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イオンウエルシア九州のフード&ドラッグ新業態「ウエルシアプラス」1号店独占レポート!

ウエルシアホールディングス(東京都:以下、ウエルシア)とイオン九州(福岡県)が、フード&ドラッグ専業の合弁会社・イオンウエルシア九州(福岡県)を発足したのは昨年9月のこと。それからおよそ7カ月を経て、ついに新業態「ウエルシアプラス」の1号店がお目見えした。グループ内ジョイントベンチャーを立ち上げてまでフード&ドラッグ市場を深耕しようとする同社は、記念すべき1号店でどのような売場づくりを行っているのか。写真とともに速報でお届けする。

食品はすべてイオン九州の扱いに

4月6日にオープンした「ウエルシアプラス大野城若草店」

 4月6日、新業態「ウエルシアプラス」の1号店として福岡県大野城市にオープンしたのは、「ウエルシアプラス大野城若草店」(以下、大野城若草店)。福岡市南部に位置し、同市のベッドタウンともなっている大野城市内の住宅街に店を構える。

 今年1月に閉店したイオン九州の「マックスバリュエクスプレス若草店」への居抜き出店で、売場面積は約1000㎡。ウエルシアプラスのプロトタイプ的店舗である「ウエルシア熊本麻生田店」(詳しくは本記事を参照)に比べるとやや小ぶりなサイズだ。

 店内では大きく分けて、約4割のスペースで食品、約6割のスペースで非食品の売場を展開。熊本麻生田店では食品のうち加工食品と酒類はウエルシアからの供給・扱いだったが、大野城若草店ではそれらをイオン九州からの供給に変更。食品=イオン九州、非食品=ウエルシアと明確に区分し、それぞれが得意とするカテゴリーの深掘りを図っている。

売場最前部は総菜+チルド一体型のレイアウト

売場最前部は総菜とチルドの一体型レイアウトに

 フード&ドラッグを大きく標榜するだけに、やはり注目したいのは食品売場だ。

 売場導入部は主通路上の平台と冷ケースで総菜を展開、それに対向する壁面沿いの冷ケースではサンドイッチとカットフルーツから始まりデザート→チルド飲料→乳製品と続く。総菜とチルド系商品が一体化したようなレイアウトで、”コンビニ的”な利用ニーズに対応した商品を集積した。

 このうち総菜は、店内加工とイオン九州のサテライトキッチン「旬鮮工房」からの供給、外部メーカー製造品の3パターンを組み合わせて品揃えを追求。唐揚げなどのフライ類や中華総菜、弁当の一部は店内調理でカバーし出来立てを訴求する。

 加えて総菜で強化したのが和総菜のラインアップで、外部メーカーの協力も得ながら、ウエルシアプラスの開発に際して約20アイテムを用意。きんぴらごぼうや豆煮といった定番アイテムのほか、「肉団子の甘酢あんかけ」「ふろふき大根」「玉子とじ風とんかつ」など世代を問わず手に取りやすいメニューも揃えた。

和総菜の品揃えを強化

 また、九州エリアでは欠かせない「鶏のたたき」「鶏の炭火焼」については、熊本麻生田店では精肉売場に陳列していたが、大野城若草店では総菜売場で販売。イオンウエルシア九州の安倍俊也社長は「総菜売場全体の商品のボリューム感を出せることに加え、素材を買わず総菜だけで買物を完結するお客さまに対しても、肉総菜をおつまみやおかずの1品としてしっかり訴求できる」とねらいを明かす。

鶏のたたきなどの肉総菜は総菜売場に集約

生鮮は「鮮度」と「保存性」の高さの両軸にこだわる

 生鮮3品については、青果→鮮魚→精肉の順で展開する。

 青果はりんごやいちご、トマトや根菜・葉物類など売れ筋を中心に旬の野菜や果物を提供。鮮魚はチルドコーナーでは塩干と旬鮮工房供給の刺身パックを販売。切り身についてはロスの低減と保存性の高さに鑑み、すべてフローズンでの展開としている。

切り身はすべて冷凍での展開

 精肉はイオン九州の既存店でも導入実績のある、外部メーカーからの仕入れ品が中心。牛豚鶏いずれも九州をはじめ国産肉をメーンに扱っており、そのほかホルモンや味付け肉も販売する。冷凍のリーチインケースでは保存に便利な大容量のひき肉や切り身、スペアリブや牛タンの塊肉なども扱う。

精肉は外部メーカーからの供給。国産肉がメーンとなっている

日配・加工食品は「松竹梅」の品揃えを追求

 日配および加工食品については、限られた売場スペースの中で品揃えを追求する。安倍社長が「いずれのカテゴリーでも『松竹梅』の品揃えをキープするようにしている」と説明するとおり、地元メーカーのこだわり商品から価格競争力の強い「トップバリュ」までを揃え、商品選択肢は多様だ。「そもそもウエルシアは従来、価格一辺倒のMDは導入しておらず、フード&ドラッグを志向するわれわれとして、食品でも同じ考え方を取り入れている」(安倍社長)。この点はほかのフード&ドラッグ企業とは一線を画した戦略と言えるだろう。

日配・加工食品は「松竹梅」の品揃えを追求する

 それに関連して、健康志向に対応した売場づくりが随所に見られるのもウエルシアプラスの特徴だ。たとえば加工食品のゴンドラエンドでは「からだにやさしいおいしいおやつプロジェクト」と銘打って、「豆乳おからクッキー」や、体を温める効果のある「生姜飴」、九州産の素材を使ったヘルシーな「豆菓子」、グルテンフリーのスイーツなどを集積。酒類でもやはりゴンドラエンドで「ノンアルコール飲料」を大きくコーナー展開する。

ゴンドラエンドでは健康志向に対応した商品をコーナー展開

「ただのスーパーじゃん」というお客の一言に手応え

イオンウエルシア九州の安倍俊也社長

 大野城若草店では4月6日のオープン以降、売上は計画を上回って推移しているという。取材日は近隣に住むファミリー層やシニア層、また当日は近隣の学校で始業式があったことから、学生グループの来店も目立ち、幅広い客層で賑わっていた。

 安倍社長はオープン日、近くにいたお客から漏れ出た、「これ、ただのスーパーじゃん」という一言を聞いて手応えを感じたという。「食品については通常の食品スーパーと遜色ない品揃えをめざしているし、お客さまにもそう感じてほしいと思ってウエルシアプラスを開発した。それがオープン時点でお客さまに伝わったことがうれしい」(同)

 イオンウエルシア九州では今後、福岡県・熊本県内を中心にウエルシアプラスの出店を加速していきたい考え。イオン九州の柴田祐司社長は4月12日に開かれた同社の23年2月期決算説明会で、「大野城若草店のかたちがお客さまにどう受け入れられていくのかを見ながら改善を重ね、出店を続けていく」と言及。また、ウエルシアの松本忠久社長も決算説明会において「(ウエルシアプラスで得た)ノウハウをもとに、各エリアでイオンのグループ企業と(フード&ドラッグ業態を)やっていける」と、将来的な全国への波及も示唆した。

 イオンウエルシア九州発足時には「2030年度に最低でも200店舗」という壮大な目標も掲げれたが、まずは今年度中に6~8店舗、24年度中には約30店舗の出店をめざす考え(イオン九州柴田社長の決算説明会での発言より)だ。

 ウエルシアプラスは早期に高速出店のフェーズに入るのか、そうなったときにコスモス薬品(福岡県)、ドラッグストアモリ(同)など九州内で競合するドラッグストアがどう対抗してくるのか。九州の小売市場から目が離せない状況は続きそうだ。

<店舗概要>

所在地 福岡県大野城市牛頸4-12-22

営業時間 9:00~24:00(調剤薬局 10:00~14:00/15:00~19:00 土日祝日休み)

売場面積 約1000㎡

駐車台数 98台

アクセス JR鹿児島本線「春日」駅からバスで約20分

※ウエルシアプラス大野城若草店については、雑誌「ダイヤモンド・チェーンストア」5月1日号でもさらに詳しくレポートする予定です。ぜひご覧ください。