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食品強化型ドラッグストアはどう動く? 後編 クスリのアオキとゲンキー

食品強化型ドラッグストア(DgS)の勢いが止まらない。コスモス薬品(福岡県)、クリエイトSDホールディングス(神奈川県)、クスリのアオキホールディングス(石川県)、Genky DrugStores(福井県)について、2021年通期決算説明会の経営トップの発言から今期の施策を把握したい。

クスリのアオキHDの栃木県内の店舗

クスリのアオキHDは「フード&ドラッグへの転換」急ぐ

 クスリのアオキホールディングスの2021年5月期(連結)業績は、増収・営業増益となった。今後は「フード&ドラッグへの転換」「調剤併設率70%」「ドミナント化への移行」の3つの重点施策により、26年5月期に売上高5000億円の達成をめざす。

 21年7月の決算説明会では5カ年の新中期経営計画「ビジョン2026」を発表した。

 「ビジョン2026を実現するための重点施策は、『フード&ドラッグへの転換』『調剤併設率70%』『ドミナント化への移行』の3つだ。1つ目のフード&ドラッグへの転換では、生鮮食品を充実させてワンストップ性を高める。これまでも『近くて便利』な品揃えとして食品を強化してきたがさらに一歩踏み込んで、お客さまの買い回りの手間を減らせるように、DgSと食品スーパーが融合したフォーマットに転換していきたい。具体的には、夕食の食材が揃うように生鮮4品を充実させるほか、価格や販促も強める。こちらに関してはローコスト経営のほうで補っていきたい。

 フード&ドラッグを実現するために、10年ぶりに店舗フォーマットを変更する。現在のメーンフォーマットである『300坪型』は、10年にフード強化型のモデルとして開発したものだ。これまでの新店の9割がこのタイプだ。そして14年からは『450坪型』として生鮮食品のコンセッショナリーを導入した次世代フォーマットの開発に取り組んできた。こちらの出店比率は1割程度で、店舗数を増やすことがなかなか難しいのが欠点だ。この欠点を補うために、『300坪型』と『450坪型』の中間フォーマットとして『400坪型』を新しく追加する。今後は『400坪型』がメーンフォーマットとなる。当面の出店比率は『400坪型』が5割、『300坪型』が4割、『450坪型』が1割となる」(青木宏憲社長)。

 また、「店舗展開エリアの拡大」を凍結し、調剤併設を加速する。

 「2つ目の調剤併設率は、従来の50%から11年ぶりに70%へ目標を引き上げる。上場DgS企業の調剤併設率の平均は30%程度で、当社でも現状は十分強力な武器となっているが、併設率上位2社と比べると見劣りする。これまでも調剤併設率に関しては『できるなら高めていきたい』という考えだったが、薬剤師の採用問題、そして高速出店の問題があり、なかなかDgSの出店ペースに体制が追い付いていかない課題があった。そういった状況の中で3年前から薬剤師の新卒採用が改善してきており、21年4月には111人の新卒薬剤師を採用することができた。さらにコロナ禍の中でも中途採用が順調に進んでいる。今後は当社の中でもDgSの店舗純増率が低下していくので、調剤併設率を70%へと一気に高めたい。

 3つ目のドミナント化への移行についてだが、これまでは売上高3000億円を早期に達成すべく店舗展開エリアを拡大、高速出店を続けてきた。今後は競争環境も変わってきていることを踏まえて、当面は店舗展開エリアの拡大を凍結し、既存の北信越・東北・関東・東海・関西の5つの店舗展開エリアの中でドミナント化を進めていく。限られた店舗展開エリアの中では、M&A(合併・買収)を絡めながらドミナント化を進めていきたいと考えている。当社はこれまでSM4社を子会社化したが、その目的は異なるエリアにおける①生鮮食品の仕入れや売場の運営力の向上、②ドミナント化を進めるための好立地物件の確保だ。フード&ドラッグフォーマットを持つDgS企業は少ないので、子会社化した4社のSM企業にとっても、当社のフォーマットに転換することでお客さまからより支持されるフォーマットに生まれ変わることができるものと考えている」(青木社長)。

ゲンキーは粗利益率の引き下げを継続

 Genky DrugStoresの2021年6月期(連結)業績は増収・2ケタ営業増益だった。徹底したディスカウント戦略により、粗利益率を引き下げ、1人当たり買上点数、来客数を稼ぐモデルと、完全自前主義によるローコスト経営を継続する。

 コロナ特需が一巡した後、苦戦しているドラッグストアがある中で、Genky DrugStoresは好調に推移している。

 「これには3点あると考えている。粗利益率の引き下げ、プライベートブランド(PB)商品、そして生鮮食品の鮮度アップだ。当社は徹底してEDLP(エブリデー・ロー・プライス)を進めており、粗利益率も毎年、『0.5ポイントずつ下げよう』という話をしている。22年6月期も20.7%という過去最低の粗利益率を計画している。PBについてだが、同じものをずっと売っていたら、必ず数字は落ちる。その前に一味違うとか、より便利になるとか、どんどん変化をさせている。生鮮食品はプロセスセンター(PC)を活用し、鮮度のいいものをより安く提供し、利便性をより高めていく。いくら生鮮食品があるといっても、買いたくない状態のものであればワンストップショッピングにはつながらない。われわれの生鮮食品はコロナ禍においても家計を助ける価格で、家庭の生活をカバーする便利さを提供することが重要と考えている」(藤永賢一社長)。

 成長戦略についてはどのように考えているか。

 「まず、当社のマーチャンダイジングの基軸であるEDLP、ディスカウント戦略だが、『毎日安い、同じ価格で』ということをとにかくやろうとコロナの前から本格的に取り組みを開始した。日替わり特売がないことで、『昨日買えばよかった』とか『明日まで我慢しよう』といったお客さまのわずらわしさを排除して、毎日安心して同じ価格で、しかも安く買物ができる環境をつくりたいという思いでここまでやってきている。このEDLPには、店側としても物流や店内作業なども大幅に軽減できるというメリットがある。つまり、お客さまにとっても会社にとっても、非常に優しい販売方法だということだ。ディスカウントを追求するためには、安く売り続ける仕組みをつくらなければならない。当社の場合、店舗開発、PB、物流、生鮮食品、これらすべてを自前主義で貫いているということになる。

 物流については、現在、19年6月に稼働を始めた『岐阜安八RPDC』がマザーセンターになり、20年4月に増床してチルドセンター機能を加えた『福井丸岡TC』が北陸を管轄している。今期から出店を開始している滋賀県に関しては、来年以降に通過型の物流センター(TC)をつくっていきたいと考えている。さらに、23年秋に富山県小矢部市に『岐阜安八RPDC』と同じ機能を持つ『富山小矢部RPD』を建設する計画だ。ここで石川県の能登から福井県の北側までカバーするようにしたい。また、愛知県等への出店はさらに加速させていくため、24年以降になるが、愛知県の東側の三河地区に『愛知RPDC』を建設する計画だ。今後は、これら3つのRPDC体制で、全体の物流を賄っていくということで、この体制確立により600店を運営できると考えている」(藤永社長)。