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イズミ、セブンプレミアムに賭ける!ヨーカ堂・ベニマルとの共同商品開発が始動

イズミ(広島県/山西泰明社長)の2020年2月期第2四半期決算は増収減益となった。10月の増税により下期はいっそうの消費低迷が想定されることから通期業績予想の下方修正も発表した。こうしたなかイズミは今後いかに成長を図るのか。8日に開催された決算説明会で語られた戦略をレポートする。

消費税増税の影響から通期業績予想を下方修正したイズミ。今後いかに成長を図るのか――

7月の不振で営業利益は
対前年同期比18.1%減

 イズミの20年2月期第2四半期業績(単体)は、営業収益が対前期比3.5%増の3476億円、営業利益が同18.1%減の112億円。5店舗の新規出店、1店舗の既存店改装による販売増により増収となったものの、新規出店・店舗改装のコストや人件費の増加が響き減益となった。「年間で大きな稼ぎ時である7月が天候不順となりその結果、商品のロス率が増えた。また前年同月は西日本を中心とした豪雨災害による復興需要がありその反動減も業績低迷の要因となっている」と財務・経理部長の川西正身氏は説明する。

通期の営業収益予想は
前回発表より63億円減

 企業規模の大きなイズミは当然、10月の消費税増税にともなう「キャッシュレス・ポイント還元事業」では対象外。加えて、14年の8%への増税時と比較して駆け込み需要が少なかったこと、また主力の総合スーパー事業は軽減税率の対象外である非食品の売上構成比が高いことから、増税による業績への悪影響は想定以上に大きくなると判断。20年2月期の通期業績予想を下方修正した。単体の営業収益は前回発表比63億円減の7116億円(前期実績比3.5%増)、営業利益は同31億円減の2790億円(同4.2%減)で着地すると見込む。

イズミ財務・経理部長の川西正身氏

 こうしたなかイズミも手を拱いているわけではない。下期は競合企業への対抗としてさまざまな施策を打つ。10月1日からは「くらし応援スペシャル企画」として、日常づかいの食品や日用雑貨の計350品目を最大3割値下げするほか、食品1300品目を対象に自社ポイントの5~30倍の還元、イズミで使用できる1000円分のプレミアムチケット付き商品券の販売などを実施することで集客につなげる。

10月1日からは競合店への対抗策として「くらし応援スペシャル企画」スタートさせた

「セブンプレミアム」で
店舗の価値を高める

 そして中長期的な成長を図る手段として、いっそう強めるのが18年4月から業務提携関係にあるセブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイHD)との連携だ。
 イズミは今年5月に、20年2月をもって共同仕入れ機構の日本流通産業(大阪府/夏原平和社長:以下、ニチリウ)から脱退することを発表。代わりに、詳細な販売開始時期は未確定だが、セブン&アイHDのプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」の取り扱いをスタートする。そのねらいについて川西氏は「高い品質で消費者から高い評価を得ている同PBを扱うことで店舗の価値を高めたい」と述べている。

イズミはニチリウグループから20年2月をもって脱退。代わりにセブン&アイHDのPB「セブンプレミアム」の扱いを開始し、店舗の価値向上を図る

3社で低価格帯の
商品を共同開発へ

 これと同時に進める施策として発表したのが、セブン&アイHD傘下のイトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)、ヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)との共同による新たな商品開発だ。
 「セブンプレミアム」はコンビニエンスストアでの取り扱いを主軸に開発される。そのため「食品スーパーや総合スーパーにとって価格帯が少し高く、かつ品揃えも十分とは言えない。その足りない部分を補う品目、価格帯の商品開発を進める」と川西氏は説明する。すでに前述の2社とは商品開発に向けた合同会議をスタートさせているという。

イトーヨーカ堂から承継し、今年2月に改装オープンした「ゆめタウン福山」。開業後の売上が好調で、これを成功事例に関西エリアの店舗も引き継いでいきたいねらいだ

IY「福山店」再生に成功
関西エリアの店舗獲得めざす

 さらにイズミはセブン&アイHDとの関係を店舗網の拡大にも生かしたい考えだ。中国エリアの不採算店舗の閉鎖により“陸の孤島”状態になっていたイトーヨーカ堂の「福山店」(広島県福山市)の運営を承継し、19年6月にイズミのショッピングセンター「ゆめタウン福山」として改装オープンしている。同施設は今上期の全体売上高をけん引するほど好調に推移しているという。
 また同施設ではイトーヨーカ堂の店舗当時からの従業員約180人中約140人を引き継いでいる。すでに販売スキルや地域の顧客との関係性を有する人材が獲得できることは、人材確保が難しい昨今において大きなメリットとなっている。「今回の福山店の転換を好事例に関西エリア西側の『イトーヨーカドー』店舗を引き継ぐこともセブン&アイHDさんに積極的に提案していきたい」(川西氏)。

ヨークベニマルの売場づくりや店舗オペレーションのノウハウを導入した実験店の運営もスタート。食品スーパー「ゆめマート」の競争力を向上させたい考えだ

ベニマル流による
食品スーパー改革も進行

 そのほか、食品スーパーの競争力アップを目的に、18年からヨークベニマルから売場づくりや、店舗オペレーションの生産性向上のノウハウを学ぶことも始めている。今年6月からイズミの食品スーパー「ゆめマート八幡」(広島県広島市)で“ヨークベニマル流”を実店舗に取り入れた実験を開始。19年度中には検証結果をまとめて、来年度から順次、既存店に水平展開していく計画だ。

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 10月の増税以降、「キャッシュレス・ポイント還元事業」の対象である競合の中小小売企業からの影響について川西氏は「かなりの影響が出ている。同事業は9カ月間の“救済措置”とされているが20年夏くらいまで消費者を引き付ける効果があるでは」と述べている。
 こうした厳しい消費環境を乗り越えイズミは中長期的な成長を実現できるのか。セブン&アイHDとの協業効果を発揮させることが大きなポイントの1つとなりそうだ。