「MEO(地図エンジン最適化)」をマーケティングの重要施策にすべき理由

島袋 孝一 (株式会社Preferred Networks マーケティング)
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小売ビジネスを持続・成長させるうえで今も昔も欠かせないのが、「口コミ」の存在です。家族や友人といったリアルなつながりで拡散される口コミのほか、インターネット上の「口コミサイト」に投稿されるレビューは、来店動機に大きく影響するものに。そして昨今は、誰もが使う「地図アプリ」に投稿されるレビューの影響力が無視できないものになっています。

誰もが無意識に「口コミ」を見て、店を選んでいる

 行ったことのない飲食店や美容院、歯医者を予約する。ECサイトで買おう買うまいか迷っている商品を眺める――。このとき、われわれはある行動を共通してとっています。しかも、無意識に。

 それは、「口コミ・レビューを見る」という行動です。

 「食べログ」で、店についている星の数やユーザーからのコメントを見る。「ホットペッパーBeauty」や「Epark」で、接客の質や傾向を調べる。「Amazon」で、ポジティブなコメントとネガティブなコメントの両方を見ながら検討する。誰しもが行う、日常的な行動ではないでしょうか。

 少し前のデータ(2018年)となりますが、消費者庁からこんなレポートも報告されています。「商品やサービスの購入時に『口コミサイト』は『テレビ』と並ぶ情報源として重視されている。『SNSの投稿・写真等』も4割弱が重視している」(第30回インターネット消費者取引連絡会「口コミサイト・インフルエンサーマーケティングの動向整理」より)

 18年当時のレポートでは、とくに「白物家電・パソコン・化粧品」でその傾向が強かったようです。しかしコロナ禍を経て、情報取得手段がさらに”スマホシフト”しており、商材やカテゴリーを問わず、いつでもどこでも誰でも、「検索」→「比較・検討」ができる状態となっています。

「地図アプリ」が新たな口コミ拡散の場に

 そして、口コミが集まり拡散されるのは口コミサイトに限りません。今日では、地図アプリの「Googleマップ」、そしてその情報元ともなる「Google ビジネスプロフィール(旧「Googleマイビジネス」)」の進化がとくに著しく、生活者が企業の自社サイトに辿り着く前に、ある程度の情報を得られるようになっています。ただ、後述しますが、この「ある程度」というのが、店舗事業者にとってありがたい点でもあり、悩ましくもある点です。

 皆さんは、自社(自店舗)の「Google マップ」上の口コミを見たことがあるでしょうか? また、そもそも自店舗のGoogleマップ上の掲載基礎情報を見たことがあるでしょうか? 営業時間や駐車場のサービス体系などの基本情報は正しいものになっているでしょうか?

 ここが、前述の「ありがたくもあり、悩ましくもある点」です。生活者にとっては、わざわざ店舗公式のウェブサイトを訪れなくても、店舗の情報がわかることで、時間や手間の削減につながります。逆に企業(店舗)にとっては、自社・自店についての情報発信が容易に、広大に行える一方、自社のウェブサイトやSNSの更新をしつつ、Googleビジネスプロフィールまでも更新することが手間にもなります。実際、そのようにしている事業者はまだまだ少数だと思います。

「MEO(地図エンジン最適化)」がマーケティングの新たなキーワードに

 デジタルマーケティングの界隈では、以前からSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)というオンラインに限ったマーケティング手法がトレンドでした。しかし昨今ではこれに加えて、”生活者のリアルな行動の最適化”を図る「MEO:Map Engine Optimization(地図エンジン最適化)が注目されています。すでにMEO支援に特化したスタートアップも多く誕生しているくらいです。

 一般的に、食品スーパーやコンビニといった小売店は、冒頭に挙げたような飲食店や美容室のように、ネット上の口コミが来店動機に大きく影響するようなビジネスモデルではないかもしれません。しかし、ネットのレビューというものは、消すことのできない「デジタルタトゥー」として残っていくものでもあります。集客だけでなく、アルバイトの採用など事業の継続にも影響してくる可能性もあります。

 このほか、自社・自店でスマホアプリをリリースしている場合、それを配信しているプラットフォーム( App StoreやGoogle Play)にもレビューが多く集まります。つまり、ユーザーにとって使い勝手のよくないアプリを提供してしまっていると、そこにはシビアなコメントが集まることになり、企業や店へのイメージが悪化するおそれもあるのです。

結局は、全方位に対して誠実な商売を行うことが大前提

 この「口コミやレビューの存在」に関して、とある方のコメントの一節が僕の記憶に残っています。「企業から発信する情報(広告・宣伝・販促)だけでなく、『(コントロールできない)生活者からの口コミ』まで含めて、企業(店舗)のブランドやマーケティングの構成要素となっている。その総体として企業・ブランドが認知され、構成されていく」――。コントロールができないがゆえに、より信頼性や誠実性をもった日々の事業活動を、360度、全方位、全部署(本部・店舗・正社員・パート/アルバイト含め)に向けて継続していくことが求められているのです。

 実店舗のVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)を整えるのと同様に、スマホ上で店舗がどう見えているか? という意識を持つことも、オンラインとオフラインが融合する”OMO時代”のリアル店舗の運営に求められているとも言えるかもしれません。

記事執筆者

島袋 孝一 / 株式会社Preferred Networks マーケティング

2004年パルコ入社。店舗リーシング・宣伝・オムニチャネルを担当。2016年総合飲料メーカーキリン入社。グループ横断デジタルマーケティングを担当。2019年1月ヤプリ入社。未上場期〜コロナ禍のマーケティングを牽引。2022年1月より株式会社Preferred Networksに参画。

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