メニュー

21年度2ケタ増収3ケタ増益のセレクトショップ 「定価販売」のTOKYOBASEが強い理由

「メード・イン・ジャパン」に特化するという、並み居る大手セレクトショップとは一線を画す品揃えで、注目を集めているのがTOKYO BASE(東京都/谷正人CEO)だ。原価率が高いアイテムを、定価販売で売り切るというビジネスモデルもユニーク。高感度の若者層からの根強い支持でコロナ禍を乗り切り、20221月期には大幅増収増益で復活を目指す。アスレジャーと大人向けセレクトという新業態も立ち上げ、さらなる攻勢をかける。

デザインも品質も優れ、日本人の体型にフィット

プライベートブランド「UNITED TOKYO」

 コロナ禍によって、リアル店舗での販売が制約されていることが要因で、苦戦を強いられる大手セレクトショップが続出している。そうした中、気を吐いているのが、新興勢力のTOKYO BASE(東京ベース)だ。

 20212月期決算(連結)は、新型コロナウイルス感染拡大の直撃で、売上高146億77300万円(前期比3.8%減)、経常利益2900万円(同83.8%減)の減収大幅減益となった。

 ところが、20221月期(連結・決算期変更)の業績予想(12カ月ベースの概算)は、売上高201億円(同28.7%増)、経常利益123000万円(同474.2%増)と、大幅な増収増益を見込んでいる。業績回復に自信を示しているのだ。

 大幅な増収増益を見込む主な理由としては、「国内外での積極出店を維持すること、ECの拡大などが挙げられます」と、同社取締役CFO管理本部長の中水英紀氏は説明する。だが、そのベースにあるのは、同社の基礎体力の高さだろう。コロナ禍の前から、ほかの大手セレクトショップとは一線を画す経営戦略で、注目の的だった。

 同社は2007年、インポートブランドなどを取り扱うデイトナ・インターナショナルの新規事業として、現社長の谷正人氏が中心となって立ち上げられ、2009年にデイトナ社からの事業譲受、独立によって設立された。2015年には、早くも東証マザーズ上場を果たしている(現在は東証一部上場)。

 同社の大きな特徴は、日本ブランドと「メード・イン・ジャパン」のファッションに特化している点。それが、ほかのセレクトショップとの差別化の大きな武器になっている。

 中水氏は、「インポートブランドと海外生産で粗利益率の高いPB(プライベートブランド)が、ほかの大手セレクトショップの経営の柱です。しかし、当社が後追いで、そうしたビジネスモデルを真似ても、成功は覚束ないでしょう。それなら、先輩格のセレクトショップがどこもやらないことをやろう、となったわけです」と説明する。

 とはいえ、差別化するにしても、なぜ“メード・イン・ジャパン”だったのか。

 「当社の谷社長もそうなんですが、豊かな時代に生まれ育った今の若者は、幼いころからファッションに慣れ親しんでいて、感度が高いんです。選択眼も厳しい。欧米ブランドというだけで、ありがたがることはありません。産業空洞化で希少になった日本製のファッションは、むしろ彼らにとって新鮮であり、関心が高い」(同)。

 日本製は、デザイン性に優れているのはもちろん、縫製がしっかりしているなど品質も高く、「何よりも、日本人の体型にフィットしています」と、中水氏はメリットを列挙する。

日本製には価格競争に巻き込まれにくい利点も

PUBLIC TOKYOの新作Tシャツは“何度洗ってもシルエットが壊れない”がコンセプト

 一方で、日本製の難点は原価が高く、それに伴って、プライスラインも高めに設定せざるを得ない。実際に、PBの原価率は、ほかの大手セレクトショップが2535%のところ、同社は現在、50%程度だという。

 そのため、「セールを絞り込み、約80%の商品をプロパー価格(正規価格)で消化しています。定価でも売れる人気アイテムをいかに揃えるかが、腕の見せ所になるわけです。もっとも、日本製に特化しているので、価格競争に巻き込まれにくい利点は大きいですね」(同)。

 集客も、ファッション好きの若者の口コミがメーンで、大掛かりな宣伝はせず、販促費も抑えているという。

 同社は現在、セレクト業態の「STUDIOUS(ステュディオス)」、高級セレクト業態の「STUSBIOUS TOKYO(ステュディオス・トーキョー)」に加え、モードラインの「UNITED TOKYO(ユナイテッド・トーキョー)」、カジュアルラインの「PUBLIC TOKYO(パブリック・トーキョー)」という2つのショップブランドを展開している。

 ステュディオスは75%、ステュディオス・トーキョーは100%がセレクトの国産品。現在では常時、約200の国内ブランドをラインアップしている(半期ごとに改廃)。その一方、ユナイテッドとパブリックは、15人の社内デザイナーが企画し、国内工場で生産する自社オリジナル商品に特化している。

 アイテムのテイストではコンテンポラリーなモード系に強く、価格帯ではステュディオスがアッパーゾーン、ユナイテッドとパブリックがミドルゾーン。リアル店舗の平均単価(20212月期実績)は、ステュディオスが26000円、ステュディオス・トーキョーが41000円、ユナイテッドとパブリックが17000円だ。

 「売上志向になると、どうしても売れ筋を追いやすくなるのですが、高感度のお客さまが多いので、それでは飽きられてしまう。攻めのデザインで新しい提案も加えていくのが、当社の生命線です。幸い日本製に特化しているので、シーズン直前に企画を決めて、期中生産するといった機動的な対応も可能です。当社も売上が拡大し、信用が高まってきたので、国内メーカーさんからの引き合いも急増しています」(同)。

40代になったステュディオス卒業生をキャッチ

 同社は、「アスレジャー業態」と「大人向けセレクト業態」という2つの新事業で、さらなる攻勢をかける。

 スポーツ系カジュアルのアスレジャーは、「コロナ禍の巣ごもり生活を機に、ファッションのジャンルとして定着した」(同)と見ている。全品を国産のオリジナルとし、価格帯はミドルゾーン、デザインではタウンユースを重視するが、機能性に富んだ品質も追求する。今秋に東京・新宿、大阪・梅田のターミナルに3店舗を出店する予定だ。

 一方で、大人向けセレクトショップは、同社の将来にとっても、重要な布石となる。

 「当社の主客層は2030代なんですが、卒業すると、百貨店さんなどの他社に引っ越してしまうんですね。そこで、40代以降をターゲットにした新業態を設けて、とどまっていただこうというわけです」(同)。

 テイストはそのままに、サイズ対応などを強化する。もちろん全品が日本製。価格帯は、既存業態よりもやや高めに設定するという。今秋に東京・丸の内の路面店、東京・六本木店をオープンする予定。

 コロナ禍をものともしない東京ベースの快進撃ぶりに、ますます注目が集まりそうだ。

中水英紀取締役CFO管理本部長