呼ばれる時代への対応が重要になる。
新型コロナによる巣ごもり需要からECが台頭。その一方でリアル店舗では、従業員や来店客の感染対策、非接触のためのキャッシュレス化の推進などの対策に加え、来店頻度の減少への対応や優良顧客育成のための取り組みが急務な課題となっている。
リアル店舗におけるデータ活用が本格化
流通業のDXが進み、あらゆる情報をデータ化する動きが顕著だ。売上、在庫、顧客データなど店舗運営に関わるデータを統合することで事業の現状を可視化する動きが加速化している。さらに画像データをマーケティング施策に活かす事例も増えている。 従来、画像情報は店内に設置したリアルな映像を撮影するネットワークカメラを使って、万引きの抑止など防犯効果を高めるために設置されるケースが多かった。そのネットワークカメラを使って、店内での買物客の動線の把握や最近では顔認識により優良顧客の来店をチェックし、接客サービスの向上に活用する事例も増えている。
その一方で、ネットワークに接続するカメラをはじめとしたデバイスが増えることで、店舗のインフラ投資が増えれば、その設置や保守に対するコストも増えていく。リアルな画像データを保有するため個人情報の扱いも注意しなければならない。運用コストや手間の煩雑さから費用対効果を疑問視するケースもある。
IoTカメラを活用するプラットフォームとは
パナソニックは3年ほど前から、小売業の店舗をはじめとして画像データ収集を低コストかつ容易にする「Vieureka(ビューレカ)」を提供している。「Vieurekaはネットワークカメラのソリューションではなく、IoTカメラのプラットフォームと位置付けている。最大の特徴は、店内に設置するIoTカメラをエッジデバイスとして活用し、カメラ内部で画像解析を行い、解析結果をクラウド上で分析を行えるようにした点。IoTカメラにCPUが内蔵されており、買物客の顔の画像を取得しない点でも個人情報の流出といったトラブルを回避できる」と同社の有馬義久氏は語る。
「様々なアプリを自由に開発、搭載、遠隔からアップデートできるという点で、IoTカメラの解析データを必要とするような業種、小売業でのマーケティング分析に限らず介護・看護分野や工場、事務所の入退室管理、建設現場での動線管理など幅広い分野で使用できる」と久保田航平氏は語る。
「通常のネットワークカメラの場合、高精細の画像を必要とすれば通信データ量大きくなる。しかしIoTカメラは画像解析により取得したメタデータのみを送信するので通信データ量が小さくトラフィックを阻害しない」(久保田氏)ことで、新たな広域帯ネットワーク設置の必要がない。また、「リアルな画像データではないので、個人情報の保護で過剰にコストをかける必要もなくなる」(有馬氏)と応用範囲も広いプラットフォームと言えるだろう。