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常識や慣習にとらわれない! ロピア可児店の売場から感じた「売りたいものを売る」という姿勢

2022年5月に中部1号店を出店し、あっという間に3店舗体制となったロピア。2023年1月には台湾への出店が決まっており、前年に引き続き、23年もロピアが業界の注目を集める可能性が高そうだ。中部エリア最新店「可児店」(岐阜県可児市)の売場からロピアの強さを探る本企画。前編では同店の立地と生鮮3部門の売場を解説した。後編では、総菜・日配・冷凍食品などの売場を見ていくとともに、同店から感じたロピアの強さについて考えてみたい。
調査期間:2022年11月12~14日 ※本文中の価格はすべて本体価格

ロピア可児店が入るショッピングセンターの外観

●総菜 豊富な品揃えでお客に選択肢を!

 ロピアの総菜売場は店舗によって大きく異なり、商品構成もさまざまだ。可児店では、壁面20尺に「スイートポテト」「ヤンニョムチキン」「ひれかつキンパ」などを販売するほか、6尺ぶんのスペースでピザコーナーを展開。ラインナップは「照り焼きチキン」など3種類に絞り、調査日はよりどり3点1500円で販売していた。

 平場は2レーンで、前列ではチラシ商品の「小林さんちのナポリタン」(2人前1111円)、「モンスターバーガー」(999円)などを陳列。「小林さんちのおにぎり」(いくら&鮭、焼豚など各300円)などは日替わりでメニューを変えているようだ。また、「天使のふんわりティラミス」(777円)、「フレンチトースト(チョコ風味)」(450円)、「ごほうびプリン」(199円)などスイーツの品揃えも豊富で、どの商品も値ごろを感じる価格設定となっていた。その背面では「鮭ハラスといくらのおこわ」(1800円)、「玉子あんかけヒレカツ丼」(580円)「牛カルビおこわ」(500円)など米飯類などを販売する。

総菜売場で販売していた、「国産ホテテと海老のチョレギサラダ」(580円)

 2レーン目は、傘下の利恵産業が製造する「沖縄風本格ソースそば」「タイ風フォーの混ぜそばパッタイ」(各600円)などのほか、「国産ホタテとエビのチョレギサラダ」(580円)など外注商品を絡ませた構成となっている。

 売場はシンプルで、商品は店内書加工を基本としているものの、外注商品や冷凍総菜の扱いも見られるなど品揃えの幅は広く、お客の選択肢は多い。

●日配 価格訴求は控えめ? 堅実な構成

 続いて日配を見ていくと、和日配は店舗奥側壁面30尺で「納豆」「練物」「豆腐」「水物」、平場の冷蔵ケースで「中華総菜」「麺」「漬物」「佃煮」を配置する。商品構成は2022年8月オープンの「柳津店」(岐阜県岐阜市)とほぼ同じで、地場商品を絡めた堅実な構成となっている。

 たとえば、納豆は「タカノフーズ」を軸に、三重県桑名市の「小杉食品」の「小粒納豆40g×3」(57円)を販売。麺は愛知県阿久比町の「名城食品」、愛知県小牧市の「セントラル製麺」、愛知県みよし市の「樽政本店」、地元・岐阜県山県市の「衣笠製麺」など地場メーカーの商品を揃える。価格訴求商品はあるものの、飛び抜けて安い商品はなく、堅実な商品構成といえよう。

 洋日配は奥側壁面42尺で乳製品コーナー、正面から見て右手壁面96尺でチルド飲料を展開する。ヨーグルトコーナーでは「明治・ブルガリアヨーグルト」は扱わず、「雪印メグミルク・恵」「森永乳業・ビヒダスヨーグルト」のほか「「日本酪農」の商品を軸としている。プリンやゼリー、スイーツではロピアおなじみのバンドル販売が中心となっているなど、既存店のスタイルを踏襲しているようだ。

●冷凍食品・アイスクリーム 開店直前に売場縮小?

 ロピアの冷凍食品・アイスクリーム売場は平台什器を2レーン設けているケースが多いが、可児店は1レーンでの展開となっている。当初の計画では2レーンであったものが急遽1レーンに変更したものと筆者は推測する。そのため、加工食品売場と冷凍食品売場のあいだには広いスペースができてしまっていた。冷凍食品を大胆に狭めたのだろうか。売場からはその意図を読み取ることができなかった。

ロピア可児店の売場レイアウト

 売場を見ていくと、平台什器では「餃子無人販売所」と大きく書かれた看板を掲げ、「ユーラス・やみつき肉餃子25g×30」(699円)をメーンに、「八洋食品」「CJジャパン」、「大阪王将」「バーミヤン」などの大袋商品17品目を扱。そのほか、チキンナゲットや唐揚げなども業務用・大袋商品を揃えていた

 16尺の多段冷凍ケースでは、中部1号店の「モレラ岐阜店」でも導入した岐阜県の食品メーカー「サンミール」の「冷凍マルゲリータピザ」(499円)、「ミックスピザ」(699円)など冷凍ピザ4種類を販売、どれも安定して売れているようだった。エンドの6尺では、利恵産業が製造する付加価値型の冷凍総菜シリース「ラクゴチ」を販売しており、新商品として道場六三郎監修の「漁師町の海鮮釜めし」(698円)をラインナップしていた。

 売場を大胆に縮小させたこともあってか、従来から続く「家庭用商品の強烈な価格訴求」から脱却した、独自の冷凍食品売場スタイルが確立がされつつあるように感じた。

●酒類 小型スーパーマーケット並みの扱い?

 酒類売場の売場スペース構成比は5%と、「柳津店」の4%よりは多少広いものの、コンパクトな売場となっていり。日本酒は3尺5段1本で43品目、焼酎乙類は3尺5段1本26品目など、品揃えは小型スーパーマーケットくらいしかなく、だいぶ絞り込んでいるようだ。

 ワインは国産13品目、スパークリング15品目、輸入53品目、そのほか直輸入ワインを13品目揃える。価格帯は285~1999円で、ゴンドラ下段に並べて直輸入ワインは価格訴求の位置づけでよく売れているようだ。

●まとめ 「売りたいものを売る」という姿勢

 今回の調査は、オープンから約1カ月が経過してからの訪問となった。日曜の朝、開店前に店舗を訪ねると、約30人の行列ができていた。開店から1カ月後ということを考えるとやや並びが少ないように感じたが、開店してから5分後には“生鮮ゾーン”はお客であふれ、いつものロピアの光景になった。

 バロー(岐阜県)の撤退跡への居抜き出店となった可児店。周辺は住宅街であるものの、スーパーマーケットの商圏という観点から考えると人口はやや少ないとみられる。それでも店内はお客でにぎわっており、ロピアの集客力の強さを改めて思い知らされた。

調査期間中はオープンから1カ月経ったことを記念して、店で使えるお買い物が付いたオリジナル保冷バッグを税込1000円で販売していた

 2022年10月に開業した「三田対中店」(兵庫県三田市)の売場レポートでも解説しているが、この可児店でも、一般的なスーパーマーケットでは考えられない売場づくりに取り組んでいる点に注目だ。

 スーパーマーケットに携わる人の多くは、「売れ筋」と「死に筋」という考えが染み付いてしまっていることだろう。だが、こうした考えはロピアにおいてはあまり重要ではないようだ。ロピアの店舗を見ていると、売れ筋商品を扱っていない売場も多く、扱っていたとしても一般的に視認性が悪いとされる棚の最上段に陳列しているのが目を引く。たとえば、加工食品の調味料コーナーでは、売れ筋の「Mizkan・味ぽん600mℓ」を最上段に配置し、グループ企業の丸越醸造の商品をメーンに扱っている。

 本連載で幾度となく述べているが、こうした試みから感じられるのは、ロピアの「自分たちが売りたい商品を売る」という姿勢だ。現在は多くのチェーンがメーカーや問屋の“しがらみ”に縛られ、自らの発想による売場づくりができないでいる。

 おそらく、スーパーマーケットやメーカーの関係者のほとんどは、こうしたロピアの試みを「ネガティブ」に捉えることだろう。だが、ロピアの売場を見ていると、われわれスーパーマーケット業界の人間は「売れ筋」「死に筋」という呪縛にとらわれているのではないかとすら思う。ロピアの現場担当者の創造力にはいつも驚かされる。

(店舗概要)
所在地 岐阜県可児市今渡840-2
開店日 2022年10月18日
売場面積 売場:約520坪、袋詰場所・事務所:約40坪(ともに歩測)
営業時間 9:30~19:00
駐車台数 517台