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首都圏随一の集客力  「スーパー三和ラゾーナ川崎店」のいまを徹底分析!

「オーバーストア」が囁かれて久しい食品スーパー業界だが、各社の出店意欲は依然として旺盛で、最先端の商品政策を導入した注目店舗が続々と登場している。また他方では、オープンから一定の年月が経過し、地域にがっちりと根付いた既存店舗も存在する。顧客の心を掴んで離さない繁盛店では、どのような店づくり、売場づくりが行われているのか――。本連載では、売場分析のエキスパートである矢野清嗣が注目店舗の売場を徹底解説していく。
※本文中の価格はすべて本体価格

三和の“1番店”との呼び声高い、「スーパー三和ラゾーナ川崎店」

 連載第1回目となる今回は、神奈川県地盤の食品スーパー企業、三和が運営する「スーパー三和ラゾーナ川崎店」を前後編に分けて取り上げたい。
 三和は町田市を拠点に、神奈川県全域で73店舗を展開する食品スーパー企業。そんな同社の“1番店”と目されるのが、「スーパー三和ラゾーナ川崎店」(神奈川県川崎市:以下、ラゾーナ川崎店)だ。
 三井不動産グループが運営するショッピングセンター「ラゾーナ川崎」内1階に立地する同店。ラゾーナ川崎は1日約21万人(降車客含まず)の乗客数を誇る、首都圏屈指のターミナル駅であるJR「川崎」駅に直結しており、立地は申し分ない。
 ラゾーナ川崎店の開業は2006年で、オープンから13年が経過している。年商はおそらく首都圏の食品スーパーではトップクラス(推定年商40~50億円)と思われる。その集客力は凄まじく、30台のセルフ精算機を導入することで混雑を緩和させているものの、店内は常時混み合っている。

ラゾーナ川崎店の特徴は大きく3つ!
① 好条件の立地による、幅広い客層
② オーソドックスな売場配置とバランスの取れた商品構成
③ 独自の店内販促

 駅直結の利便性に加え、「ビッグカメラ」「ユニクロ」「無印良品」などショッピングセンターに入る約310店のテナントが商圏を拡大していることもあり、客層は幅広い。買物客の服装を見ると、普段着はもちろん外出着のお客も多く、昼どきはランチを求めるビジネスマン、夕方は勤め帰りと思われる女性、さらに週末は家族連れといった具合にさまざまな年齢、ライフステージのお客が来店していることがわかる。

「スーパー三和ラゾーナ川崎店」のレイアウト図(筆者作成)

 売場は壁面に青果、精肉、鮮魚、総菜、インストアベーカリーを配したオーソドックスなレイアウトとなっている。平場には加工食品、菓子、酒、日配を配置。機能的で買いやすい売場だ。商品構成は量感と質感を持たせたうえで価格訴求を絡ませた、まさに“王道”とも言える標準的な食品スーパーである。

次のページは
生鮮と総菜の売場づくりを解説

売場特徴①生鮮部門
「旬」重視のオーソドックスな売場

 ここからは部門ごとに売場の特徴を見ていこう。
 青果は「旬」重視で、店頭には福岡県産「甘王」や茨城県産「とちおとめ」などイチゴを配置、贈答用果実も充実させている。
 果物と同じく野菜も旬重視ではあるが、「キャベツ」「レタス」「ほうれん草」といった売れ筋商品は量感をもたせた陳列で価格訴求する。トマトはこだわり商品の位置付けで、三和オリジナル商品をメーンに約20SKUを揃える。週末は売場を変えながら常に補充を行っている様子だった。
 精肉では、5等級の「松阪牛」のほか、佐賀県産「伊万里牛」など店内加工の国産黒毛和牛をメーンに打ち出している。価格訴求商品は米国産、豪州産の大型パックなど幅広い品揃えで対応する。豚肉と鶏肉も国産・輸入をバランスよく交えた構成で、豪州産ラム肉の扱いもある。加工肉は「鎌倉ハム」、信州ハム「軽井沢」のコーナーを導入。プライベートブランド商品がないので、メーカー商品中心の品揃えとなっている。
 鮮魚も、「丸物」「刺身」「切身」「貝」「塩干」「冷凍魚」などを揃えるオーソドックスな商品構成で、無難にこなしている印象だ。刺身はとくに週末をめがけ、チラシ商品を軸充実させており、調査日は「4点盛」(780円)、「本まぐろ入り5点盛」(880円)などを売り込んでいた。丸物は「秋刀魚」「真あじ」などをパック販売で提供する。。
 とくに力を入れているのが切身。鮭は「天然紅鮭」「甘口紅鮭」「辛口紅鮭」「ふり塩銀鮭」「生アトランティクサーモン」などを1切、2切、4切れといった具合にさまざまな量目を展開、約20SKUを品揃えしていた。

売場特徴②総菜
アウトパック織り交ぜながら、量感のある売場を実現

 総菜は三和が力を入れている部門であると思われる。センター商品と店内加工品をバランスよく配置した構成で、弁当はセンター商品をメーンに「白身フライのり弁当」「帯広名物豚丼」(298円)や「チキンカツカレー」「ご飯大盛鉄板焼ハンバーグ弁当」(各398円)など約20種類を揃える。「自家製ヒレカツ丼」「広島風お好み焼」(各398円)などフライ系、丼物などを店内製造で提供しているようだ。
 寿司は日替わりの品揃えで、週末はチラシ商品を投入する。調査日は「花見」をテーマに、「12貫」(698円)、「30貫」(1980円)、「ちらし寿司と食べる行楽弁当」(550円)などを販売していた。
 おにぎりは弁当同様、店内加工とセンター商品を混ぜた構成で、フライは「棒ヒレカツ」(478円)、「ロースとんかつ」(298円)、「野菜コロッケ」「白身魚フライ」(各100円)などを揃える。そのほか、「自家製ピザ」「自家製サンドイッチ」「自家製ポテトサラダ」なども揃えており、全体的に量感が際立つ売場となっている。

 後編では、インストアベーカリーと日配、グロサリーの売場を突っ込んで解説していく。


【企業概要】
本社所在地 東京都町田市金森4-1-2
設立     1964年9月
代表者   小山克己
店舗    三和57店舗、フード16店舗
営業収益   1610億円(2018年3月実績)

【店舗概要】
所在地   神奈川県川崎市幸区堀川町72-1
売場面積  約700坪(歩測)
開店日   2006年9月28日
駐車台数  約2000台
営業時間   10:00~23:00