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「ロピア ららぽーと堺店」が開業! “ららぽーと”との蜜月はより強固に、そして海も越える?

三井不動産(東京都)は11月8日、大阪府堺市に関西エリアでは4カ所目となる「ららぽーと堺」を開業した。同施設の食品ゾーンの核テナントの1つとして出店したのはロピア(神奈川県)。関西では13店舗目、堺市内では初めてとなる「ロピア ららぽーと堺店」(以下、ららぽーと堺店)を同日オープンしている。ららぽーととロピアの”最強タッグ”は関東ではほぼ証明されているが、関西では初めての事例。そしてこの店は、2社の今後の関係性を”深読み”したくなる要素にあふれている。

「リアル回帰」を見据えた施設づくり

1階フロア中央部に設置された約2500㎡の屋内型スタジアムコート「Fansta XROSS STADIUM」」

 「ららぽーと堺」は堺市中心部から東へ約9㎞、府内を南北に貫く国道309号線沿いに開業した。高速道路のインターチェンジも至近にあるほか、大阪メトロ御堂筋線「新金岡」駅や近鉄南大阪線「河内松原」駅などからバスでのアクセスも可能な立地だ。関西エリアの「ららぽーと」としては「ららぽーと甲子園」(兵庫県西宮市)、「ららぽーと和泉」(大阪府和泉市)、「ららぽーとEXPOCITY」(大阪府吹田市)に続く4カ所目、国内全体では18カ所目のオープンとなる。

 建物構造は地上3階建てで、敷地面積は約7万4300㎡、延床面積は約14万3600㎡。「ららぽーと」ならではのこの広大な規模の中に、関西初進出・堺市初出店を含む212のテナントが店を構えている。

 施設コンセプトは「Our Next Channel」。コロナ禍を経て時代や社会が目まぐるしく変化する中で、あらゆる生活シーンや多様な嗜好に合わせた買物チャネルを提供するというのが、ららぽーと堺がめざす姿だ。実際に施設内を見てみると、「リアルな体験」を楽しめる要素が随所に埋め込まれている。

 最も象徴的なのは、1階フロアの中央部分に設置された「Fansta XROSS STADIUM(ファンスタクロススタジアム)」。約2500㎡の広さを誇る屋内型スタジアムコートで、スポーツイベントや音楽ライブなどが開催される。542インチの大型ビジョンや、スタジアムコートを取り囲むように張り巡らされたサイネージによって臨場感を演出。ライブビューイングなどにも対応する。また、飲食テナントが集積した「Sakai Food Stadium」も併設されており、イベントを観覧しながら飲食を楽しめるようになっている。

 このほか、屋外スペースにもライブ用のステージや、スケートボードやBMXが楽しめる「アーバンスポーツゾーン」、子供が安心して遊べる「プレイゾーン」などを設置。多くの人が集まる業態だけに、コロナ禍では休業や時短営業などを迫られ苦境に立たされたショッピングセンターだが、ららぽーと堺ではアフターコロナを見据えた「リアル体験重視型」の施設づくりが行われている。

関西でも「ららぽーと+ロピア」のタッグに自信?

関西のららぽーとでは初めての出店となったロピアららぽーと堺店

 さて、このららぽーと堺の食品ゾーンの核店舗の1つとして出店したのが、ロピアのららぽーと堺店だ。20年9月の関西進出以降、大阪、兵庫、京都、奈良で瞬く間に10店舗超の店舗網を構築し、関西の消費者からも大きな支持を集めているロピアだが、堺市内では初出店。また、「ららぽーと」へのテナント出店としては「ららぽーとTOKYO-BAY」(千葉県船橋市)、「ららぽーと海老名」(神奈川県海老名市)に続く3例目。関西のららぽーとでは初めての出店事例となる。

 三井不動産専務執行役員商業施設本部長の広川義浩氏は、「関西での出店を進めているロピアさんのエリア戦略と(自社の出店戦略が)合致したところもあるし、よい商品を良心的な値段で提供するロピアさんは堺でも受け入れてもらえるのではないかということで出店をお願いした」と経緯を説明。関東圏のららぽーとに出店している前述の2店舗は繁盛店に成長しており、三井不動産とロピアともども、関西圏でも同じタッグが通用するとの自信があったのだろう。

プレオープン時の売場の様子は……

 実際にプレオープン時の売場の様子を見てみると、招待された地元住民で大盛況だった。一方でメディア取材はファサードの撮影含め完全NG。店頭には複数の社員が並び、お客の誘導を行いつつメディア関係者の動きに目を光らせる厳戒態勢が敷かれていた。

 売場レイアウトは、ロピアでおなじみの主通路がジグザグに伸びるワンウェイ方式の青果から始まり、鮮魚、総菜・ベーカリー・スイーツ、精肉と続く構成。導入部の青果では平台に売れ筋や旬の野菜が量感たっぷりに陳列されていたほか、冷蔵平台ケースでは京野菜を含む葉物が展開され、各所で多くのお客が滞留し品定めしていた。

 続く鮮魚では寿司を目玉にしている印象で、ファミリー向けの大容量パックや、お客が好みのネタを注文できる対面販売コーナーも設置。刺身はパックのほか、数種の刺身と酢飯、味噌汁の素がセットになった「お刺身定食(2人前)」(1690円)を販売。POPでは「今日はこれで楽してください!」と、ららぽーとでの買物で疲れ切った当日夜の食シーンに訴求していた。魚総菜では小容量サイズの丼(250円)を「しらすごはん(明太子入)」など数種類展開。量目は他店よりも柔軟に対応しているようだった。

丼物は個食サイズも展開

 総菜も、サラダや揚げ物などロピアらしいボリューミーなメニューが中心。ピザは店内で焼き上げたピザのほか、冷蔵のチルドピザも展開していた。

チルドピザも販売。実食した記者によると「チーズの存在感がすごい」とのこと

 そのほか目に入ったのは「甘い玉子焼き」(350円)。関西圏では比較的苦手とする人が多い味付けで、ややチャレンジングな商品と言える。実際に関西出身・在住の本誌記者が食べたところ、「本みりんを使用しているところにこだわりを感じた。ただ、フレンチトーストを想起するくらい甘みがかなり強い。関西人には受けづらいかも……」との感想だった。

「甘い玉子焼き」は関西圏ではややチャレンジングか

 ロピアの主力部門でもある精肉は、やはりファミリー向けの焼肉パックやステーキ肉などを目玉商品として訴求。買物客からは「この品質(A4等級)でこの値段は安い!」との声が聞かれ、次々とカゴに入れていた。また、加工肉コーナーではロピアオリジナル商品の試食も行っていた。

「ららぽーと」と「ロピア」の蜜月関係の今後は…

 限られた人数が対象の平日のプレオープン期間ではあったが、盛況ぶりを見るに、ららぽーととロピアのタッグの強さは不変といったところだろう。

 ただ、運営元の三井不動産は23年4月に大阪府門真市に、「ららぽーと門真」と「三井アウトレットパーク大阪門真」からなる初めての2業態複合型商業施設を開設するが、ららぽーと門真にはライフコーポレーション(大阪府)が「セントラルスクエア」のブランドで出店予定。商圏特性や施設コンセプトに合わせて、食品スーパーのテナントは柔軟に使い分けるようである。

 他方、ららぽーととロピアを並べたときに図らずも想起されるのが、「台湾」という地である。三井不動産は21年に海外初のららぽーとを上海に開業、今年1月にはマレーシアのクアラルンプールにも進出するなど海外戦略を強く推進している。そして23年以降は台湾で連続開業する予定で、台中(23年)、台北(同)、高雄(26年)と、台湾の主要都市を着実に押さえていくかのような動きを見せる。

 一方のロピアも、台湾に現地事務所を開設しており、進出に向けて準備を進めているとみられる。ロピアにとっては初めての海外進出であるだけに、コネクションやノウハウがないなかで試行錯誤している部分もあるはず。となれば、同じく台湾市場の開拓を推し進めているららぽーとと”合流”することに違和感はない。今のところロピアの台湾での出店について詳細は明らかになっていないが、前出の広川氏の発言のように、少なくとも「2社のエリア戦略が合致」していることは確かだ。

 今後ららぽーととロピアの”蜜月関係”がどのように進展するのか、海をも越えることになるのか――。大阪・堺での出店は意外にも、近い将来起こり得る何らかの事象を暗示する出来事なのかもしれない。