第三回Microsoft Retail Open Lab 『AI時代の流通業界のプラクティスと新たな展望』セミナー開催レポート【前編】
【業界別AI取り組み紹介】
① サービス業
「従業員の問題解決をサポートするAI実現に向けて」
イオンディライト株式会社執行役員 IT責任者 秋田 圭太 氏
人手不足の課題解決に向けて生成AIを導入
サービス業での生成AI活用の事例として、イオンディライトの秋田氏が講演を行いました。全国にあるイオングループの商業施設をはじめ、様々な施設にファシリティマネジメントを提供する同社でも人手不足は深刻で「施設管理の現場を担う有資格人材の高齢化が進む中、生産性や業務品質の向上のために新卒社員や中途社員をどうケアするかが大きな課題であり、生成AI活用のきっかけでした」と秋田氏。「社内の誰に聞けばよいのか分からない。社内システムどこに欲しい情報があるのかわからない」という状況を改善するため、「質問に対して即座に回答してもらえる」仕組みをつくり、生成AIを「頼れるマネージャー」と模して「AIマネージャー」と命名し運用しています。
「検討を進める中で、すぐに生成AI活用がイメージできました」と秋田氏。生成AIと検索AIを組み合わせることで、質問に対して即座に回答できることをめざしました。「最初は回答精度が低くても、現場に早く提供し段階的に発展させていく」という方針で臨みました。
ステップ1では社内規程や業務マニュアルに基づいて回答する機能を2.5か月の開発期間でリリースし、2023年9月から現場での活用が可能となっています。それに続くステップ2として、業務データからの回答も実現。併せてステップ1では精度が低かったことから、精度向上を図りました。さらにステップ3では2024年6月にリリースした機能としてAIが参照するデータにインターネット上の情報を加えることで利便性の向上を図っています。
「AIマネージャー」の活用で業務時間を大幅に削減
「AIマネージャー」の画面上部には、木のアイコンを配置しています。「最初は芽から始まり、質問数が増えたことで木に育ちました。いずれは森に育てたいです」と“遊び心”も入れ込んでいます。「AIマネージャー」は生成AIにChatGPT-3.5を使用し、検索AIにはAzure AI Searchを導入したシステム構成となっています。回答精度を向上させる工夫として、質問内容によってプロンプトを分けてインデックスを振り分け、検索結果を有効化して上位3位を回答として表示できるようにしています。さらにAzure Functionsにより運用を自動化しています。
「AIマネージャー」の活用が始まり、ステップ1からステップ3にかけて質問回数は2~3倍に増え、それにより解決にかかる時間も大幅に削減できたと、秋田氏は効果を強調しています。
今後の強化ポイントについては、現在は社内データの検索やそれに基づいた質問や回答が主な機能だが、新たな提案や業務サポートができるようにしたい、とのこと。人事や特定の部署に集中する問い合わせを蓄積することで、回答内容を拡張し、精度の向上を図りたいとしています。さらに同社グループ各社への展開も視野に入れてサポートしていく考えです。
【後編】第三回Microsoft Retail Open Lab 『AI時代の流通業界のプラクティスと新たな展望』セミナー開催レポート