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22年4月に「プラスチック資源循環促進法」が施行、小売や外食でも大きな意識の変化が重要だ

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための17の国際目標。30年の年限まで10年を切ってきた。20年10月には、当時の菅義偉首相が温室効果ガス排出量を50年までに実質ゼロとする目標を宣言。22年4月に「プラスチック資源循環促進法」が施行されれば、小売や外食で配布されてきた、身近なスプーンやストローにも大きな変化が現れるだろう。時代は、社会全体の意識がサステナビリティを重視する方向に大きく転換しようとしている。

サステナブルの学びは、小中学校からの時代へ

 今や、「SDGs」のことを耳にしたり、見たりしない日はめったにない。このコロナ禍で、人・社会・地球環境にとってやさしいサステナブル(=持続可能)な社会とはこういうことかと、その一端を実感したという人もいるだろう。

時代は、社会全体の意識がサステナビリティを重視する方向に大きく転換しようとしている i-stock/Yuuki Mizoguchi

 たとえば、在宅時間が長くなり、毎日、家中で出されるごみの多さに驚いたある女子高生は、袋菓子に封入されているトレイに注目。「これって必要?」と、SNSを通じて、菓子メーカーに対しトレイの廃止を求める署名活動を行ったことが新聞で報じられた。また、なじみの飲食店などで、営業の自粛により行き場を失った素材を、もったいないからと「応援消費」に動いたという人もいるはずだ。こうした日常のささいな活動の積み重ねが、サステナブルな社会へとつながっていく。

 政府は、小学校や中学校の授業の中で「持続可能な開発のための教育」を盛り込むことを決め、実施に動いている。自然や資源を保全しつつ、地球環境にできるだけ負荷をかけずに、豊かな生活が続けられる社会の大切さは、これからの世代を中心に、今後、ますます浸透していくにちがいない。

 一方、企業の経済活動としても、サステナブルを意識した経営が求められている。数年前までは、十分な収益を上げた企業が取り組むべきものと考える風潮が強かったが、現在は、環境や社会と両立できない経済活動はもはや認められないという域にまできている。

完全ラベルレスも登場、ますます環境にやさしく

 富士経済では、プラスチックフリー、ラベルレス、軽量化・小型化など環境への影響を意識した家庭用の一般加工食品を「サステナブルフード」としてとらえ、2021年のサステナブルフードの国内市場を、2020年比13.7%増の1兆6104億円と見込んでいる。今はまだ、軽量化や小型化といった、以前から進められているものが中心だが、ここ数年では、プラスチックフリーやラベルレスが大きく伸びている。

 とくにラベルレスの飲料は、18年に5億円規模だったものが、21年には約40倍の205億円にまで拡大すると予測されている(富士経済)。ラベルレス飲料は、企業側はプラスチック使用量を削減でき、消費者側にもリサイクルの際にラベルをはがす手間がいらないというメリットがある。18年に業界に先駆けてアサヒ飲料がネット通販(EC)で水製品をケース販売したことに始まる。

コカ・コーラシステムのリサイクルペットボトル。ラベルで100%リサイクルペットボトルであることを訴求し、リサイクルを促す

 20年4月には「資源有効利用促進法」の改正により、箱売りのペットボトルについては外装にマークを印刷するなどの条件を満たすことで、ラベルによる識別マークの表示を省略できるようになり、完全ラベルレスのペットボトルが実現した。20年は、コロナ禍で在宅時間が増え、ネット通販での飲料のケース販売が大幅に増加。コカ・コーラシステム、サントリー食品インターナショナル、伊藤園が相次いでラベルレス製品を発売。21年もキリンビバレッジからラベルレス製品が発売されるなど、参入メーカーが増えている。

 コカ・コーラシステムでは、現在、旗艦ブランド「コカ・コーラ」をはじめ全製品にリサイクルペット素材を100%使用したペットボトル(=水平リサイクル)を採用している。2020年実績で28%の水平リサイクル率を2022年までに50%にまで高める計画だ。

 「ペットボトルリサイクル推進協議会」の調べによると、2019年の日本のペットボトル回収率は93%、リサイクル率は85.8%と、欧米に比べても高い。しかし、その多くは衣服やトレイなどに再生され、ボトルtoボトルの割合は12%程度にとどまっている。その割合を高めることは、業界の最重点課題とされている。

サントリー「またあえるボトル」のロゴマーク。リサイクル素材や植物由来素材を100%使用したサステナブルなペットボトルを「またあえるボトル」と命名し、水平リサイクルを加速する

協業の取り組みで、環境負荷の低減を図る

 再生までに時間もコストもかかる「リサイクル」に比べ、同じ容器を繰り返し使う「リユース」は、地球環境に対するやさしさがわかりやすい。

 イオンは、従来、使い捨てされていた日用消耗品や食品などの容器や商品パッケージを耐久性の高いものに変え、繰り返し利用できるようにする新たな商品提供システム「Loop(ループ)」の取り組みに、21年5月から参画した。お客がデポジット(容器保証料)込みで商品を購入、使い終わった容器を扱い店舗に戻すと、デポジットが返却される。一方で、容器はループが回収、洗浄してメーカーに戻し、メーカーは容器に充填し再び店頭で販売する。

イオンが新たに参画した「Loop」の回収BOX。日用消耗品や食品などの容器や商品パッケージを耐久性の高いものに変え、繰り返し利用できるようにする

 セブン&アイグループでは、2019年5月、環境宣言「グリーン・チャレンジ2050」を策定。「CO2排出削減」「プラスチック対策」「食品ロス・食品リサイクル対策」「持続可能な調達」の4つのテーマで、環境負荷低減を進めている。

セブン-イレブン・ジャパンのチルド弁当の紙製容器。従来のプラスチックを使用した容器と比較し、2020年度は約406トン、2021年度は約800トンのプラスチックの削減を目標とする

 たとえば、チルド弁当容器の紙化。ふたを密閉する際、窒素ガスの注入により、鮮度を長く保つことが可能になった。廃棄ロスの機会を減少するだけでなく、遠くまで運べるようになり、生産効率の向上にもつながっている。また、“人と地球にやさしい”「ヤシノミ洗剤」を展開するサラヤと、衣類洗剤や手指消毒スプレーを共同開発。衣類にも肌にも優しく、地球環境や社会問題に配慮したエシカルな製品だ。

「セブンプレミアム ライフスタイル手指消毒スプレー」。長年、医療施設や食品衛生分野などに携わってきた衛生のプロフェッショナルであるサラヤとの共同開発商品

 このサラヤは、現在「衛生」「環境」「健康」という3つのテーマを事業の柱としているが、実は“SDGs”という言葉が存在する以前から、サステナブルな社会の実現に向けた活動を続けてきた会社だ。1971年に業務用、79年には一般家庭用の『ヤシノミ洗剤』を発売。82年には台所用洗剤として日本初の詰替パックを開発した。

 同社では、ヤシノミ洗剤の原料になるパーム油の製造によってボルネオの環境問題が引き起こされていることから、「原料調達まで遡って、より人と地球にやさしい洗剤をつくろう」と、原料生産地の一つであるマレーシア・ボルネオ島の環境保全の支援に売上の1パーセントを充てるなど、15年以上も前から、生物多様性を守る活動に取り組んでいる。

 また、2021年11月には、社会課題解決をめざす企業との共創プロジェクトを進めるコル、店舗ビジネスをサポートする店舗流通ネットワークとの戦略的パートナーシップにより、新たなプロジェクト「キープReフレッシュ」がスタートした。マイナス30℃の液体を使った同社の急速凍結技術により、地方の6次産業化やフードロス削減に貢献していく。