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食卓の主役へ進化し続ける日本のサラダ。市場拡大に貢献してきたキユーピーが考える、サラダ市場の今後とは?

 

サラダといえば、生野菜を盛り合わせた野菜サラダもあれば、ポテトサラダやマカロニサラダなど総菜売場ではお馴染みの味もある。また、シーザーサラダやコブサラダといった海外から流入したメニューもあり、そのバリエーションは数え切れない。最近では副菜ではなく、主菜として提供する専門店も登場してきている。そこで今回は、多面体の魅力をもち、近年話題の「サラダ」にスポットを当て、全4回にわたり解説していく。 

第1回はこちら

日本で初めてドレッシングを製造・販売したキユーピーは、多種多彩なドレッシングを通じてサラダのバリエーションを次々と提案することで、サラダ市場の拡大に貢献してきた。その歴史を振り返りながら、今後の市場の可能性について、家庭用本部 調味料部 ドレッシングチームの林孝昌氏に聞いた。

しょう油味のドレッシングでサラダが身近な存在に

キユーピー家庭用本部 調味料部 ドレッシングチーム 林孝昌氏

 1958年にキユーピーが日本初のドレッシング「 フレンチドレッシング(赤)」を発売した当時は、サラダといえばキャベツの千切りのように料理の付け合わせという存在にすぎなかった。だが、高度経済成長を背景に、レタスやトマトなどの西洋野菜が普及し始めるようになると、サラダのメニューの幅も少しずつ広がっていく。そして日本人のサラダの喫食機会が一気に増えるのは、同社が78年に「和風ドレッシング」と「中華ドレッシング」を発売したことに起因する。

 「日本人になじみのあるしょうゆ味によって、サラダが身近な存在になりました」(林氏)

 とはいえ、サラダは脇役であり、副菜の1つ。これが食卓の主役に躍り出るのは90年代。同社がコクとうま味、具材の量にこだわった「テイスティドレッシング」を提案したことによる。葉物中心のサラダだけでなく、たんぱく質も加えた「おかずサラダ」が登場したことで、食べごたえのあるサラダが食卓に登場。さらに、99年に「シーザーサラダドレッシング」を発売したことも後押しする。

 「メキシコのレストランで考案されたシーザーサラダがアメリカで人気となり、その味を日本の家庭でも楽しめるように開発。トレンド感のあるサラダの登場によって、サラダが注目されるようになりました」(林氏)

 以後、同社は世界のサラダのトレンドをリサーチしながら、ドレッシングを通じて新たなサラダを提案することにも注力。「コブサラダ」もその1 つだ。

健康志向を背景にサラダは多様化の一途

 2000年代に入ると、サラダを取り巻く環境は大きな変化を迎える。その象徴といえるのがサラダ専門店の登場だ。「チョップドサラダ」や「パワーサラダ」などサラダメニューのバラエティも広がり、話題をさらう。その根底にあるのは健康志向だ。

 こうしたなか、キユーピーはこれまで以上にサラダの価値を伝え、さらにその価値を磨き上げるために、3つの方向で取り組んでいる。「トレンド感」、「栄養バランス」、「手軽さ」の提案だ。

 「新たな味種のドレッシングも検討しつつ、既存品をブラッシュアップして、より素材にこだわっていきたいと考えています。また、これまでは油についてはレス・オフの考え方が主流でしたが、最近では良質の油を適量摂るという流れに変わってきています。ドレッシングにもそうした考え方を反映しています」(林氏)

 では今後、サラダ市場はどのように変化していくのだろうか? 林氏によれば、コロナ禍によって、従来の方程式では見通すことが難しくなっているという。実は、食卓におけるサラダの出現率は経済環境に左右される傾向もあるようだ。景気が悪化すると、サラダの出現率は減少、08年のリーマンショック後は一気に下がった。だが現在、景気の後退局面にありながら、依然としてサラダの出現率は高い。外出自粛による運動不足もあって、もっと野菜を食べようという意識が働いているからだ。

 「手軽な食材でボリュームが出るひと皿として『冷しゃぶサラダ』のようなたんぱく質をプラスして主菜となるようなサラダを訴求しています。実際、反応もいいですね。一方で、コロナ禍で野菜摂取需要が旺盛なので栄養バランスに配慮した、健康基軸のサラダや手軽につくれるシンプルなサラダも提案していきます」(林氏)

 どんなサラダが好まれるかはさておき、日本人にとってもはやサラダは必要不可欠なメニューであることは確かだ。