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食品メーカーの商品開発が加速、ラインアップの多様化が進むプラントベースフード

プラントベースフードといえば「大豆ミート」、そう答える人は少なくない。しかし、今や、「動物由来の原材料を配合せず、植物由来の原材料を使用した、味の評価の高い食品」は大豆ミートだけではない。メーカー各社の開発力により、新しいジャンルの食品として広がりを見せている。

今や、「動物由来の原材料を配合せず、植物由来の原材料を使用した、味の評価の高い食品」は大豆ミートだけではない。メーカー各社の開発力により、新しいジャンルの食品として広がりを見せている。(i-stock/vaaseenaa)

コーナー化の動き広がるプラントベースフード

 消費者の健康志向、環境意識が高まりを見せるなか、サステナブルな食生活につながるプラントベースフードの開発が活発化している。プラントベースフードとは、「動物由来の原材料を配合せず、植物由来の原材料を使用した食品全般」のこと。そのなかでも大豆ミートは、日本におけるプラントベースフードの代名詞ともいえる存在だ。

2022年5月に日本で初めて「大豆ミート食品類JAS」の認証を取得した大塚食品の「ゼロミート デミグラスタイプハンバーグ」

 2022年2月、農林水産省は日本農林食品規格(JAS規格)を制定し、大豆由来の植物肉製品の定義を明確化、大豆たんぱく質やアミノ酸の含有率等により、「大豆ミート食品」と「調整大豆ミート食品」の2つに分類。食品スーパー(SM)の店頭には、大豆ミート食品類JASの認証を取得した製品もすでに並んでいる。

 今、大豆ミートや大豆ミートを使った加工品は、SMの売場に新たな彩りを加えている。食肉メーカー、食品メーカー、卸に小売、フードテックなどが商品開発に参入。精肉売場から加工肉コーナー、日配品、加工食品、乾物コーナーなどで、大豆ミート(およびその加工品)を見つけることができる。

 既存の棚割の中に収まっていることもあれば、コーナーエンドに堂々と「PLANT BASED」のボードが掲げられていたり、棚1本分の独立した売場を展開しているケースもある。

22年12月オープンのイオンフードスタイル豊中庄内店では、植物性チーズのコーナー展開を実施

大豆ミート以外の製品が続々登場、多様化が進む

 市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニングによれば、日本における植物由来の代替肉市場は、30年には20年の2.2倍、780億円規模になると見込まれている。

 その一方で、「植物由来の代替肉」とほぼ同義になるプラントベースフードに対する一般消費者の認知度は、実はまだあまり高くはない。メーカーの調査でも、民間のリサーチ会社による調査でも、プラントベースフードの認知度は2割~3割程度にとどまっている。大豆ミートは知っていても、プラントベースフードはよくわからないという人がまだまだ多いということだろう。

 そうした状況のなか、大豆ミートとは異なる材料を用いた、さまざまなプラントベースフード商品が市場をにぎわすようになってきている。

 21年秋から一般家庭向けに、動物性原材料は配合せず、植物素材を使った商品の販売をスタートしたカゴメでは、昨年秋に植物素材を使ったプラントベースのタイカレー「野菜と豆のマッサマンカレー」を発売。カシューナッツの風味をにんじんの甘味や独自のスパイス配合で引き立てることで、動物性原材料不使用でも満足できる濃厚なコクや甘味がある商品だ。

カシューナッツの風味をにんじんの甘味や独自のスパイス配合で引き立てた、カゴメの「野菜と豆のマッサマンカレー」

 神明では、お米由来のたんぱく質を使用した植物性のチーズ代替品「お米でとろ~りとろけるシュレッドタイプ」を発売。お米に6%程度しか含まれないライスプロテインを使用し、長年おもちスイーツを開発・販売してきた技術をもとに、チーズの旨味を再現した。

神明の「お米でとろ~りとろけるシュレッドタイプ」。お米由来のたんぱく質を使用した植物性のチーズ代替品だ

 マーガリン、チーズ、ホットケーキを主力とする食品メーカーのマリンフードでは、植物性原料を使用したチーズ代替品「スティリーノ」を配合した定番商品のベビーチーズタイプ5種を発売。これは100%プラントベースではなく、ナチュラルチーズに「スティリーノ」を混ぜ合わせたハイブリッドだ。

チーズ代替品「スティリーノ」を配合したマリンフードの「スティリーノシリーズ」

 日清シスコが“気軽に毎日続けられるプラントベース朝食”をコンセプトに開発したのが、「ごろグラ Plant Based 3種のナッツとオーツ麦」。パッケージには、環境にやさしい紙包材とバイオマスインキを使用しているほか、途上国の子供たちに学校給食を支援する国連WFPの「レッドカップキャンペーン」に参加するなど、地球環境や社会にも配慮している商品だ。

日清シスコの「ごろグラ Plant Based 3種のナッツとオーツ麦」。「ごろグラ」ブランド史上初のプラントベース商品となる

海外では植物性素材そのもののよさに注目が

 ネットリサーチの日本トレンドリサーチ(運営会社:NEXER)では、全国の男女計900名を対象に「プラントベースフードに関するアンケート」(調査期間2022年3月16日~3月24日)を実施している。そのなかで、プラントベースフードを知っていた人(207名)に対し「これまでに食べたことがある『プラントベースフード』」(複数回答)を聞いたところ、「大豆ミート」やオーツミルク、アーモンドミルク、豆乳などの「植物性ミルク」といったよく知られたもののほかに、「豆腐・おからを使ったウナギ」、「こんにゃくで作ったマグロ」、「米粉を使ったチーズ」、「豆乳ベースの卵」なども一定数の回答があったという。

 この結果は、プラントベースフードを知っていた人の中だけの回答であり、世間一般の認識とは乖離があるだろう。しかし、今後、より多くの人にプラントベースフードが認知されれば、市場としての可能性を感じられるようになるはずだ。

 一方で今、海外では、代替肉市場に大きな変化が現れ始めているという。

 食品業界に特化したトレンドリサーチの世界的リーディングカンパニーINNOVA MARKET INSIGHTS(オランダ)で日本カントリーマネージャーを務める田中良介氏は、プラントベースの先進国であるオーストラリアで、代替肉原料としてシイタケが使われているごく一般的なプラントベースフードを食べたところ、食感は肉に近いものの味は完全にシイタケだったという。

 その実体験からも「今や“がんばって肉を模した代替肉”だけがプラントベースフードとして求められているのではない。それよりもむしろ植物性素材そのものの魅力や味わいを生かした製品が求められるようになってきた」と語っている。

 いずれ日本でも、プラントベースフードは、代替品という何かの代わりを意味するものではなくなり、からだにも、地球にもやさしい、心地よい食べ物として広がりを見せていくにちがいない。