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社員が畑仕事を手伝い、関係性を構築!無印良品が掲げる地域への“土着化”とは

「衣・食・住」をテーマとして掲げる良品計画(東京/堂前宣夫社長)は、2022年11月9日、さらに「食」の分野を強化したいと、新たな地区限定商品の発表を「無印良品 イオンモール堺北花田」(大阪府堺市)で行った。さらに地域へのドミナント戦略を進めることも発表。良品計画近畿事業部が語る“土着化”とは——。※文中の商品価格はすべて税込。

地区限定商品の開発

 「無印良品」を展開する良品計画(東京都/堂前宣夫社長)は、地域住民や自治体と連携し、地産地消の推進や雇用創出、街づくりなど地域活性化に寄与することをめざした活動を推進する「地域事業部」を設置している。

 その活動の一環として行っているのが、地域の生産者や加工会社と協力した独自の地域限定商品の開発だ。近畿事業部でも、これまで10の地域事業部の中で最多の35アイテムを販売してきており、11月9日にも、新たな商品を発表した。和歌山県紀の川市の名産「あら川の桃」を加工する過程で出る皮や種などの残渣を活用したシロップ(750円)や、大阪の福祉農園で栽培されたキノコを利用したアヒージョ(590円)やスープ(250円)を含む6商品だ。近畿事業部では、地区限定商品を2024年までには100アイテムにまで増やす計画だという。

地域限定商品は生産者のストーリーとともに商品を訴求している。

開発のきっかけはコロナ禍

 「これらの商品を開発することになったきっかけの一つとして、新型コロナの流行によって『つながる市』の開催が難しくなったことが挙げられる」と松枝展弘近畿事業部長は語る。

近畿事業部長の松枝展弘氏。

  「つながる市」とは、「ヒトとつながる、マチをつなげる」をコンセプトに、無印のイベントスペースや店舗周辺スペースで、地域の農家や事業者が特産品などを販売するイベントだ。地域の生産者や加工会社と地域住民をつなぐ場として発足したが、コロナ禍により開催が難しくなった。また、生産者が食材を廃棄せざるを得ない状況になったことも手伝い、地区限定商品の開発に踏み切った。

  「つながる市」開催時から、開発部の社員や現場社員が農家に直接訪れ、畑仕事を手伝ったり、時には食卓を共に囲むことによって、生産者の声をひろい、関係を深めてきた。そのため、開発にあたってはどの農家も協力的で、現場社員が農家と密に関わることにより、商品を“自分ごと”として売るという思わぬ利点もあったという。

 松枝展弘近畿事業部長は、「衣食住を無印良品のテーマとして掲げている、特に食を強化していこうと考えている。今後は地域の生産者や事業者と協業するように店舗づくりをしていきたい。また、新型コロナの流行で中止していたつながる市も再開し、地域限定商品との“かけ算”でさらに深い展開をしていけるのではないか」と期待を込める。

 さらに、近畿事業部の取り組みとして、近畿の32店舗(11月末時点)を、2024年までに、50店舗まで増やすドミナント戦略を発表。スーパーマーケットや商店街の近くに出店し、地域に溶け込んでいきたいとした。

スーパーマーケット横や商店街への出店の際は、「無印良品 イオンモール堺北花田店」で行っているような生鮮商品の販売は行わないとした。

 一方で「たとえば、スーパーマーケットの横に出店するときは生鮮品の取り扱いはしない。競合ではなく協業と捉え、出店を進めていきたい」(松枝氏)とも語る。ステークホルダー全体の利益を考え、出店を進める良品計画の戦略、および地域への“土着化”は成功なるか。