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「ステイホーム」が追い風に伸長するエスニック料理市場のキーは「家でできる気分転換」

レシピ数337万品、月間利用者数7400万人が利用する料理レシピ投稿・検索サービス「今いちばん注目される台湾料理クックパッド」には、日々たくさんの検索・アクセスログデータが蓄積されている。クックパッドの検索窓には、食材やメニュー名に限らず興味のある「コト」の検索も多く、年間約12万語以上のキーワードが検索されている。

文=宮澤かずみ(クックパッド データマーケティング部)

新しいブームの発信地・アジア圏

 ハワイやアメリカの西海岸を発信源とした「パンケーキ、アサイーボウル、ロコモコ」などの料理から、近年では「タピオカ、チーズドッグ、ダルゴナコーヒー」など韓国のインスタグラマーやアジア圏がブームの発信源となった料理が流行している。新しいブームの発信地であるアジア圏を中心としたエスニック料理を深掘りしていこう。

長期化する自粛生活で 家庭の味がマンネリ化エスニック料理への注目度高まる

自宅でできる“外食の味の再現”としてクックパッドではエスニック料理が多く検索されるようになった。 写真 i-stock/AndrewFurlongPhotography

 今後の食生活が変化する分岐点となった新型コロナウイルスの流行。これが近年盛り上がり始めていたエスニック料理のブームを加速させることとなった。

 学校の休校や在宅ワーク、外出自粛が続くことで「毎食の料理をつくることが大変」「家庭の味にも飽きた」「外食をしたいが気軽に外にも行けない」という生活者の食に対するストレスが積もっていった。そこで注目を浴びたのがエスニック料理だ。味のマンネリの解消として、自宅でできる“外食の味の再現”としてクックパッドではエスニック料理が多く検索されるようになった。パッタイ(タイ風焼きそば)、カオマンガイ(シンガポールチキンライス)、フォー、ガパオライスなどが昨年と比較して検索頻度*が上昇している。緊急事態宣言が解除され、学校も段階的に再開され始めた6月にいったん検索頻度は落ちついたが、その後7月以降にも子供の夏休みなどの影響で検索頻度が再び上昇している。家でもつくることができるとわかったことで、単なる一過性のブームとして終わるのではなく、レパートリーの1つとして今後定着していくのではないだろうか。

 伸長するエスニック料理でもとくに前年からの伸びが大きいのが「スパイスカレー」だ。この料理は単なる味のマンネリ打破の意味合いだけではないと筆者は考える。検索者の属性を見ると男性(全年代合算)、50代女性、40代女性と続き、一般的に子育てに忙しい30代が少ないという特徴がある。男性は趣味として料理をすることが多く、40・50代女性は子供がある程度大きくなり料理にかける時間がある世代である。またスパイスカレーは玉ねぎを刻み、時間をかけて炒め、好みのスパイスを炒めて煮込んでつくる。これは料理というよりも工作やアクティビティに近いものがある。このように属性や手順から考えてスパイスカレーづくりは「家でできる気分転換」という、趣味のような意味合いで行われているのではないかと考えられる。こういった料理にあえて名前をつけるとしたら気持ちをリラックスするための料理「マインドフルネス料理」と言ってもいいかもしれない(今回のエスニック料理とは離れてしまうが煮込み料理、お菓子やジャム作りもこの系統といえるだろう)。

※ SI値:Search Index:1000回当たりの検索頻度

今いちばん注目される台湾料理

 今、最も注目されるのは台湾料理だ。クックパッドでも台湾カステラ、豆花、台湾まぜそば、ルーローファン、シェントウジャンなどの台湾料理が多く検索されている。台湾カステラは一般的なお菓子の材料で「プルプル、シュワシュワ」と不思議な食感ができることでステイホームの時期にお菓子づくりにいそしむ人が増える中で人気となった。シェントウジャンは温めた豆乳に黒酢を入れ、干しエビやネギ、パクチーやラー油を垂らしたスープのことだ。豆乳が酢の働きでトロッとした独特の食感となる。こちらは2019年末の雑誌『Hanako』のグルメ特集の表紙となったり、2019年6月の『ELLEgourmet』でも「愛しのアジアごはん」特集で表紙となった、若い女性に注目の集まるメニューだ。

 台湾料理は辛すぎず、甘い味わいが日本人の味覚に合うようだ。また食材は日常的なものを使い、豆乳などヘルシーな食材も多いため今後も人気となりそうだ。

ヤマモリ、タイフードの味の決め手「ナンプラー」巣ごもり消費背景に需要が大幅に拡大

「グリーンカレー」をはじめ、本場タイの味を手軽に楽しめるレトルト商品を多数展開するヤマモリ。今期は巣ごもり消費を背景に伸長する「ナンプラー」の販促に注力。ランディングページの立ち上げやレシピ提案で更なる市場拡大をねらう。

文=石山 真紀

外食控えを背景に伸長するタイフード

 本場タイの味を手軽に楽しめるレトルトシリーズで、多くのロイヤルユーザーを持つヤマモリ。基幹商品の「グリーンカレー」が好評なヤマモリタイカレーシリーズは2020年4月に発売20周年を迎えた。発売当初はこだわりの専門店などでの取り扱いが中心だったが、徐々に市民権を得て、現在では主要な食品スーパーのレトルトカレーコーナーに品揃えされている。

 ラインアップは「グリーンカレー」「レッドカレー」「イエローカレー」「マッサマンカレー」「パネーンカレー」「プーパッポンカレー」「プリックカレー」「マンゴーカレー」の8品。今年5月、電子レンジ対応のパウチに全品リニューアルしたことで利便性が向上。多くのユーザーから高い評価を得ている。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外出の自粛ムードが高まる中、外食から内食への動きも加速。巣ごもり消費を背景に外食気分が味わえる付加価値型の商品が注目され、本場の味が手軽に楽しめるヤマモリタイフードの動きも非常によいという。

 たとえば、「グリーンカレー」は緊急事態宣言が発令された3・4月、ID-POS分析から見た購入者数は前年比の約2倍と大幅な伸長。ゴールデンウイーク以降、その波は落ち着いたものの、現在も前年比20~30%増で推移する。

 本格的なタイ料理を手軽につくることができる合わせ調味料、タイクックシリーズも好調だ。とくに「ガパオの素」は3・4月の購入者数は前年比の4~5倍、「カオマンガイの素」も2~2.5倍と大幅増となった。内食の回数が増えたことでメニューのマンネリ化に悩む主婦層に刺さったとみられ、リピート率も向上。人気メニューのひとつであるガパオは子供でも食べやすい「辛くないガパオの素」もラインアップすることで、幅広いユーザーのニーズに応えている。

手軽に試せる「ナンプラー」レシピを多数紹介

 コロナ禍ではレトルト商品をはじめとしたストック型の商品が伸長したといわれるが、ここにきてヤマモリの「ナンプラー」も大きく伸長している。

 同社の「ナンプラー」は生臭みが少なく、旨味がしっかりと効いており、開封後も中身が空気に触れない密封ボトルを採用することで、味も香りも長期間劣化せずに品質が保たれる。また、使いたい量を一滴から注ぐことができる点もポイントだ。

 ヤマモリの「ナンプラー」はアマゾンのカスタマーレビューでも4以上を獲得し(※20年9月17日現在)多くのロイヤルカスタマーを持つ商品だが、5月以降急激に需要が拡大して購入者数が多い時期は前年の4倍程度、平均しても前年比の50~60%増で推移する。

 タイ料理が家庭の中で浸透してきたことから、ヤマモリは20年下期の販促を「ナンプラー」に注力。首掛けによるレシピ提案をはじめ、QRコードから同ブランドのランディングページに飛べるような施策を打っていく。

 「ナンプラー」のランディングページでは、ナンプラーがどうつくられるかをはじめ、同社「ナンプラー」の商品特徴や30以上の簡単レシピを紹介していく。またインスタグラムも開設しており、「ナンプラー」を含めたタイフードの魅力をユーザーに訴求していく。

 新型コロナウイルスの影響はこの先も続くとみられ、家庭で手軽に本場の味が楽しめるエスニック調味料及びレトルト商材は伸びしろがあるとみられる。ヤマモリでは家庭でも実践しやすいレシピを紹介することでトライアルを増やし、タイフードの市場拡大に貢献していきたいとしている。

ユウキ食品、マレーシアの伝統的な味を手軽に再現「ママズ・ディライト」シリーズを新発売

世界各国の食品を通じて、豊かな食のひとときを提案してきたユウキ食品が新たに投入するのが、マレーシア料理の素「ママズ・ディライト」シリーズだ。多民族国家ならではのバラエティーに富んだ味を手軽に再現できるレトルト調味料であり、マレーシア政府によるハラール認証製品でもある。

文=室作 幸江

多様な食文化が融合したマレーシア料理

 中華・エスニック料理を中心に、世界各国の調味料や食材を幅広く取り扱うユウキ食品が新たに手がけるのがマレーシア料理だ。マレーシアといえば、多民族国家で知られ、食においても多様な味が融合されている。さらに、熱帯地域に位置するため、その土地でしか手に入らないスパイスやハーブを料理に多用することから、複雑で味わい深い豊かな食文化が発展してきた。

 マレーシア料理を大きく分けると4つに分類できる。マレー民族による“マレー料理”、華僑の“中華料理”、インドからの移民による“インド料理”、そしてマレーと中華が融合した“ニョニャ料理”だ。その昔、マレー半島に移住してきた中国人の男性と地元マレー人の女性との間に生まれた子どものことを、男性は“ババ” 、女性は“ニョニャ”と呼び、ニョニャが料理することでこの名が付いたという。

 こうした伝統的なマレーシアの味を手軽に楽しめるのが、「ママズ・ディライト」シリーズだ。現地で長年食品業界に携わってきたメーカーによるもので、厳選された原材料をふんだんに使ってつくられている。「忙しい毎日でも、お母さんがつくってくれたような伝統の味を気軽に再現できる」ことをテーマにしたレトルト調味料であり、マレーシア国内はもちろん、中国などでも提供されている。具材を合わせて調理するだけで、本格的なマレーシアの味を家庭で楽しめることから、ユウキ食品ではエスニック料理の新たな定番として日本での定着をめざす。

5つの味で新登場すべてハラール認証製品

 今回発売するのは5つの味だ。まず、さらっとしたスープ状のカレーである「マレーシアカレーの素」。さまざまなスパイスから生み出される辛さとともに、繊細で奥深い味わいが楽しめる。

 2品目は、マレーシアならではの料理である「ニョニャカレーの素」。日本では珍しいトーチジンジャー花、レモングラス、生姜、キャンドルナッツなどのハーブやスパイスから生み出されるさわやかな辛さのカレーだ。

 3品目は、マレーシアでは欠かせない唐辛子を使用した調味料、サンバルによる「サンバル炒めの素」。日本の味噌のように、マレーシアでは各地方や家庭で独自のサンバルがつくられている。お好みの具材と炒め合わせるだけでスパイシーなマレーシア料理が完成する。

 4品目は、中国海南島出身の移民が東南アジアに伝えたといわれる料理の「海南チキンライスの素」。鶏肉の脂の旨味と生姜のさわやかな風味が食欲をそそる。蒸し鶏を添えて味わうのもおすすめだ。

 5品目は、マレーシアやシンガポールで広く食べられているスパイシーでコクのあるスープ麺の「ラクサの素」。エビのだしが利いたカレー風味で、米麺を入れるのが一般的な食べ方だ。ココナッツミルクを加えるとさらにおいしくなる。

 これら5つの商品はすべてマレーシア政府によるハラール認証を取得している。ハラールとは、イスラムの教えで合法的なもののことを意味し、ハラール性を保証するのがハラール認証だ。オリンピックをきっかけに日本でも認知され始めている。伝統的なマレーシアの味に加え、ハラール認証製品であることも魅力として、ユウキ食品ではアピールしていきたい考えだ。

北アフリカ生まれの「クスクス」2つの味が仲間入りして新発売!

世界各国の調味料や食材を幅広く揃えるユウキ食品がこのたび提案するのが、世界最小パスタといわれる「クスクス」だ。「プレーン」に加えて、「クミン」と「チリペパー」の2つの味が新たに仲間入りした。お湯をかけるだけの手軽さやアレンジのしやすさをアピールして認知拡大をめざす。

小さな粒状の世界最小パスタ伊や仏では国民食

 1974年の創業以来、ユウキ食品では世界各国の味をいち早く日本の食卓に届けてきたが、世界最小パスタといわれる「クスクス」もその一つ。デュラム小麦の粗挽粉に水を含ませ、小さな粒になるように丸めてそぼろ状にしたもので、かみしめるたびに小麦の香りや甘みが感じられ、パラリとした食感だ。クスクスの歴史は古く、北アフリカの先住民、ベルベル人がはるか数千年も前から主食として食べていたといわれる。

 北アフリカで生まれたクスクスは、アフリカ大陸に位置する国々はもとより、北アフリカを植民地支配していたフランスに広がり、やがてスペインやイタリアにも伝播。興味深いのは、その土地の風土や風習に合わせたスタイルで喫食されてきたことだ。たとえば、一般的なクスクス料理といえば、野菜や肉の入ったスープを添えるのだが、チュニジアではトマトソースを使うことが多く、トルコではクミンを使う。また、フランスではサラダの定番食材として使われたり、モロッコでは牛肉と野菜の煮込みをかけたりなど、食べ方は多彩。現在も各国で新しいクスクス料理が次々と生み出されている。

 そんな汎用性の高いクスクスを日本でも広めたいと10年以上も前から取り組んできたのがユウキ食品だ。発売当初はなじみの薄い食材だったためになかなか浸透しなかったが、ここ数年おしゃれなカフェやデリカテッセンでクスクス料理が登場するようになり、認知が進んだことから、同社では今の時代にふさわしい食材として、クスクスの魅力を改めて訴求していく。

時短調理が可能調理法もアイデア次第

 今回ユウキ食品が取り扱うのは、クスクスのスペシャリストといわれるイタリアの「ビア」ブランドだ。シンプルな「プレーン」に加え、スパイスやハーブを利かせた「クミン」と「チリペパー」を揃えている。

 このクスクスの魅力は、なんといっても時短で調理できる点にある。たとえば1人分なら、50gのクスクスをボウルに入れ、60mlのお湯を加えてラップをかけて2分待てばできあがり。鍋に入れて茹でる必要はなく、かさばらないため、保存食や非常食としての利便性もある。

 もうひとつの魅力は、主食でありながら副菜にもなるうえ、あえたり、添えたり、かけたりなど、調理方法もいろいろ楽しめる点だ。パスタソースをかけてワンプレートランチにするもよし、サイコロ状にカットした野菜とあえてサラダにするもよし。あるいは、バターとドライフルーツをのせ、シナモンをふりかけてデザートにするのも手。アイデア次第でいろいろなメニューに活用できる。「ビア」ブランドの「クミン」と「チリペパー」はそれぞれ香り高いが、塩味はないので「プレーン」同様、調理しやすい。スープカレーに添えたり、エスニックサラダに添えたりなど、香りを生かしたメニューに合う。

 コロナ禍でのステイホームをきっかけに料理を楽しむ人が増えた今、目新しい食材に対する感度は高まっている。時短で調理でき、使い勝手もよく、見た目に映えるクスクスは、今後注目の食材といえそうだ。