第三回Microsoft Retail Open Lab 『AI時代の流通業界のプラクティスと新たな展望』セミナー開催レポート【後編】

2024/08/09 09:00
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【パネルディスカッション】
「生成AIと流通業のイノベーション」
Wisdom Evolution Company代表取締役
Strategy Partners代表取締役
西口 一希 氏

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員エンタープライズ事業本部流通サービス営業統括 本部長
河上 久子 氏

日本マイクロソフト株式会社
流通サービス営業統括 インダストリーテックストラテジスト
岡田 義史 氏

セミナー中の様子

データ分析・活用が生成AIの登場で容易に

 最後のセッションとして、生成AIがもたらす流通業のイノベーションについて西口氏、河上氏、岡田氏の3人でパネルディスカッションを行いました。まず河上氏から「生成AIなど新しいテクノロジーが登場し、流通業のマーケティングも大きく変化しています」としたのに対し、西口氏は自らP&Gやロクシタンでマーケティングに関わった経験から、「ウォルマートやテスコなどは2000年代初頭からデータ分析・活用への取り組みを熱心に行っていました。その時代、私自身も手作業でデータの分析に時間を費やしていましたが、今は生成AIの登場によって、分析作業も容易になっています」と、テクノロジーの発展でさまざまなチャレンジが可能になっていると語っています。

 その経験から西口氏がロクシタンでの再生に関わったとき、手作業でデータを細かく分析した結果、「お客様の16%が売上の60~70%を生みだし、営業利益への貢献は100%でした。残りの84%のお客様は新規獲得等でコストがかかり、営業利益を生んでいないということが分かり、既存顧客のロイヤル化や新規顧客のリピート化の施策につなげていきました」と言います。「小売業はデータ量が多いです。そのデータを分析することでお客様の理解が深まり、新たな知見、打つべき施策が見えてきます」とデータ活用の重要性を強調していました。

経営の効率化・最適化にAIの活用は不可欠

 
 「Microsoft Fabricは各種のデータをつなぎ合わせるソリューション。それとともに生成AIでこれまで不可能だったことを可能にしていきます」と岡田氏はテクノロジー面からデータ活用で新たな付加価値を導き出すことができるとしています。「具体的には、これまで、SQL などの技術的な言語が書けなかった人でも、普段の言葉と対話でそれを出力することができます。知らなかった、から、やってみたことがある、というパラダイムシフトが起きていることは、このデータが多い流通業界にとって大きな変換になっています。購買情報やID-POSといった構造化されたデータのみならず、商品仕様書、店頭でのオペレーションマニュアル、音声やセキュリティカメラなどを通じた画像をひとつの場所で管理し、生成AIを通じて活用する世界になってきました」と伝えていました。

 そのような新しい技術に対して対応しつつ、河上氏は「データ分析は手作業からツールを駆使してテクノロジーを利用する時代になっています。AIやデータの活用において経営も変化しなければならないです」と話しました。

 西口氏は「企業の経営者は短期の業績に囚われるが、例えば3年というスパンで、ロイヤルユーザーからもたらされる良い売上を向上させることに注力し、継続的な増益につなげていくことが重要です」と話しました。

 流通業の経営において、顧客のロイヤル化や離反傾向の分析や機会損失率をKPIとして組み込むことが、今ではAIを活用することで分析が容易にできるようになっていると語り、経営の効率化、最適化にAIをはじめ最新テクノロジーの利用は不可欠だと西口氏は指摘しています。

 岡田氏は「流通業の最新テクノロジーの活用はまだこれからであり、マイクロソフトとしてお客様に伴走して、課題解決につなげていきます」と話し、河上氏も「流通業のお客様にとって何が必要なのか、何ができるのかを真剣に考えていきます。ぜひマイクロソフトとともに、新しい取り組みにチャレンジしてほしいです」と締めくくりました。

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