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有名SMも続々導入へ! 総菜を自動で盛り付けるロボット 「Delibot」の革新性とは

経済産業省と一般社団法人日本機械工業連合会が主催する第10回ロボット大賞で「中小・ベンチャー企業賞」を受賞した、コネクテッドロボティクス(東京都/沢登哲也社長)の総菜を自動で盛り付ける「Delibot™(デリボット)」。従来は難しいとされていた総菜の盛り付けの機械化をロボットにより実現したDelibot は、2022年3月にマックスバリュ東海に導入され、その後も多数の引き合いがきているという。Delibotの特徴と今後の展開について、コネクテッドロボティクスCOOの佐藤泰樹氏に話を聞いた。

コネクテッドロボティクスCOOの佐藤泰樹氏。

「中小・ベンチャー企業賞」を受賞した総菜盛り付けを自動化するロボットを開発

総菜を盛り付ける自動ロボット「Delibot」

 2014年設立のコネクテッドロボティクスは、「食産業をロボティクスで革新する」をミッションに「つらい労働がなくなる」「人手不足を解消し高い生産性を実現」などを目的として、さまざまなロボットサービスを開発してきた。 たとえば、たこ焼きやソフトクリーム、そば、フライドポテトを調理する各種ロボットや検品ロボットなどを開発し、食品工場や飲食店などに導入してきた実績を持つ。

 数多くのロボットの中で、2022年10月に発表された第10回ロボット大賞で「中小・ベンチャー企業賞」を受賞したのが、2021年10月に開発に着手し、2022年3月に実用化に至った総菜を盛り付ける自動ロボット「Delibot」だ。

  開発のきっかけは、経済産業省が推進する「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択された日本惣菜協会から、「総菜工場での盛り付けの自動化に取り組まないか」と声をかけられたことだという。
 
 総菜の盛り付けの自動化という点でいえば、ポテトサラダを盛り付ける際などに使われる、チューブで総菜を押し出す「充填機」は以前から存在していた。しかし、いかにも機械で押し出したような形状になるため見栄えが悪く、チューブの中で総菜が詰まることも多いうえ、別の総菜の盛り付けに切り替える際の清掃に時間がかかるという問題を抱えていた。

 「日本の総菜工場の自動化はまだまだ進んでおらず、私たちの持つ技術で、現場で使いやすい、実用的なロボットシステムの開発をしようと考えた」(佐藤氏)。

人間の手のように、自在に総菜を盛り付ける

 そこで、まずDelibotの開発においては、人間の手のような動きをするロボットを設計した。総菜を盛り付ける際にハンド部分を小刻みに振るわせることで、まるで人の手が総菜を「ふり落とす」ようなモーションで、総菜を盛り付ける。そうすることによって、人の手で盛りつけたかのような見栄えのよさが実現したという。

 佐藤氏は「とくにハンドが総菜を落とすときのモーションは細かく設計している。たとえば、人間が総菜を盛りつけるときでもゴロゴロと具材が入った筑前煮と、やわらかい卯の花とでは、総菜を手から離すときの動きはもちろん違う。それと同じように総菜ごとに適切なハンドの動きを試行錯誤し、それぞれの特性に合わせたモーションができるようにシステム設計した。そうすることで総菜をふわっと盛り付けることができるため、見栄えもよく、総菜の食感が損なわれない」と説明する。

総菜の種類切り替えも簡単な操作で

 次に工夫したのは、総菜の種類の切り替えが簡単な操作でできるという点だ。「総菜工場では一つの製造ラインで複数の総菜をつくることもままある。そこで、ハンド部分の付け替えや清掃を簡単にし、誰でも総菜の切り替えに対応できるようにしたいと考えた」と佐藤氏は話す。

 そこでDelibotでは、アーム部分とハンド部分の接続箇所をマグネット式にしている。これにより、ワンアクションで取り外しができ、ハンドを丸洗いするだけで、清掃が完了する。さらに、総菜ごとのモーションの切り替えはアプリ上で簡単にできるようにした。

 計量の仕方も画期的だ。さまざまな具材が入るポテトサラダのような総菜は、体積が一定でないため計量しづらく、盛り付けの機械化は難しいとされてきた。しかし、Delibotはハンド部分に重量センサーを取り付けているため、にぎった分の総菜から重量を計測し、定量をつかむためにどうロボットを動かせばいいか推測ができるのだ。

有名SMの総菜工場で続々実装

 佐藤氏は「すでにマックスバリュ東海さんが現在4台を工場に実装していただいている。一人分程度のスペースがあれば設置でき、4台で1時間1000食の盛り付けができることから、従来7人で行っていた盛り付け工程を3人で行えるようになった。加えて、盛り付け可能な総菜は数十種類を超えており、今後さらに多くの品目に対応できる目処が立っている」と説明する。

 Delibotは今後も食品工場などへの実装が決まっているほか、小型化も進めている。大手スーパーのベルク(埼玉県)と連携して開発を進め、2023年3月には自社工場の「ベルクホームデリカ」で小型タイプのDelibotが稼働開始予定だ。

 佐藤氏は「日本国内の中食・総菜市場は10兆円を超え、今後も市場は拡大していくと予測されている。現場の声を聞きながら試行錯誤し、将来的にDelibotはどんな総菜工場でも使いやすいかたちにしていきたいと考えている。さらに、量産化につなげることができれば、予算の限られる中小工場にも導入できる程度の値段にできるはずだ。多くの食品工場で活用されることで、単調な仕事はロボットにまかせ、より付加価値の高い仕事は人が行うというかたちにシフトしていければ」と今後の展望を語った。