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がんばれ!! バレンティン

 東京ヤクルトスワローズのウラディミール・バレンティン選手に注目が集まっている。

 10日以内にも、「1シーズン最多本塁打55本」という日本プロ野球記録を塗り替えようとしているからだ。

 この有名な記録は、周知のとおり「世界のホームラン王」である王貞治さんがつくったものだ。そして、その時期を振り返れば、1964年(昭和39年)――。実に半世紀前。東京オリンピックが開かれた年である。

 

 その後、1985年(昭和60年)。阪神タイガースが日本一に輝いた年には、この記録を破りそうな選手が現れた。タイガース史上最強の助っ人外人で2年連続三冠王を獲得したランディー・バース選手だ。シーズン54号を打った段階で残り2試合。しかし、その2試合とも王貞治監督(当時)率いる巨人戦で、バース選手は、敬遠攻めに遭い、ほとんど勝負をしてもらえなかった。

 

 さらに、2001年には大阪近鉄バッファローズ(当時)のタフィー・ローズ選手。2002年には西武ライオンズのアレックス・カブレラ選手が王さんの記録に並ぶ1シーズン55本本塁打を放つものの、タイ記録に終わり、この記録は“聖域”であるような感があった。

 

 しかし、49年間にわたって更新されることがなかった記録も今年のバレンティン選手の勢いの前に屈服しそうだ。

 それというのも、バレンティン選手は、残り28試合を残す9月2日時点で52号本塁打を放っており、たとえこれまでの量産ペースがどんなにスローダウンしたところで、簡単に新記録の56号に到達するものと見込まれるからだ。

 

 この機会にぜひ、更新してもらいたい。

 

 大体、記録というのは塗り替えられるためにある。選手の技術の進化にともない、どんどん刷新されていくのが好ましい、と私は考えている。

 

 たとえば、1983年にカール・ルイス選手が100mを9秒97で走り、人類史上初めて平地で「10秒の壁」を突破してから26年の間に、この記録は0秒39(2009年、ウサイン・ボルト選手:9秒58)も更新されている。

 人類は、なんと進化していることか!

 

 ところが“聖域”のような記録が存在すると、その競技やプレイヤー自体の進化が止まってしまっているような気がしてしまう。

 

 今シーズン、この記録を塗り替えることをきっかけにして、今後、陸上競技のボルト選手のような、とてつもないホームランバッターが出てきてほしいものである。