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伸長するプラントベースフード、買われている理由と狙い目のメニューは?

商品ラインアップが増え、売場で目にする機会も増えてきたプラントベースフード。売上を伸ばしている要因は何なのか?どのような人がどんな目的で買っているのか? ID-POS分析による購買動向から見えた、プラントベース商品購入者の実像と今後狙うべきメニューについて紹介していきたい。

売上を伸ばしているプラントベースフード。その要因は何なのか?どのような人がどんな目的で買っているのか?(i-stock/vaaseenaa)

プラントベースフードの市場動向

 近頃、買物をしているとプラントベースフードコーナーが設けられているスーパーが増えてきているように感じるが、実際に売上はどうなっているのだろうか?スーパーのPOSデータからプラントベースフード商品を抽出し販売動向を調べてみたところ(図1)、2021年のプラントベースフード全体の売上は19年と比べて162%と食品全体の伸び率105%を大きく上回っていた。

 カテゴリー別に分類してみると、飲料や乳製品の代替品の売上が全体の8割を占めているが、ひき肉や加工肉、ハンバーグ惣菜などの代替肉は全体の1割ながら、伸び率は19年比で約4倍と大きく伸長しており、本稿ではとくにプラントベースミートに焦点を当てて見ていきたい。

プラントベースミートを買っている人はベジタリアン?

 「プラントベースフードはヴィーガンやベジタリアンの人たち、またはSDGsに対する意識の高い20~30代に支持されている」という話を聞くが、実際はどうなのだろうか? ID-POSデータから購入者の傾向を分析してみた。

 プラントベースミートの利用者がベジタリアンなのかを確認するため、定期的にプラントベースミートを買っているグループと生鮮肉を買っているグループに分けて、両グループの年間生鮮肉利用金額を比較してみた。プラントベースミート購入グループがベジタリアンならば、生鮮肉購入グループよりも生鮮肉の利用金額が少なくなるはずだが、結果は反対で、生鮮肉購入グループよりも利用金額が約2倍と多く、むしろ肉好きなグループであるようだった。

 図2はプラントベースミートとスーパーの食品全体の年代別売上構成比を比較したグラフだが、食品全体のピークが70代であるのに対し、プラントベースミートは50代にピークがあり、この年代を中心に購入されていた。アンケートなどの意識調査では20~30代の関心度は高いのだが、「食べたい」という意識はあっても実際に「購入する」という行動には至っていないようだ。「糖質」や「カロリーオフ」などの健康訴求商品も同様に50代が主な購入層だ。50代は本格的に健康に気をつけ始める年代、体の不調が少しずつ出始める年代でもあり、健康訴求商品の購入につながっていると考えられる。

広がるメニューの多様性、価格もお求めやすく

 プラントベースミート商品を見てみるとさまざまなメニューの商品が発売されていることがわかる(図3)。メニュー数は19年1月時点と比べて直近22年4月では倍増しており、レパートリーの豊富さは食卓のさまざまなメニューの代わりとして利用の幅を広げ、食卓で利用されやすくなってきている。

 「プラントベースミートは価格が高いから購入しない」という声もアンケートでよく見るが、価格の面でも変化が起きてきている。図4はレトルトハンバーグのプラントベースミート商品と一般的な商品の100g単価を比較したものだが、プラントベースミート商品はまだ高いものの、以前は80円ほどだった価格差は直近で50円ほどに縮まってきている。販売好調なプラントベースミートのレトルトハンバーグを見てみると、一般的な商品と同じくらいの内容量、パック単価になっており、同程度の価格ならば試しに購入してみたいというニーズの大きさが窺える。

 最近の食肉価格の上昇による値上げに対し、市場の拡大や生産の効率化などにより、プラントベース商品の値下げが進めば普及への後押しになると考えられる。

プラントベースミート 今後、狙い目となるメニューは

 今後、さらにプラントベースミート市場を拡大していくためには、どのような商品を開発したらよいのだろうか?普段食べている肉メニューの代替として利用されていることを考慮すると、家庭の食卓に対して欠落しているメニューを投入することがポイントになるのではないだろうか。家庭での肉メニューの食卓利用状況とプラントベースミート商品の売上をメニュー別に比較し、ギャップを探ってみた。

 図5は横軸をメニューカテゴリー別の食卓利用に対する売上の特化度、縦軸をプラントベースミート商品の売上増減率としてポジショニングしたグラフだ。横軸の特化度が1より小さい部分は食卓利用よりも売上構成比が小さいため市場としてまだ余力があり、商品の投入余地があるカテゴリーで、逆に、特化度1以上の部分は食卓利用よりも売上構成比が大きいため市場に対して商品が多くなっているカテゴリーと見ていただきたい。右上の揚げ物カテゴリーを見ると縦軸の売上は伸びているが、食卓利用に対する特化度が高く、市場に対して既に商品が多く投入されていることがわかる。一方、左上の中華カテゴリーは特化度が1よりも低いことから市場としてまだ商品の投入余地があり、かつ売上も伸びているので狙い目のカテゴリーと言える。

 中華カテゴリーをメニュー別に比較したのが図6だ。麻婆関連の売上は大きく、食卓利用を大きく上回っているが、餃子やシュウマイは逆に食卓利用が多いのにプラントベースミート商品の売上が小さく、商品の投入余地があることがわかる。とくにシュウマイは購入者の年代を見てみると50代にピークがあり、これはプラントベースミート購入者層と同じであるため、支持されやすいのではないかと思われる。同様に、特化度の高い揚げ物カテゴリーであってもメニュー別に見てみるとコロッケの売上が食卓利用に対して小さいことから、狙い目であると言える。

日本食研ホールディングス株式会社 食未来研究室 室長 児玉一穂

食未来研究室ホームページ : https://nsk-shokumirai.com/

 メニューの多様化が進むプラントベースフードだが、食卓の利用状況と比較すると、まだまだ取り組むべきメニューは多くこれらを充足させていくことでさらなる市場拡大につながっていくと考えられる。