その視察、本当に効果的? マーケティングの視点で見る競合調査3つのポイント

島袋 孝一 (株式会社Preferred Networks マーケティング)
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視察効果を最大化するための3つの視点とは?

 そんなときにイメージしていただきたいポイントが、「プロ・生活者・憑依」の3つの視点を持つことです。順を追って説明しましょう。

①プロの視点
 いわずもがな、流通に携わるプロとしての視点です。これは自身の業務範疇での視座はもちろん、業務上関係する他部署や、日頃はあまりかかわりのない部署(営業・マーケティングの担当であれば、システム部や開発部門など)に立った時の視点、あるいは上司や経営トップならどう見るだろうか? といった目線も持つと、より多面的な見方ができます。最近のトレンドだと、店舗内の「デジタル化」が顕著ですので、天井部のカメラ、店頭サイネージ、無人レジ、アプリ開発のベンダーはどこかなど、新たに気に留めるべき点も増えているかもしれません。

②生活者の視点
 これは実際に店舗に来訪している、その街に住む生活者(顧客)の行動を注視するという視点です。買物動線、カゴに入れてる商品、一度手にとったものの購入には至らなかった商品など、生活者の視点で店内の顧客の動きを見つめることも重要です。そのうえで、自社店舗にあって競合店舗にないもの、あるいはその逆のことが可視化されてきます。

③ 憑依の視点
 これは上述した「生活者視点」と似ているようで、少しだけ違います。生活者視点は顧客のリアルな行動を観測するのに対し、こちらは架空・空想・イマジネーションも含めた視点になります。たとえば「自身が競合店の近くに住んでいる」という設定をつくり、そのキャラクターになりきるのです。「地元に住む買物客」に憑依し、「また来たいと思うか」「もっとこんな商品やサービスがあればいいのに」といった感想をまずは抱いてみて、その後に分析するのです。

 ただし、視察レポートをつくる際にこの3つの視点をごちゃ混ぜにしてまとめてしまうと、上司からは「結局何が言いたいのか?」と突き返される可能性もありますのでその点は要注意。一つひとつの視点で情報を整理し、他の人が読んでも理解できるようにまとめることも心掛けてください。この「まとめる」という作業が少し大変ですが、3つの視点で視察することは、自身の引き出しを拡張することにつながりますので、ぜひ実践してみてください。

競合しない業態・店も常に視察しておこう

 さて、ここまでは「直接競合する店の視察」を想定して解説してきました。しかしマーケターとしては、異業種の取り組みもぜひキャッチアップしてほしいところです。

 たとえば私は、ファッション・アパレルのラグジュアリー/ハイブランドには個人的にあまり興味・関心はありませんし、購買ターゲット層でもないと思われます。しかし、そうしたブランドが展開するポップアップストアやエキシビジョン(展示会)には、積極的に足を運ぶようにしています。メンズ、レディース、カテゴリーを問わずです。

 また、最近では、コスメブランドもよくチェックするようにしています。こちらは、40代男性が一人でポップアップストアなどを訪問すると明らかに違和感があるので(笑)、異業種・異職種の友人に声をかけて訪問しています。これは、前述の「3つの視点」で見るうえでも、大きく役に立ちます。憑依するまでもなく、直接リアルタイムに同行者の感想・感性を手に入れることができるからです。

 自社のブランドとまったく異なる事業者の店舗や施設の体験から「楽しい・うれしい・新しい」の種を発見し、自社に還流できるポイントを探すのも、ブランドの飛躍のきっかけになるかもしれません。皆さんが体験したユニークなものがありましたら、私のTwitterアカウント(@simakoo1)までご連絡ください。すぐに訪問してみます!

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記事執筆者

島袋 孝一 / 株式会社Preferred Networks マーケティング

2004年パルコ入社。店舗リーシング・宣伝・オムニチャネルを担当。2016年総合飲料メーカーキリン入社。グループ横断デジタルマーケティングを担当。2019年1月ヤプリ入社。未上場期〜コロナ禍のマーケティングを牽引。2022年1月より株式会社Preferred Networksに参画。

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