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平均日販65万円超!? 知られざる「沖縄ファミリーマート」の実力

コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)の進出に沸く沖縄。しかしこの地では、ファミリーマート(東京都/澤田貴司社長)が300店舗以上、ローソン(東京都/竹増貞信社長)が200店舗以上を展開しており、強固な地盤を構築している。このうち、県内でファミリーマートの店舗を展開する沖縄ファミリーマート(野崎真人社長)は、徹底した地域密着型の運営戦略と商品開発によって驚異的な販売力高さを誇る。セブンも決して軽視できないであろう、同社の強さに迫る。

セブン進出も余裕綽々?衝撃の「平均日販65万超」の理由

沖縄県浦添市内にある沖縄ファミリーマートの店舗

 「(セブンから)尻尾を巻いて逃げ出すつもりはない」――。

 沖縄中がセブン進出でお祭り騒ぎの様相を呈していた711日、地元ローカル局のニュース番組で放映されたインタビューで、沖縄ファミリーマートの野崎真人社長はこう息巻いた。

 しかし、これは決して虚勢を張っているわけではない。同社には、1987年の沖縄進出から30年以上にわたり、沖縄の独特な食文化や嗜好に応えた商品づくりを続け、県民から支持を集めてきたという自負がある。県内の店舗数は300店舗超。空港や病院、ホテルなど多種多様な立地に店を構えるほか、大手CVSチェーンでは唯一、沖縄本島だけではなく宮古島、石垣島、久米島、伊江島など離島にも出店している。

沖縄ファミリーマートの平均日販は65万円を超える高水準を誇る

 何よりも特筆すべきは、販売力の高さだ。あまり知られていないが、沖縄ファミリーマートの平均日販は65万円を超えている。これはファミリーマート本体の平均日販(約53万円)を10万円以上上回り、トップを独走するセブンイレブンとほぼ同等の水準だ。

 沖縄ファミリーマートがここまで大きな販売力を持つ大きな理由は、前述の通り、徹底的に地域に密着した商品政策(MD)を導入しているためだ。野崎社長は、「ふだんから沖縄の食卓に並ぶような商品をつくり続けてきた。昨今急増している国内観光客やインバウンド(訪日外国人)をターゲットにした商品開発は一切行っていないし、その姿勢を変える気もない」と、あくまでも沖縄に住む人々に向けたMDに特化していると説明する。

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中食商品の7割が沖縄オリジナル! 

中食商品の7割が沖縄限定商品!

  本土のファミリーマートの店舗と比べて、明らかな違いを感じられるのが、弁当やおにぎり、チルド総菜、カウンターフードなどの中食の売場だ。各所に、見慣れない商品が多く並んでいるのである。

 たとえばおにぎりでは、「SPAM®」ブランドのランチョンミートを使った「ポークたまごおにぎり」、那覇・首里にある沖縄そばの名店「しむじょう」監修の「ジューシーおにぎり」(「ジューシー」は沖縄の炊き込みご飯)、「フーチャンプルーの包みおにぎり」などを販売している。

那覇・首里の沖縄そばの名店が監修した「ジューシーおにぎり」

 弁当・麺類では、レンジアップの「沖縄そば」「タコライス」「ゴーヤーチャンプルー弁当」「島豆腐の麻婆豆腐」、チルド総菜では「タコミート」(タコライスに乗せる味付けミンチ)、「ラフティ」(豚の角煮)などをラインアップ。さらにカウンターFFでは、観光客にも人気の「上間弁当天ぷら店」の沖縄天ぷらを熱々の状態で展開している。

カウンターで売られている「上間弁当天ぷら店」の沖縄天ぷら

 このように地元の味を追求するだけではなく、ほかのCVSとの差別化を図るうえで重要の役割を担っているのが、店内調理の焼き立てパンだ。現在(197月時点)28店舗で導入しており、売場中央部に設けたケースで2025種類を販売している。

 焼き立てパンはもともと、ファミリーマートが15年に買収したココストアが展開していたもの。県内で高い支持を得ていたことから、2社の合併後も、沖縄ファミリーマートでは商品を進化させながら販売を継続している。

インストアベーカリーを一部店舗で導入しているのも沖縄ファミリーマートの特徴

 ちなみに、その傍らには挽きたてコーヒー「ファミカフェ」のディスペンサーが置かれているが、ファミカフェも沖縄独自のブレンドとなっている。また、利用客はそこでカップにコーヒーを入れてからレジで会計する、という流れも本土の店舗とは異なる点である。

「ファミカフェ」のコーヒーも沖縄独自のブレンドとなっている

 マーケティングや商品開発は、沖縄ファミリーマートが独自に行っている。「社員の90%以上が沖縄の人間。県民が好む味を自然と追求できる」(広報担当者)という開発体制も大きな強みだ。

 現在、沖縄ファミリーマートの中食商品のうち地区限定商品は約7割以上。沖縄においても、内地のMDをベースにしているセブン-イレブンとは真逆を行く戦略を掲げている。

 参考記事:緊急現地レポート  セブン-イレブン沖縄進出!ローソン、ファミマと真逆の商品政策の理由と勝算

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沖縄ファミマ社長が見る「本当の競合相手」

戦うべき相手はセブンだけではない

  もちろん、圧倒的なブランドパワーと高い商品開発力を有するセブンは、沖縄ファミリーマートにとっても決して“無視”できるような存在ではない。しかし、野崎社長はこうも指摘する。「今後沖縄でも、業態の垣根はどんどんなくなっていくだろう。そうなるとCVS同士ではなく、食品スーパーなども巻き込んだ戦いになる。マーケットの変化を見極めながら、店舗網を広げていく必要がある」

沖縄ファミリーマートの野崎真人社長

 セブンイレブンの進出や、沖縄最大の商業施設「サンエー浦添西海岸PARCO CITY」の開業など、大きなニュースが続いた沖縄の小売市場。人口や観光客数の増加で今後もマーケット自体の成長は期待できるが、そのパイを奪い合う競争は熾烈さを増しそうだ。