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冷凍食品、22年春夏の最新トレンド圧倒的存在感で魅力を放つ冷凍麺

コロナ禍を経てイメージの転換が起きた冷凍食品。総務省家計調査によれば、冷凍調理食品の1世帯当たり年間の購入金額は、この15年で約2倍と拡大傾向にある。2022年春夏の主要メーカー各社の新商品から、冷凍食品の最新トレンドを読み解く。

総務省家計調査によれば、冷凍調理食品の1世帯当たり年間の購入金額は、この15年で約2倍と拡大傾向にある。(i-stock/ahirao_photo)

ニチレイフーズの「冷やし中華」に業界騒然

 2022年春夏の家庭用冷凍食品新商品発表で、最も業界にインパクトを与えたのは、ニチレイフーズの「冷やし中華」だった。同社は昨年、山形工場に追加投資をして「パーソナルユース」需要に対応した新商品をつくると公表していたが、その第一弾が「冷やし中華」。業界トップグループの中で、家庭用の人気麵ジャンルがない、という状況を崩したこと、しかも“レンジで加熱、とけ残る氷と半解凍の醤油だれで麺を冷やす”という特許出願の新技術に業界が驚いた。

 同社としては、冷凍麺への参入という意味ではないとしているが、拡大を続ける個食冷凍麺需要は、もはや無視できない領域であることは明白だ。3月末に一般社団法人日本冷凍めん協会が、21年の冷凍麺生産食数を発表したが、20億食を突破した20年から一転、17億8669万食と11.1%の減少となった。しかし、コロナの影響を受ける前の19年に比較して大きく落ち込んでいる業務用に対し、市販用は19年比で見ると伸長している。

 また、市販用全体では2021年は前年より減少しているが、それは前年急伸した「うどん」の反動減によるもので、市販の「中華そば」「パスタ」「日本そば」「焼きそば」はいずれも前年より伸びている。中華そばでは、ニッスイの「ちゃんぽん」、マルハニチロの「横浜あんかけラーメン」の二強は、コロナ禍でさらに需要が増した。日清食品冷凍の「日清中華」商品群も好調が続く。さらに昨年秋からの新ブランド「日清本麺」への注目度が高まっている。

 「パスタ」は、巣ごもりのランチ需要で需要層の間口が広がり、1億3300万食余りと依然冷凍麺最大のカテゴリーとなっている。ほぼ未開拓であった「日本そば」も認知が進みつつある。テーブルマークでは、プレミアムラインの「丹念仕込み」2品目の「やわもちうどん」を新発売。新たな地域など需要開拓を進める。

家飲みおつまみ、夕食惣菜が引き続き伸長

 コロナ禍で注目の成長を遂げた新たなジャンルは「おつまみ」だろう。従来から着実な需要増が続いていた、お好み焼・たこ焼は、ますます伸長。新たな「おつまみシリーズ」開発も各社が注力している。コンビニで成功している、トップシール容器でそのままレンジ調理ができ、お皿いらずで即食べられるスタイルが定着。ニチレイの「今日は家飲み」シリーズの充実に見られるように、量販店市場でもこのお皿いらずが人気だ。

 一方で、お弁当需要は伸び悩みといわれているが、家飲みが増えたことで、“おつまみにもお弁当にも”と提案する商品は増えている。また夕食惣菜を利用した弁当づくりもある。お弁当用苦戦と見るより、消費者の冷凍食品利用シーンが多様化したと考えるのが妥当であろう。

 話題の家飲み用新商品は、味の素冷凍食品の“ビールに合う”に特化した「黒胡椒にんにく餃子」である。インパクトのある大人の味わいでリピーターを獲得している。ほかに「黒豚大餃子( 9個)」の定番化、大容量品(20個)発売など、餃子品群を強化した。「ギョーザ」発売50周年を迎え、1年を通してキャンペーンを続ける予定だ。

 片やイートアンドフーズも餃子のバラエティ化を進めており、両社の餃子バトルは熱戦が続きマーケットを盛り上げている。同社新商品は「羽根つきタン塩餃子」。また、「スタミナ肉ニラ水餃子」は、にんにく醤油だれを添付することにより、ごはんが進むおかずとしての水餃子新商品として改めて提案している。

 夕食惣菜も各社力が入る。マルハニチロは「黄金の海老しゅうまい」、大容量の「肉焼売」と2品のシュウマイ大型新商品を投入した。同社によると、既にシュウマイの購入シーンは、チルドから冷凍にシフトしているという。「五目シュウマイ香りと旨み」をはじめ、シュウマイ既存品も一気にリニューアルして、マーケットでの存在感を増している。ニチレイフーズ「スープ溢れる絶品小籠包」もグレードの高い中華の逸品として注目されている。

 ニッスイでは、韓国ブームをとらえた「ヤンニョムチキン」を発売。“レンジでつくる”キットタイプシリーズは、容器を簡素化して袋のままレンジアップする仕様に変更。プラスチック削減にも貢献する。また、時短調理のニーズに即したミックス野菜を充実させた。キットタイプでは、ニチレイも「肉じゃが」など具材とたれを10分煮込むだけのキットタイプ商品を投入した。

冷凍食品への消費支出は15年でほぼ倍に

 コロナ禍を背景に冷凍食品の需要が伸びているようだが、従来の指標ではうまく把握できない。今回、消費の側から見てみようと家計調査消費支出を追ってみたところ、冷凍調理食品の消費支出(総世帯)は、15年でほぼ倍という拡大傾向であった。つまり、消費者は量販店・SMのみでなく、コンビニやドラッグストア、通販での高級ライン商品の購入など、多様なチャネルにアクセスしている。外食が取り組む冷凍食品、無人販売餃子、自販機なども近年急成長と話題だ。また、かねてより、「業務スーパー」「コストコ」のファン層も広がっている。

 さらに、パン企業の新規参入(ヤマザキ、Pasco、Pan&)、井村屋の和菓子、ベイク商品への取り組み、再びの家庭用参入となったデルソーレ、エム・シーシー食品など、話題は尽きない。

 ウィズコロナ、ポストコロナと時代は変わっても、過去2年で冷凍食品に対するイメージの転換が起きたことは変わらない。ますます商品も、消費者の「買い場」も多様化していくことになるだろう。