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ウィズコロナ時代に求められる鍋には、定番の鍋の簡単さと楽しさが求められる=MD EDITION

MDエディション

レシピ数337万品、月間利用者数7400万人が利用する料理レシピ投稿・検索サービス「クックパッド」には、日々たくさんの検索・アクセスログデータが蓄積されている。クックパッドの検索窓には、食材やメニュー名に限らず興味のある「コト」の検索も多く、年間約12万語以上のキーワードが検索されている。そんな中で「鍋」は季節性のあるワードにもかかわらず、年間メニューランキングで14位となるビッグワードである。今回はこの「鍋」の近年のトレンドの解説と「例年と同じ」とはいかないこの冬の予想をしていく。

【クックパッド】クックパッド(https://cookpad.com)は、1998年3月にサービスを開始した日本最大の料理レシピ投稿・検索サービス。月次利用者数は約7400万人、20〜40代女性の多くが利用している。【たべみる】クックパッド株式会社が提供する、食の検索データ分析サービス。

内食が増える今冬、改めて「定番の鍋」が生活者を助ける

 めくるめく食卓のブームがある。「タピオカ」や「チーズドッグ」「サバ缶」「おにぎらず」など生活者の興味は移ろいやすく冷めやすい。そんななかでホットな鍋メニューはここ数年で固定してきている。クックパッドで検索される「鍋」を含むワードのメニューに絞り込んだランキングは順位に変動はあるものの17年〜19年がなんと21位までラインアップが同一。さらに18年と19年では18位までランキングも同じである。「冷蔵庫にあるものを入れて煮込めばできる」簡単な料理のはずの鍋料理で、わざわざレシピを調べてまで食べたいメニューなのだから、上位のメニューのニーズがいかに強いかがわかるだろう。今年は家での食事や料理の頻度が増えているため、この上位メニューが「定番の鍋」として冬の食卓を支えることになるだろう。

モツ鍋は「節約意識を満たしてくれる」鍋であるといえる 写真:i-stock/kazuma seki

 この中でもとくに注目したいのは「モツ鍋」と「坦々鍋」である。こちらはニラともやし、安価なモツや特売になりやすい豚のひき肉でできる「節約意識を満たしてくれる」鍋なのである。ここで重要なのは実際に安いことよりも節約意識だと考える。主婦にとっては、家族のために工夫をしていつもと違う味付けでマンネリを解消し、しかも経済的で、自身を「やりくり上手な賢い主婦」と感じさせてくれる鍋が好きなのだ。内食回数が増え食費がかさむ昨今「節約」は鍋メニューにとっても重要なキーワードになるだろう。

娯楽としての食「Joy of Cooking」

 「鍋」と組み合わせて検索されているワードからニーズの変化を読み解いていこう。似ているワードだが18年から「鶏団子」が下がり「つくね」「鶏つくね」が上昇している。このワードの違いを知るために各ワードの人気レシピを見比べていく。すると「鶏団子×鍋」の人気レシピ10品のうち9品が既に加熱されたものや鍋の中の写真である。一方「鶏つくね×鍋」の人気レシピは10品のうち4品が加熱前の生の状態の写真で、今まさに鍋に入れようとしているものもある。この違いから鶏つくねは使っている食材はかわらず、食べ方が食卓で家族の前でつくねを鍋に入れて仕上げる形式にかわってきているのではないかと筆者は想像する。

 また今年に入り、夏でも検索頻度が高い鍋ワードに「しゃぶしゃぶ鍋」がある。このメニューも食卓で家族が「しゃぶしゃぶ」と調理に参加するメニューである。外出自粛の期間中に卓上で調理を楽しむホットプレート料理が人気になったように(20年5月のホットプレートのSI値*は対前年比224%)、鍋も調理を家族とともに食卓でする行為自体を楽しむ「娯楽化する鍋」が人気になるかも知れない。

※SI値: Search Index : 1000回あたりの検索頻度

鍋が家庭料理をJobからJoyに変換する

 ウィズコロナの時代、外食控えで家での食事や料理の頻度が増え、料理の家事負担(jobとしての料理機会)が増しているからこそ、これまで以上に簡便さが求められる。鍋であればカット野菜や餃子などの冷凍食材の活用提案は必須だろう。

 一方で食卓に楽しみを求めている人には、鍋の共調理での楽しさの提案が響くだろう。今季の鍋料理がjobとしての料理を、家族のjoyに変換してくれるキーメニューになることを期待したい。