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カテゴリー全体を活性化する新商品の開発に期待、注目商品ピックアップ=2020年秋冬 注目マーケティングトレンド

2020年秋冬マーケットトレンド

トレンドの先取りやユーザーニーズに対応した新商品は、カテゴリーを活性化し、売場の鮮度アップを図る重要な役割といえる。2020年春は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で新商品が少なかったようだ。秋冬に向けては例年通り、新商品が投入されることが予想されるが、今回は春夏の注目の新商品・リニューアル商品と秋冬商品の一部を紹介する。

【新コンセプト】新しい食シーンの拡大や簡便性訴求でファンを取り込む

 機能や味わい、食感などこれまでにない新コンセプトの商品が次々に発売されている。ニッポンハムは、シャウエッセンのお肉でつくったソーセージスライスの「シャウBACORON(ベーコロン)」を発売。シャウエッセンならではの豚肉のあらびき感や旨みが楽しめる商品で、ベーコンのように野菜に巻くなど、さまざまな食べ方を提案している。2月の発売から想定通りベーコンのような食べ方が広がり、好調に推移。5月には朝食などで使いやすい少量サイズの「3連」を、7月には好みの形にカットできる「ブロックタイプ」をラインアップした。ソーセージスライスだがベーコンのような形状にすることで、食シーンを広げることに成功している。

 またニッポンハムでは、オムライスを電子レンジで簡単につくれる時短・簡便の「袋のままできるオムライス」を春に発売した。オムライスは子供に人気のメニューだが、「卵でご飯をうまく包めない」「卵がふわふわにならない」など不満や苦手意識を持っている人が多いことから同社では、溶き卵を袋に入れて電子レンジで加熱するだけで、簡単にオムライスをつくることができる商品を開発した。火を使わないので子供と一緒に料理ができると好評。また常温商品なので、家庭でのストックとしても最適だ。

 一方、飲むことで紫外線から肌を守る、という新コンセプトの商品が、明治の「明治スキンケアヨーグルト素肌のミカタ」(機能性表示食品)。同商品には、SC-2乳酸菌、コラーゲンペプチド、スフィンゴミエリンの3つの成分を配合。紫外線刺激から肌を保護するのを助ける機能と、肌の潤いを保ち肌の乾燥を緩和する機能の2つの機能が確認されている。紫外線対策に関心のある20 ~ 60代の女性を取り込む。ヨーグルトの新たな価値を提案することで、ヨーグルト市場のさらなる活性化を図っていく。

パリパリ新食感で若年層のユーザーを獲得

 不二家の「98gホームパイのみみ7パック」は、「ホームパイのはしっこが一番おいしい」というユーザーの声を受けて商品化されたものだ。もともと同社では、18年に発売50周年を迎えたロングセラーブランド「ホームパイ」の新規ユーザー獲得を目的に、同年11月に一部コンビニエンスストアで「40gホームパイのみみ」を先行発売。その大ヒットを受けて、19年3月に同商品を全国発売してきた。今回、巣ごもり需要が増加する中でさらなるファン拡大を図るべく、20年7月21日に「98gホームパイのみみ7パック」を発売する。こだわりのバターと自家製の発酵種を組み合わせた生地を薄くカットして焼き上げた後、仕上げに砂糖をふりかけたカリカリで甘いスナックのような食感が特徴だ。

 発売日に合わせて、みみのキャラクター「イパムーホ」のシュールキャラを活かした動画やWEB漫画を展開していく。8月1日の「パイの日」に合わせて、SNSを使ったコミュニケーションも行っていく予定だ。

 同社では若年層に対して「ホームパイのみみ」を「ホームパイ」ブランドの入口商品と位置づけ、ファンを増やしていく考えだ。

 同様に若年層を取り込むことを目的に、香りや食感にこだわった新商品が亀田製菓の「玄米ちっぷパリッカ ハーブソルト味」。独自製法で、パリッと軽くて香ばしい玄米ちっぷで、女性がつまんでひとくちで食べられるサイズに仕上げた。オレガノやタイム、セロリシードの3種のハーブをブレンドしたハーブソルト味で、袋を開けた瞬間からハーブの香りが広がる。1個包装あたり46Kcalとカロリー低めなので罪悪感なく食べられる。同社では将来の米菓ユーザーである30 ~ 40代女性の獲得をめざしている。

【健康訴求商品】栄養強化に加え糖質オフで需要を獲得

 健康志向を背景に健康訴求型の商品が伸長しており、新しい商品も毎年、発売されている。withコロナ時代において、セルフメディケーションはますます重要な課題で、食に対する関心はますます高まることが予想される。

 日本ケロッグは、大人の女性に人気の「グラノラ」シリーズから、1食40gに1日分のマルチビタミンが含まれている糖質オフのグラノラ「1日分のマルチビタミングラノラ 糖質オフ」を7月に期間限定で発売。朝食で、手軽にマルチビタミンが摂取できる商品で、しかも小麦ブランを練り込んだブランパフ、穀物の甘みとコクのあるオーツパフ、甘味を感じるコーンパフといった糖質量の低いパフを採用することで、糖質オフを実現した。1食の糖質量を19.8gと、適正糖質範囲に設定することで、糖質摂取が気になる女性にも訴求する。

 一方、アスリートだけではなく、ダイエット中の女性や成長期の子供、低栄養になりがちなシニア層まですべての人にとって必要な栄養素である、たんぱく質を多く含んだ商品の市場は右肩上がりで成長を続けている。そこで明治では、日本人の低栄養という課題解決をめざし、春に日常的に摂取できるもので質のいいたんぱく質が摂取できるブランドとして「明治TANPACT」を開発。全カテゴリー横断で取り組んでいる。6月には「明治TANPACTビスケット」と同「ミルクチョコレート」を追加している。また、森永乳業では「PROPプロテインヨーグルトプレーン味」を7月に発売した。牛乳由来のプロテイン10gをおいしく手軽に摂ることができる。ドリンクヨーグルトなので、食事中や仕事の合間、トレーニング前後など、さまざまなシーンで摂りやすい。幅広い年齢層をターゲットに訴求していく。

 健康素材として定着している食酢だが、18年はテレビ番組で紹介されたことで勢いがつき、なかでもトライアルしやすいストレートのドリンクタイプが好調だ。

 Mizkanでは、フルーティで飲みやすい、りんご酢ドリンク「フルーティス」ブランドを展開。りんご酢に果汁を合わせ、こだわりのレシピで酸味はやわらかに、甘さは控えめに仕上げた。薄めて飲む濃縮タイプとそのまま飲めるストレートタイプを展開。濃縮タイプは水や炭酸水、牛乳で割るなど好みの飲み方で楽しめる。濃縮タイプの「フルーティス シャルドネ」が好評なことから、秋冬に向けて、ストレートタイプを追加発売し、ラインアップ強化を図る。手に取りやすく飲みやすい商品を発売することで、食酢ドリンク市場のさらなる活性化を図る。

健康意識の高い女性に訴求

 健康意識の高いアメリカのセレブやモデルの間で注目されているハムス。栄養価の高いひよこ豆を茹でてペースト状にし、香辛料で味つけしたスーパーフードだ。高たんぱく、低カロリーのハムスは日本でも受け入れられることを見越して、くらこんでは「KURAKONHUMMUS(くらこん ハムス)」を発売。クミンやガーリック、レモン果汁などで味つけした「オリジナル」のほか、唐辛子でピリッと辛く仕上げた「マイルドスパイシー」、トマトの旨みや酸味にバジルの香りを効かせた「トマト&バジル」に加え、9月には4種類目のねりごまとゆず果汁などで味つけした「ユズ」を新発売。添加物不使用でフレッシュなおいしさにこだわったため、チルドで提案している。

 一方、腸内環境を整えることが健康や美容につながることから、乳酸菌を食生活に取り入れる人が増えている。なかでも時間や場所を選ばず食べられるチョコレートが好評だ。ロッテでは「乳酸菌ショコラ」ブランドを展開しており、この秋は価格・品質・デザイン・ラインアップを一新。従来の「乳酸菌T001」と食物繊維に加え、オリゴ糖を新たに配合し、1日の摂取目安も従来の7枚から4枚に減らし、手頃な価格に変更する。ラインアップは「ミルク」に加え、「ストロベリー」「カカオ70」「3種アソートパック」を品揃えした。

 パッケージでは、「デザート&サプリメント」と記載。健康イメージの強いサプリメントで、効果・信頼感を高めつつ、デザートとしてチョコレート本来のおいしさも訴求している。さらに裏面では、生きたまま腸に届ける製法「チョコブロック製法」の説明をしっかり行い、理解を深めている。

【リブランディング】時代のニーズに合わせて容器やデザインを変更

 ロイヤルユーザーに支えられ、定番商品として市場に定着しているメーカー各社の主力ブランド。時代のニーズに合わせてリニューアルすることで、長く愛されるブランドに成長している。

 1966年に発売され、絶えず商品に磨きをかけてきた明星食品の「明星チャルメラ 5食パック」は、8月31日にリニューアル。今回、従来の秘伝のスパイス(小袋)をそれぞれ強化。好みに合わせて自分流に調整できる味わいを訴求するため、パッケージ正面にアイコン、側面にはこだわりアレンジメニューを記載した。

 雪印メグミルクのたっぷりボトルで楽しめる本格ラテの「Bottlatte」シリーズの容器を持ち運びしやすいスリムな形状の容器(300ml)に変更し、「Bottlatte & Go」として3月にリニューアルした。簡単に開封できる内フタがないキャップに変更。中身もより本格的な味わいを追求した。もっと気軽にシーンを限定せず楽しんでもらうために、利便性や携帯性を向上させた。同社ではトライアル促進とロイヤルユーザー育成を目的にSNSでコミュニケーションを図っていく考えだ。

 一方、宝幸では「日本のさば」をリニューアル。国内産さばを使用していることをわかりやすく訴求した。パッケージでは青森県八戸にある自社工場で製造している点を訴求し、相性のよい野菜などを付け合わせた盛り付け写真を載せ、手に取りたくなるイメージにした。今、注目されている「DHA」「EPA」に加え、「カルシウム」の値を表記。加熱した調味液を充填することで、味噌煮は風味よく、とろみのあるみそだれに、味付は風味のよいしょうゆだれに改良した。

 冬の定番の洋酒チョコレートとして市場をリードしてきたロッテの「ラミー」と「バッカス」。熱烈なファンに支えられてきたブランドだが、間口拡大が課題となっていた。そこでこの秋にリニューアルを実施。「ラミー」は厚さを1㎜アップし、濃厚な生チョコとボリューム感を高めた。「バッカス」は、ブランデー中51%のコニャック量を60%までアップし、ブランデーのしっかりした風味に仕上げた。パッケージもスタイリッシュで高級感のあるデザインに刷新。また、「ラミー」は個包装化し、「バッカス」は前開きのリクローズカートンにして、利便性を高めた。

 さらに新規ユーザーを獲得するため、お酒が苦手な人でもトライアルしやすい低アルコールの新フレーバーを秋冬に向けて発売する予定だ。

【新フレーバー】期間限定フレーバーの投入でブランドの鮮度アップを図る

 ブランドの鮮度感アップと新規ユーザー獲得を図るのに役立つのが新フレーバー。期間限定の商品などは売場に季節感を演出することにも活用されている。

 やわらかな豆腐でつくる韓国家庭料理のスンドゥブの素カテゴリーをリードする丸大食品では、この秋に新シリーズを発売する。ベースの魚介の味をあさりから海老・牡蠣に変更。海老・牡蠣の旨みと自家製調味料(タデギ)の濃厚な旨辛スープの「海老スンドゥブ」と「牡蠣スンドゥブ」をラインアップ。海老や牡蠣は、鍋に入れる魚介類ランキングでは上位にランクインし、外食でも「海老スンドゥブ」「牡蠣スンドゥブ」は人気となっていることから、新フレーバーの売上拡大に期待が寄せられている。

 マンナンライフでは、こんにゃく(グルコマンナン)を果汁で味つけしたフルーツこんにゃくの「蒟蒻畑」シリーズのラインアップを拡充。コロンビア産のアラビカ種コーヒー豆を100%使用し、風味豊かで力強い味わいの「コーヒー味」を9月1日に新発売。さらに、こだわりの国産抹茶の風味が最大限に引き立つよう開発を重ね、香り高い風味と鮮やかな緑色を表現した「抹茶味」を数量限定で9月14日から発売する。

 から揚げ粉のトップメーカーである日清フーズでは、「日清 から揚げ粉」シリーズから、「同 逸品」を発売。同社独自の知見と配合設計の工夫により、サクッとした衣の仕上がりを実現した。から揚げの需要が高まる行楽シーズンに向けて、シリーズのさらなるファン獲得と市場の活性化を図る。

 食卓におかずをそのままプラスするフジッコの「おかず畑 おばんざい小鉢」シリーズには、2種類の豆乳と豆腐に、4種の具材を加えた「なめらか白和え」をラインアップ。同ブランドは、おいしさと長期保存の両立で、見映えよく、使い勝手もよいのが特徴。有職主婦の増加により、小容量総菜は伸長していることから、メニュー需要の高い「白和え」を発売することで、シリーズの強化を図っていく。

【酒類】新ジャンルはこの春にメーカー3社が新ブランドを投入

 19年10月の消費税増税などの影響もあり、ユーザーの節約志向がさらに進むなか、新ジャンル商品への期待が今まで以上に高まっている。そのためこの春は3社から新ジャンルの新ブランドが発売された。サッポロビールは、二大ブランドの「サッポロ生ビール黒ラベル」と「エビスビール」に採用している麦芽とホップを一部使用し、「力強く飲み飽きないうまさ」を実現した「サッポロ GOLD STAR(ゴールドスター)」を発売。販売好調を受け、年間販売計画を発売時より100万ケース増やし、460万ケースに上方修正した。

 アサヒビールは、“プレミアムビールのような上質さ、贅沢感”をめざして「アサヒ ザ・リッチ」を新発売。同社新ジャンル商品として最大級の原麦汁エキス濃度にすることで、コク深い味わいを実現した。テレビCMやWEB、SNSなどデジタルを活用した情報発信を行っている。

 サントリーでは、天然水100%仕込にこだわりながら、醸造香が特長のエール酵母と、爽快感のある香りが特長のカスケードホップを使用した「サントリーブルー」を新発売。スッキリとした飲みやすさの両立を実現した。川口春奈さんを起用したテレビCMで認知拡大を図っている。10月の酒税法改正により新ジャンルの値上げが予想され、今後さらに競争が激化しそうだ。

RTDはこの春にキリンビールがブランドを強化

 酒税法改正により節約志向が高まることで、リーズナブルでバラエティ感のあるRTDへの流入が加速しそうだ。

 キリンビールでは、この春に「キリン・ザ・ストロング」シリーズを中身・パッケージともにリニューアル。うまみを凝縮させた麒麟特製「うまみエキス」により、飲みごたえと飲みやすさを両立した調和のとれた味覚を実現した。リニューアルに合わせてテレビCMを中心とした大規模な広告投入により、話題化を図った。限定品の「豊潤レモンサワー」の発売の9月以降もレモンサワー中心に広告を継続する。

 さらにキリンビールでは、「キリン 氷結®」「キリン 氷結®ストロング」シリーズをリニューアル。「氷結®」の中心価値である「スッキリ爽やかなおいしさ」を進化させ、パッケージ・中身・コミュニケーションを刷新。主力の3フレーバーを中心に、もともと「氷結®」が持っているフレッシュな果汁感に加え、ドリンカビリティ(すっきりした飲みやすさ・飲み飽きしない味覚バランス)を向上させた。年間最大規模のテレビCMやWEBを展開する。

 ノンアルコールビールテイスト飲料では、サッポロビールが、尿酸値を下げる素材「アンセリン」を50㎎/本配合し、アルコール度数0.00%、プリン体0を実現した機能性表示食品「サッポロ うまみ搾り」を6月に発売した。大麦エキスを使用したリッチなおいしさと豊かな旨み、すっきりとした飲み口が特長のノンアルコールビールだ。

 キリンビールでは、ビールに近い味覚を実現するため、香料・人工甘味料を使わず、日本初の製法で麦やホップといった素材そのもののよさが引き立つ香味を実現した「キリン グリーンズフリー」を4月に発売した。自然派ビールテイスト炭酸飲料という新しいジャンルで提案する。新たな価値を訴求することで、新規ユーザーを取り込み、カテゴリー全体の活性化が期待できそうだ。

専門家の視点

AsanoGroceryAcademy代表 浅野 義昭 氏

AsanoGroceryAcademy代表 浅野 義昭 氏

withコロナ時代のマーチャンダイジング

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、緊急事態宣言が発出され、自宅で過ごす時間が長くなったことで、手づくり需要が増えています。お好み焼やホットケーキ、ホットプレートを使った焼肉などの需要が高まりました。緊急事態宣言が解除され、街の賑わいも徐々に戻ってきていますが、手づくり需要は引き続き、続くと考えられます。これまで時間がかかることから敬遠されてきた煮物なども見直されています。乾物は日持ちがするため、家庭内ストックとしても最適。店頭で「乾物で煮物をつくろう」という提案も効果的です。

 また、料理初心者をターゲットに比較的つくりやすい、から揚げやハンバーグ、カレー・シチューなどをエンドで提案してはいかがでしょうか。ハンバーグのソースやカレーの具などで変化をつけることもできます。コンビニエンスストア(CVS)との差別化を図るために「おにぎり提案」もおすすめです。お米と海苔だけでなく、人気具材の「ツナマヨ」や「炊き込みおにぎり」「いなりずし」など、親子で楽しくつくれるおにぎりを提案しましょう。こうしたことはCVSやドラッグストアにはできない提案といえます。

 またコロナ禍により、マネキンを使った試食販売ができなくなっています。そのためメーカーには、バイヤーだけでなく従業員向けの試食を提案したい。消費者に近い立場にあるパートさんにも食べてもらい、「店長おすすめ」という形で紹介することで、消費者も手に取りやすくなります。また、新商品は定番に置いておくだけでは消費者の目につかないため、コーナー化することが効果的。定番の棚1段でも新製品コーナーとして目立たせて、消費者にアピールする必要があるでしょう。

 新商品は短期間で売り切ってしまう商品と育成していく商品で売り方を変える必要があります。新商品が次々に発売される菓子などはオートマチックに入れ替えていき、数字が悪くてもじっくり育成していく商品は目標値を決めて長期的に訴求していく必要があります。

 これまで食品スーパーの競合は同業者だけでしたが、最近はCVSやドラッグストアも競合となっており、食品スーパーに足を運んでもらう工夫が今後ますます必要になってくるでしょう。