【小売業・特別対談】
「顧客時代」におけるデータ活用戦略の未来
オークワブランド価値向上で顧客満足度を最大化

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現場で役立つための「速い」データ活用

小林 私も前職は小売業界におりましたが、当時は販売データの集計を手作業で行っていました。本当に大変な作業で、基幹システムや様々なデータベースにアクセスし、データをまとめる作業だけで毎日5、6時間かかってしまう。データを分析して、経営層に施策提案をするという本来の業務になかなか時間を割けなかった記憶があります。

大西 データの分析では、アウトプットされたレポートだけ見ると、簡単に作れそうに見えますからね。そこに労力とアウトプットのギャップが生まれて、担当している部署はみんな疲弊してくる。

小林 ある全国展開されているアパレルメーカーでは、毎日2人がかりで多くの時間をかけてデータを集計し、要約してレポートを出していました。トレジャーデータのサービスを導入いただいたところ、作業時間が従来の3分の1以下に短縮できたそうです。

大西 実際、ポイント利用や併売なども考慮してお客様それぞれのストーリーを考えながら購買データの分析をすると、かなりの作業量になります。手作業では難しいし、時間も掛かってしまう。

小林 トレジャーデータの提供するCDPは、お客様がデータを分析する際に必要とされる「速さ」の需要に応えるため、必要なときに必要なデータをすぐに取得できるデータベースになっています。

大西 マーケティングや経営企画の部門ではデータを多様な切り口で分析することが求められる一方、当社は現場での数値認識が重要との考えがありますから、現場にはパターン化した数字が出てくるシステムを用意しないといけません。データや数字との関わり方は専門的に深掘りして活用する部分と、現場で誰もが日常的に活用する部分に二極化していくように思っています。

顧客理解に必要なのは「データの一元的な管理」

オークワアプリ(左)、ネットスーパーオークワ(右上)、ネットショッピング(右下)
オークワアプリ(左)、ネットスーパーオークワ(右上)、ネットショッピング(右下)

小林 オークワ様は、アプリやネットスーパーなど多岐にわたるチャネルをお持ちですね。

大西 「まずやってみよう」というマインドでチャネルを増やしてきましたが、結果として
システムが分散してしまったのは課題です。現段階でシステムの統合を進めていきたいと考えています。顧客IDを含むデータを一元的に管理できれば、お客様への最適な情報発信から購買までつながるような仕組みができると考えています。
最近はクラウドサービスなど、部署やお店ごとに簡単に導入できるシステムも多いため、余計にデータが散らばってしまっているという状況もあります。

小林 トレジャーデータにご相談いただくケースでも、業界を問わず、「データが分散してしまっている」という課題は多いですね。システムが部署やチャネルごとで分散し、うまく連携できていないという「サイロ化」の課題を持たれている企業様はとても多いです。

大西 チャネルが増えただけでなく、お客様の行動パターンも複雑になってきています。性別や年代といったわかりやすい枠組みが、むしろ余計な先入観として分析を邪魔しているように思います。
 家族構成が変われば消費行動も変わるし、いまは男性でも自炊する方が多い。コロナ禍で生活スタイルが変わった方も多いでしょう。男女比ではスーパーに来店するのは女性の方が圧倒的に多いので、そもそも男性向け、女性向けの商品というのが難しいのです。「お父さんのためにこれ買ってあげよう」というのもありますしね。そういうカテゴリーの分け方や売場での提案方法は、今後課題になるように思います。

小林 お客様を「個」で見ていくということが必要とされますよね。それがデジタル技術の進化で可能になってきています。セグメントから購買傾向を予測するのも必要ですが、お客様個々の様々なチャネルでの購買前、購買後の行動、POSのデータなどを分析し、販促に繋げていくという考え方です。また、その結果、商品カテゴリーの分け方やタグ付けも大きく変わるのではないかと思います。小売企業側の管理を優先したカテゴリー分けやタグ付けから、お客様の嗜好性に基づいたカテゴリー分けやタグ付けが出来れば、売上増加に寄与しそうです。

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