メニュー

売場面積約5000㎡!世界最大級の無印、直江津店が提示する新しい店舗の形

良品計画(東京都/松﨑曉社長)は720日、新潟県上越市の「直江津ショッピングセンター エルマール」(以下、エルマール)2階に「無印良品 直江津」(以下、直江津店)をオープンした。20183月に増床リニューアルした「無印良品 イオンモール堺北花田」(大阪府堺市)、1911月に開業した「無印良品 京都山科」(京都府京都市:以下、京都山科店)に続き、地域との協業に注力した店舗としては3店舗目となる。「スターバックス」「カルディコーヒーファーム」など食のテナントを初導入したほか、地元のバス会社と協業して無印初の移動販売を行うなど、新たな試みがたくさん詰まった店舗だ。

無印良品 直江津

上越市、地元のバス会社と包括連携協定を締結

 今回直江津店が出店したショッピングセンター(SC)のエルマールは、33年前に核テナントの「イトーヨーカドー直江津店」をはじめ、65店舗のテナントとともに開業した。同SCは、上越市に本社を置き、主に路線バスや高速バスの運行を展開している頚城(くびき)自動車(新潟県/山田知治社長)が子会社を通じて運営している。

直江津ショッピングセンター エルマール

 直江津店出店の契機となったのは、核店舗「イトーヨーカドー直江津店」の撤退だ。195月の退店後、頚城自動車にとっては地域活性化に向けた新たなテナントの誘致が喫緊の課題だった。そこで、近年店舗を通じて地域活性化に取り組んでいる良品計画と頚城自動車の理念が合致し、出店が決定した格好だ。

 オープンに先立ち、201月には上越市・良品計画・頸城自動車の三者による「地域活性化に向けた包括連携に関する協定」が締結された。この協定をもとに、三者はエルマールを地域の中心に据えたエリアリノベーションを実施していく考えだ。

「スターバックス」とコラボしたブックカフェを導入

 直江津店の売場面積は4934.65㎡で、無印良品の店舗としては世界的に見てもトップクラスの広さを誇る。同店のコンセプトは「くらしの真ん中」。上越市内の魅力ある商品やその楽しみ方を紹介するだけでなく、暮らしに役立つ新たなコンテンツやサービスを盛り込んだ店舗だ。

 直江津店では、初の試みとして、カフェチェーンの「スターバックス」、輸入食品を取り扱う「カルディコーヒーファーム」、品質の高いこだわりの日本食材を取り揃えた「久世福商店」といった食のテナントを導入した。このうち「スターバックス」は、無印良品の書籍コーナー「MUJI BOOKS」とともに「BOOKS CAFÉ」を構成しており、無印良品としては最大規模の約35000冊を展開する。また、スターバックスの壁面には、地元の有名児童文学作家である小川未明の代表作「赤い蝋燭と人魚」をモチーフとした人魚が描かれている。

無印良品 直江津では、「スターバックス」と「MUJI BOOKS」で構成される「BOOKS & CAFÉ」を展開(写真はMUJI BOOKS部分)

 これら食のテナントを誘致した理由の1つとして、直江津店コミュニティマネージャーの古谷信人氏は来店頻度の向上を挙げる。「無印良品は、大ファンの方でも来店するのは2週間に1回程度。食の専門店を導入することで来店頻度を高めたい」(古谷氏)。

 

フードコートでは地元の食材を使ったメニューを提供

 直江津店では、160席を備えるフードコート「なおえつ良品食堂」を展開。カレー、ラーメン、丼物、定食、ジェラートなど、世代を問わず楽しめるラインアップを導入した。

 京都山科店ではカレー店以外は地域の専門店がテナントとして入っていたが、直江津店ではすべて直営で運営している。しかし、一部メニュー開発では地元の専門店のアドバイスを受けたほか、頚城牛など地元ブランドの素材を使用した料理も提供しており、地域のおいしいものを伝えるというコンセプトは変わっていない。また、継続して地元の人に通ってもらえるようにリーズナブルな価格に設定。大半が500800円程度で、1000円を超えるメニューはない。

なおえつ良品食堂

 そのほか、食の取り組みとしてはフードコートの隣に「なおえつ良品市場」を展開。上越の旬の野菜や伝承野菜のほか、不揃いや規格外の「わけあって安い」青果も販売する。加えて、上越産の米や発酵食品、乾物、加工食品、地酒など合計約100品目を展開。野菜に関しては、「JAえちご上越」が運営する農産物直売所「旬菜交流館 あるるん畑」と協業し、商品を仕入れる。

なおえつ良品市場では、上越産の野菜を中心に約100品目を展開する

無印初の移動販売も実施

 直江津店では、地域住民のための開放スペースとして「Open MUJI」を備えている。ふだんは休憩スペースや自習スペースとして利用できるほか、料理教室などのイベントも開催する予定だ。また、208月からは「MUJI TO GO」と称した移動販売を実施する計画で、頚城自動車の未稼働のマイクロバスを活用し、中山間地域を中心に周回する。ルートや取り扱い商品などは未定だが、主に日用品やレトルト食品などの生活必需品を取り扱う考えだ。そのほか、毎月3と8のつく日に市内で実施されている「三八朝市」にも直江津店オープン前の5月から出店を開始している。

頚城自動車の未稼働車を活用した移動販売バス

 これまで見てきたように、直江津店は単にモノを買うための場所だけでなく、地域活性化の拠点としての役割を果たすための店舗づくりを行っている。Open MUJI、なおえつ良品食堂、BOOKS CAFÉなど、地域住民が集まりやすい環境づくりに注力し、チェーン展開する小売店としてはかなり深く地域に入り込んでいる印象だ。

 頚城自動車の山田社長は、イトーヨーカドー撤退による地域の衰退を不安視していた。無印良品の出店は地域活性化の起爆剤となるか。小売業が取り組む地域との協業の先進事例として、今後の動向が注視される。