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アマゾン、ヤオコー、U.S.M.H… 店頭受け取りロッカーが指し示す買物DXのゆくえ

ネットスーパーで購入した商品を、宅配ではなく店頭でピックアップする・・・。どうせ取りに行くなら買うのも店でいいじゃないかと思いますか? もしかしたら外食のテイクアウトと同様に、スーパーマーケットの利用方法もピックアップは普通の選択肢になっていくかもしれません。あるいはオンラインで購入した商品をロッカーに確保したうえで、店内では自分で確かめたい生鮮や総菜を見て回るなんて使い方も普通になるかも。オンラインで購入し、店頭ロッカーでピックアップするという一連の流れは、買物において「店内」と「店外」の境はもはやないという事実を示しています。今回は「店頭受け取りロッカーが指し示す買物DXのゆくえ」について考察したいと思います。

ヤオコーが店頭に設置した店舗受け取りBOX

ヤオコーも受け取りロッカー設置を2月から開始中

 ネットスーパーのピックアップ用ロッカーといえば、イオンリテールで設置が進んでいるほか、同じイオングループのユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)では店内設置のピックアップルームを一部店舗で検証中です。スマホアプリでロック解除してから入室するというセキュリティの高い仕組みです。

 ヤオコーも、2月16日にネットスーパーを導入した西大宮店(さいたま市西区)から受け取り用ロッカーの設置を始めました。同店では風除室内に置かれており、店内に入る必要はなく、雨に濡れる心配もないといった配慮がなされています。

 しかし考えてみると、ネットで購入したものをなぜ店頭まで取りに行くのでしょう? 自宅で配達を待つのも面倒というのは前提で、送料が不要といった魅力もあるでしょう。それでも私なら、配達してもらう方を選びます。そんな私ですが、ネットとリアルを使い分ける動機は、店頭ピックアップを利用する人と変わらないと思います。商品によっては、ネットで買う方が都合がいいのです。

 オンラインで購入する商品のニーズはピックアップ利用者とたぶん一緒でも、生活条件が違うから私は宅配を選びます。この選択肢の違いは、何を理由とするのでしょうか? きっと車に乗るかどうかです。

スーパーマーケットの店舗網がオンライン配送の拠点になる?

Amazon Hubはスーパーやドラッグストアの敷地内に増加中

 やはり店頭ピックアップ利用者の大半は、車での来店客ではないでしょうか。車だから持って帰ることが苦にならない、少なくとも家で待つよりはいい、となる。徒歩だと、よほど近所でなければ配達してもらった方が便利と思うでしょう。

 そしてスーパーマーケットの立地は、車利用が中心というケースが多く、だからこそ店頭ピックアップのサービスが便利なものに感じられるはずです。オンラインで購入した商品をスーパーマーケットで受け取ることが苦にならないと考えているのは、ほかならぬアマゾンです。

 アマゾンが設置を広げている受け取りロッカー「Amazon Hub」は、スーパーやドラッグストアの敷地内に多く置かれています。車利用かつ高頻度で来店する業態の店舗網は、オンラインショッピングで購入した商品の受け取り拠点としてふさわしいインフラかもしれません。

 ラストマイルを顧客に委ねてしまえるのですから、事業者にとって店頭ピックアップの浸透は、物流効率を高め、物量のキャパシティを上げる効果につながるでしょう。この先一段とオンライン購入が増えて、配達のキャパシティがそれに追いつかない状況になるとしたら、店頭受け取りはますます重要な配送インフラになります。

店内も店外も1つの店舗

U.S.M.HのOnline Delivery Ignica

 オンラインで購入し、店頭ロッカーでピックアップする流れの中で、利用客は一度も店舗スタッフと接触しません。いかにもコロナ禍にうってつけで、まるで感染症対策の一環のようにも思えるほどですが、きっかけはコロナ禍だとしても、その後も浸透していく新常態だと思います。オンライン購入&ロッカー受け取りは、買い方と受け取り方の選択肢を広げてくれるからです。しかも、購入客にも店にとっても都合のいい選択肢になります。

 オンラインで購入した商品をロッカーに確保して、さらに必要な商品を店内で探したとしても、顧客にとって外出する手間は一緒です。むしろ店内にいる時間はより短くて済みます。何より店に行った挙句が在庫切れという不幸を回避できます。

 宅配かピックアップか、どちらを選んでも買物のアクションは同じです。店の外で買物をし、店の外(レジ外)で商品を受け取っています。購入した商品は店内の在庫であるにも関わらず、購入アクションは店外で一貫しているのです。

 このとき買物の起点は店内ではなく、顧客のスマホに転換しています。買物シーンが店内に縛られないから、場所や時間の制約がなくなります。それはオンラインショッピングではあたりまえですが、リアル店舗も(というよりはスーパーも)、ようやく24時間いつでも買物を検討できる環境に向かおうとしているようです。

 これは店内の重要性が下がるという話ではありません。店内も店外(ネット)も1つの店舗であり売場であるという転換だと思います。

 これほど高頻度で買物に行く業態であるにも関わらず、店でしか買物を決められないという状況は、今どきとは言い難い不便さです。 店頭受け取りロッカーを見つけると、車に乗らない私は多分それを利用しないにも関わらず嬉しくなります。ロッカーのたたずまいが、あたかも買物のトランスフォーメーションの一里塚に見えるからです。