食品スーパー(SM)の青果部門は規模が拡大すればするほど、商品調達が難しくなる。
それは「競り」という取引形態や卸売市場を前提とした農産物流通の仕組みが生み出す「矛盾」にあるともいえる。今回は青果におけるマスデメリット問題とその解決策について考えてみたい。

大量に仕入れると高くて質が悪くなる!?
農産物の流通は農家、集荷業者、全農、卸売市場、仲卸、そして小売業が担っている。
たとえば農家が各JA(農業協同組合)に青果物を納め、1000ケース集まったとしよう。これを全農(全国農業協同組合連合会)の県本部またはJAが地域の卸売市場に出荷する。
県本部はA市場に100ケース、B市場に200ケース、C市場に300ケースなどと配分する。価格は市場ごとに決定されるので、全農はその日の価格に応じて、各市場への出荷数量を調整し高い価格の市場へは数量を増やしている。
だからA市場に今日100ケース入荷したからといって、翌日も100ケース確保できるという保証はない。安値を付ければ50ケースに減るし、高値なら200ケースに増える。全農との間には緊張感がある。
各市場は仲卸や小売業に卸売りする。SMのA社が仮に500ケース欲しいといっても、同社が取引しているC市場に300ケースしか入荷しなければ、買えない。SMのA社以外に仲卸A、B、Cにも相当数が割り当てられるから、入荷した300ケースを全量買いたければ、どこよりも高い価格を付けるしかない。
それ以上の注文が市場に来ることもある。その場合、市場担当者は数量を集めるために3~4日前から少しずつ在庫して納品日に間に合わせるしか対応方法はない。たとえばSMは特売になると通常の数倍の数量を必要とするが、農産物は通常の数倍の生産をすることは不可能だからだ。
生鮮の価値は「鮮度」なのに価値のない商品が特売に出回ることになる。3~4日前に市場に到着した商品が並ぶわけだから、特売をしないSMのほうが品質がよいことになる。
野菜や果物は相場に合わせて品質のよいものをタイムリーに売場で表現しなければいけない。事前に在庫する方法はデメリット以外の何物でもない。バイヤーにこの質問をすると「当社は価格交渉で安く値決めできています」と返答するだろう。
特売原価は安いが定番原価が高くなっているのに気づいていないだけだ。鮮度のよいもの、価値のあるものを売りたければ特売をやめることだ。集客のために野菜の安売りを指示する経営層が多いが逆効果になっていることを理解すべきだ。
マスデメリットを解決する2つの策
日本の農産物流通の要である市場はいまだに競りという「個」対「個」で取引する仕組みだが、現実は「大量」対「大量」の相対取引が主流で、ムリ、ムダが膨大だ。
だから現状では農産物を大量に買い付けようとすると、世の中の常識に反して、価格は高くなる。しかも高く買えば品質がよいものを安定的に調達できるわけでもない。
そうはいっても
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