第三回Microsoft Retail Open Lab 『AI時代の流通業界のプラクティスと新たな展望』セミナー開催レポート【前編】

2024/08/07 09:00
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流通業における業務効率化・生産性向上、顧客体験向上を目指したDXが競争力向上のために不可欠になっています。そのDXを加速するために、生成AIの活用が広がりを見せています。日本マイクロソフトは、2023年に「Microsoft Retail Open Lab」を発足し流通業界のDXを支援しています。その一環として2023年6月には「生成AIの可能性とビジネスへの実装に向けて」をテーマに第一回セミナーを開催。2023年12月には「流通業における生成AI実装・半歩先の課題を解決する」をテーマに第二回セミナーを開催。生成AIの急速な発展と共に、流通業界における実装が進む現場の動向を紹介しています。2024年6月21日には、「AI時代の流通業界のプラクティスと新たな展望」をテーマに第三回セミナーを開催し、流通業における生成AI活用の先行事例や成功に導くための取り組みを紹介しました。セミナー開催レポートは前編と後編に分けて掲載いたします。

【挨拶】
日本マイクロソフト株式会社
執行役員 常務 エンタープライズサービス事業本部長
三上 智子 氏

三上 智子氏

 2023年6月に発足した「Microsoft Retail Open Lab」は、これまで2回セミナーを開催し、今回で3 回目となります。ChatGPT が登場して、ユーザー数が加速度的に増えて、テック業界だけでなく、ビジネスや個人においても注目されています。その中で多くの新しいアイデアが生まれ、さまざまな活用方法が見えてきました。日本マイクロソフトとして、流通業界全体で学べる仕組みの構築を考え「Microsoft Retail Open Lab」の取り組みをスタートしました。

 一回目は「知る」をキーワードに、「生成AIとは何か」というテーマで東京大学の松尾豊教授が講演。「生成AIによる流通業へのビジネスインパクト」についてビックカメラや資生堂が登壇し、パネルディスカッションが行われました。二回目は「行う」をキーワードに、メルカリや住友商事、日清食品など実際にビジネスの中でどう生成AIを活用しているのか、活用して感じたことを紹介してもらいました。三回目となる今回は、「伝える」をキーワードに、セブン &アイ・ホールディングス、イオンディライト、花王、ソフトバンク、アルフレッサに現場における生成AI の活用について講演いただき、最新の情報を皆様とともに学び、共有し未来に向けてのスタートにしていきたいと考えています。

【基調講演】
「生成AIと流通・小売業の未来」
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
グループDX本部デジタルイノベーション部シニアオフィサー
伏見 一茂 氏

日本マイクロソフト株式会社
執行役員 常務 エンタープライズサービス事業本部長
三上 智子 氏

伏見 一茂 氏

「生成AIファースト」を全社的に掲げてスタート

 基調講演ではセブン&アイ・ホールディングスの伏見氏による講演が行われました。
セブン&アイ・ホールディングスのDX戦略のテーマの一つとして「生成AIファーストを掲げています」とし、「既存の業務も新規の業務も、まず生成AIを使ったらどうなるか考えています」と話し、DXの課題も解決できる武器が生成AIだと強調していました。

 「まず生成AI」と考えるためには、社員に生成AIのスキル習得が不可欠です。人材育成とともに「知見の集積やコミュニティ化が、社内に生成AIを普及させるために重要になります」と伏見氏は話します。そのためにまず生成AIの概論研修を実施。それを理解したうえでプロンプト研修を行う仕組みを全社レベルで実施していると言います。「こうしたプロセスでもAIについて、日本マイクロソフト業務執行役員 エバンジェリストの西脇 資哲氏に熱く語ってもらっています」とし、日本マイクロソフトの支援で生成AIの社内での活用が着実に進んでいる様子について語りました。

 研修の実施により、最初の「AIは難しい」という多くの社員が持つ意識は薄れたと言います。「自分の業務にAIを活用したいか?という問いには100%が活用したいと言っています」というほど「生成AIファースト」は社内に浸透してきました。

 そして生成AIの活用事例やプロンプト集をTeams上などで公開することで、社内にノウハウを蓄積し、生成AI活用が促進されることに期待を寄せています。

セミナー中の様子

生成AI活用を社内に浸透させるためのポイント

 つづいて、セブン&アイ・ホールディングスの伏見氏と日本マイクロソフトの三上氏の対談が行われました。伏見氏は「DXを推進する中で、アンバサダー制度によって各部門で生成AIの活用人材の育成に取り組んできました。その結果、各部門のコアメンバーを中心に現場業務における生成AIの活用が広がり、業務効率化の効果も出始めています」と話しました。例えばマーケティング業務においては、会員向けの販促メールに生成AIを活用し、作成時間の短縮化を図るだけなく、人が考える文章と生成AIで作成する文章を組み合わせることで、より効果が高められる事例も生まれています。

 それに対して三上氏は「生成AIファーストのカルチャーが社内に浸透していることが理解できました」と話しました。マイクロソフトでは生成AIが全ての業務を担うのでなく、使いこなすのはあくまで人であり、業務負担を減らすことを目指し、Copilot(副操縦士)のサービスを流通業界に提案しています。
そして伏見氏は「生成AIの活用をより浸透させ、社員のモチベーションを高め、知識・ナレッジを蓄積していくために、コミュニティづくりを強化する方針」について話しました。

 今後、生成AI活用のプラットフォームのチャット機能やAIアシスタント機能をとおして、社員の生成AIのベストプラクティスを共有し、全社的に生成AIの活用を促進していく考えを示しました。

 三上氏は「流通業における生成AIの活用を成功に導くためには、プラットフォームづくりだけでなく、現場のどの業務で生成AIを活用できるかを検討する要件定義力と生成AIと対話を繰り返していくことが重要です」と話しました。

 伏見氏は「われわれの取り組みは始まったばかりです。流通業界の業務効率化や生成AIの活用事例の情報共有を図っていきたいと思っています」と今後の抱負について語り、対談を終えました。

【後編】第三回Microsoft Retail Open Lab 『AI時代の流通業界のプラクティスと新たな展望』セミナー開催レポート

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